直線上に配置

蕎麦湯ぶれいく

熱海梅園

2014年2月20日

 またどこかへ一泊旅行に出ようと思ったが、山梨は先週の大雪で大変なことになっているようだし、この分じゃ山の方はどこでも雪が残ってそうだし、それに寒そうだし。ということで、熱海の梅園散策でもしてくるかということになった。

 一週間前の天気予報で、今日明日は天気がよさそうだったので、今日に決めて宿を申し込んだのだが、だんだん天気予報の様子がおかしくなり、一時は大雪になるとの予報。「まいったなぁ」と思っていたら、つい二日ほど前になって雪マークが消えた。よかった、よかった。これなら楽しく梅園散歩ができそうだ。

 なにしろ熱海だから、新幹線に乗れば45分ほどで着いてしまう。帰りは早く帰りたいという気持ちもあるが、行きはのんびりと旅行気分を味わいたい。それで、行きは東海道線普通列車で行くことにする。

 家を出ると、外は曇り空なれど、雪も雨も降りそうにない。東京駅まで歩く。東海道線普通列車。ただし、一般車両じゃ旅行気分にはなれないからグリーン車を奮発。車内販売は無いだろうと、東京駅構内ノースコートで、ドイツパンのサンドイッチを買い、ホームで缶コーヒーを買って乗り込む。以前だったらビールを買ってしまうところだが、もう昼間からアルコールを飲んでしまっては、あとの旅程が辛くなるようになってしまった。若い時は無茶できたけれど、もうこの年齢になると無理はきかない。

 東京駅を電車が離れたところで缶コーヒーを開ける。と、さっそく検札。その検札に来た女性が、そのあとまたすぐに回ってきた。手に小さなバッグを持っている。小規模車内販売でジュースやビール、おつまみを売るらしい。へぇー、そんなサービスもやってるんだ。

 この電車は熱海終点。熱海で伊豆線に乗り換える。一駅で来宮。熱海の梅園は来宮駅が近い。梅園までの道を歩く。

 梅園の入口近くまで来ると、どうやらバスツアーで来たらしい団体客が集まっている。ほかにも車で観光にやって来た人たちが、やはり駐車場方向から歩いてくる。来宮から歩いてという人間はやはり少ないようだ。

 梅園の前で職員さんが「熱海でご宿泊される方は割引になります」と言っている。「今夜は、ヴィラ・デル・ソル泊です」と告げると、割引になる紙を渡してくれた。これで入園料300円が、たった100円に。なんだかすごーく得した気分。

 園内は平日だというのに、すごい人出。これが週末になると家族連れも加わって、もっと人は多くなりそう。平日だと、やはりリタイヤ組が多い。入口から縦に長い園内を時計回りで歩く。植えられている梅は数も種類も、かなりの数だ。一昨年は湯河原の梅園に行ったが、あちらに比べ、歴史も風格もやはり上だなと感じる。

 芭蕉の句碑を見て、梅見の滝の内側を潜り抜け、澤田政廣記念美術館。梅園は普段は入園無料だが、梅まつり時期だけは入園料を取るのに対して、この美術館は、この時期だけ入場無料。私は美術にはまったく疎いのだが、無料なら入ってみるかと入場。澤田政廣は明治生まれで93歳まで生きたという、熱海生まれの美術家だそうだ。木彫り彫刻を始め、油絵、リトグラフ、水彩画、ステンドグラス、書となど、美術という分野で、いろいろなものを作られていた方なんだね。

 足湯のある日本庭園を抜けて、韓国庭園。ここで、チャプチェとホットクを売っていた。ホットクは食べたことが無い。興味を感じて購入。「カムサハムニダ」。ベンチに座って食べてみたら、これはペッタンコな、おやきみたいなもので、中に餡が入っている。あったかいオヤツ。これ、おいしい。

 その先には、中山晋平記念館。これは、戦争中に熱海に引っ越した中山晋平の住居を移築したもの。中山晋平と言えば、『シャボン玉』、『ウサギのダンス』『あの町この町』といった童謡を作っている。そういえば先日聴きに行った、中山ラビも歌っていた『砂山』の作曲者でもあったっけ。さらには『カチューシャの唄』『ゴンドラの唄』『東京行進曲』などの歌謡曲も作っている。この人も明治生まれだそうだが、1952年、膵臓癌で亡くなったそうだ。享年65。

 園内をぐるっと回って、出口付近に戻ってくると、焼き栗の屋台があるのに気付いた。甘栗ではなく焼き栗。食べたくなって一番小さい袋でひとつ買い求める。あったかい焼き栗は、一粒が甘栗の倍以上ある大きなサイズ。途中まで切れ込みが入っていて、すぐに剥ける。口に入れてみると甘くて柔らかい。甘栗みたいに硬めで人工的っぽい甘さとは別物。あとから思うと、もう少し大きい袋にすればよかった。

 梅園を出て宿に向って歩く。梅園は来宮だから、来宮から熱海へ向かい、さらに今夜の宿[オーヴェルジュ・ヴィラ・デル・ソル]は熱海の東のはずれ伊豆山。そこそこの距離があるが、おいしい夕食を食べるには腹を空かしておかなくてはならない。ご馳走の前には運動もしないと罪悪感があるし。

 [オーヴェルジュ・ヴィラ・デル・ソル]は有料道路、熱海ビーチライン沿いにあるが、地図を見ると、一般道の国道135号線を湯河原方面に向い、海側に下れば行かれそう。熱海へ抜けて、国道135号線を東に歩く。けっこう交通量のある道路。観光客以外は有料の熱海ビーチラインは使わないのだろう。おそらく右に曲がるところに看板が出ているだろうと歩き続けたが、なかなか看板が出てこない。ついに伊豆山。「あれ〜、この先は伊豆山の街を通り抜けて、山道だぞ」と思い始めたところで、ようやく看板があった。手前300mガソリンスタンドのところを曲がれとある。ありゃありゃありゃ、通り過ぎてしまったか。

 引き返して、ガソリンスタンドを曲がると急な坂道を下って行くことになる。ほんとにここでいいのか? 違っていたら、この道を登り直すのは、涙目だなぁと思いつつ下る。ついに熱海ビーチライン沿いの道に出てしまった。ホテルがあったが、[うみのホテル中田屋]と[ホテル・ニューさがみや]が並んでいるのはわかったが、[オーヴェルジュ・ヴィラ・デル・ソル]の建物が見えない。途端に不安になってくる。地図を取り出して見てみると、[ヴィラ・デル・ソル]は[ニューさがみや]の先。えっ、そんなところにあるの?

 まあ、今はどの車にもカーナビが付いている時代。目的地さえ入力すれば案内してくれる。歩いて行く人なんていないだろうしなぁ。やっぱりスマホ買わなきゃな。

 歩いて行くと、そこに現れたのは、ちょっと近寄りがたい洋館。「えっ? ここ?」。何も書いてないが、門の下の方に[VILLA DEL SOL]の文字。中庭を通って玄関に行き、おそるおそるドアを開ける。すぐに迎えの人が出てきてくれて、ロビーの部屋に通された。ウェルカムドリンクで、ロゼのスパークリングをいただく。ミニピザ付き。

 宿泊シートにサインをして、若い男性に案内されて客室に。玄関からロビー、そしてその二階にあるレストランは古い建物を移築してきたものだが、客室は近代的な建築。通された部屋はリビングと寝室に別れていて、リビングの広さは快適そのもの。寝室に隣接した空間には、外の海が見渡せるのだが、これがまた絶景。「明日の朝、日の出が見られますよ」と言われる。「今だと、だいたい6時30分ごろです」とのことで、明日は寝坊しないで日の出を見るぞと決意。

 まずは明るいうちに温泉に入って来よう。温泉は上にある本館の[星野リゾート 界 熱海]と共同。石段の坂を登っていくと三毛猫がいた。この猫が、やけに人懐っこい。どうやら、この施設の名物猫らしい。昔、ウチで飼っていた猫と模様がそっくり。

 風呂は二ヶ所にあり、初日は男湯は露天の、古々比の瀧(こごいのゆ)。うひゃー、気持ちいい。海沿いのせいか塩分があるらしく、しょっぱい。手足を大きく伸ばして寛ぐ。日本はなんたって温泉。日本に生まれてよかったなぁ。

 湯から出て、湯上り処、青海テラス。ここには温かい飲み物、冷たい飲み物が用意されていて、自由に飲めるシステム。ミニサイズの缶ビールがあったので、それをいただく。風呂上りのビール、うへぇ〜、おいしい!

 18時半に夕食。レストランへ。ここは、海のフレンチといって、シーフードだけで構成された料理が供される。まずはオリーブ漬け。せっかくだからワインを一本頼むことにする。クローズ・エルミタージュの白。
 鮑を薄く切ったサラダ。知らない野菜もいろいろ乗っている。食用のタンポポというのが変わっていておいしい。
 白子のブルーチーズ。これ、おいしいなぁ。白子は大好きだけど、それにブルーチーズが加わるとまた一段とおいしくなるというのは、やられたなぁという感じ。
 魚を裏ごしした濃厚なスープ。こういうの飲んじゃうとね、ブイヤベースなんて、なんと大雑把な料理なんだろうと思えてくる。仕事してるなぁ。
 ここの名物、蛤を開かないようにして貝殻が真っ黒になるまで焼いた料理。テーブルで開けてくれる。それだけといえばそれだけなのかもしれないが、特別な調味料やソースを使わない素材本来の味。ちゃんと海の塩気で味が付いている。
 さらにこれまたここの名物、鯛のポワレ。鱗までしっかり焼いてあってパリパリしていて香ばしく、中は柔らか。こりゃ、おいしいや。
 デザートは果物を細かく切ってカクテルにしたもの。次のデザートがミルフィーユ。一緒に出てきたコーヒーがとても香りがよくて私好み。
 さらにチョコレートやゼリーのお菓子盛り合わせが出てきたが、これは部屋でいただくことにした。
 そんなに量を食べたわけではないはずなのだが、終わってみると満腹感で満たされていた。
 おいしかったなぁ。さすがだね、ここの料理は。

 寝る前に、もう一風呂浴びて就寝。

 [星野リゾート 界 熱海]は二年ほど前は[蓬莱]という旅館だったのが倒産。星野リゾートが買い取ったらしい。そういえば、[蓬莱]には、死んだ父も組合の旅行で行ったという話をしていたような。

 波の音が聞こえる中、眠りに就く。

2月23日記





















静かなお喋り 2月20日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る


トップ アイコントップページへもどる
直線上に配置