January.28,2005 ありがとうございます

        本日明治座千秋楽。今月は『コシノものがたり』(小篠綾子『やんちゃくれ』より)でした。萬田久子様、牧瀬里穂様、高知東生様、松風はる美様他の皆様より出前のご注文をいただき、楽屋までお届けいたしました。ありがとうございます。


January.7,2004 新幹線車内の気になる空席

        一昨日、新年の落語会での椅子の権利事件のことを書いた。書き終えてから、以前に新幹線の車内で経験したことを思い出したので、そのことを書こうと思う。

        大阪に用があって、私は東海道新幹線に乗った。事前に出発時刻が決められなかったので指定席券は取らず、自由席で行く事にした。東京駅でひかりに乗車した。この日、新幹線は混雑していて、飛び乗ったひかりの自由席はほぼ満員であった。どこかに空いている席はないだろうかと探していると、3人掛けの列の通路ぎわの席がひとつ空いているのを見つけ、そこに座ることができた。窓際にはまだ20代と思われる女性が座っていて、ノートパソコンに向かって何やら打ち込んでいた。この女性と私との間の席には、この女性のものらしい大きな荷物が置かれている。発車時刻が迫り、車内はますます混んできた。当然、この私と女性との間の席は空いているものだろうかと思う乗客もいて、「あの、ここ空いてますか?」と尋ねてくる人が出て来る。すると、この女性は「あとから来ますから」と言うではないか。ふうん、連れがいるんだと思って、私は持参した本に夢中になっていった。

        このひかりは、新横浜、名古屋、京都と停まり、新大阪からさらに先に行く便だった。新横浜でさらにお客さんが乗ってきて、車内は立っている人の数も増えてきた。新横浜で乗った人が、また「ここ、空いていますか?」と尋ねてくる。「あとから来ますから」とパソコンの画面に夢中の女性の返事。

        東京→新横浜はそれほど遠くは無いとはいえ、この女性の連れはどこにいるのだろう。トイレとしては長すぎる気がするし、ビュッフェにコーヒーでも買いに行ったのなら、それこそ遅すぎる。変だなあと思いながらも私はまた本の世界に没頭してしまった。そのうちに、疑問が湧いてきた。車窓の風景が小田原を過ぎようが熱海を過ぎようが、この女性の連れは現れない。どうしたのだろうと思ううちに、新幹線は名古屋に着いていた。名古屋で何人か降りる人がいたが、ここからも乗ってくる人がいる。またもや、「ここ空いてますか?」 「あとから来ますから」が繰り返される。

        名古屋を経ってしばらくしてからだ。この女性の携帯電話が鳴り、通話が始まる。この時点ですでにおかしいのである。「車内での携帯電話の使用はデッキでお願いします」とのアナウンスもあるのに平気で話し始める。「うん、そう。ひかり○○○号の○号車。それじゃ」

        そして京都到着。ここでもお客さんが乗り込んでくる。すると窓際の女性が、乗り込んできたやはり若い女性に合図するではないか。「ここ、ここ」。京都から乗り込んできた女性は私との間の席に座る。それからは楽しそうにふたりでお喋りが始まる。つまり、あとから来るというのは京都駅から乗り込む友人の席を確保していたのである。私は居たたまれない気になっていた。この女性は友人の席を確保して、満員で立っている人も多い中、東京から京都までこの席を荷物置き場として利用していたのだ。このへんの感覚が私には理解できない。誰だって同じ料金を払って乗車しているのだある。なぜ「京都から連れが乗りますが、それまででよろしかったらどうぞ」と言えないのだろう。

        私はムッとした気分になったが、このふたりは新大阪に着くまで楽しそうに話している。その聞こえてくる会話から、どうやらふたりは大阪で何かの研究発表の会があり、それに出席するために新幹線に乗ったらしい。新大阪に着くと、ふたりは私と共に新幹線を降りた。改札へ去っていくふたりの姿に心の中で呟いた。、「さぞかし、ご立派な研究発表をなさるんでしょうよ」


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