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蕎麦湯ぶれいく

中禅寺湖南岸踏破再挑戦

2014年6月3日

 朝5時半の、浴場オープンをベッドの中で待ちかねて、時間が来たら風呂場へ行く。空気はいいし、こんな気持ちがいい瞬間って、一番幸せを感じる。

 久住昌之の『ふらっと朝湯酒』によると、どうやら朝湯に入って、朝ご飯食べて、ついでにちょっとだけお酒も飲んで、二度寝、三度寝をするという小原庄助的瞬間がこの世で一番気持ちいいそうだが、なんだかわかる気がする。以前は私も大晦日まで働いて、元旦の朝に風呂に入って、酒呑んでまた寝るというのが、年に一度の楽しみで、これぞこの世の最高の幸せだと思っていた。

 今日は、温泉旅行に来ているとはいえ、そうもいかないぞ。中禅寺湖南岸踏破の旅が待っている。あとのことを考えると、そんなにのんびりしてもいられない。11時にチェックアウトすればいいのだが、7時半には食堂で食事を済ませ、出発しなければ。

 最近はホテルの朝食も凝ったものが出てくるようになったが、中禅寺金谷ホテルは、いわゆる昔ながらのアメリカンブレックファースト。ジュースの種類と、卵の調理法、ハムやベーコンの選択、コーヒーか紅茶かの選択といった儀式をしなければならない。これがこれで久し振りに楽しかった。昔は、こういう朝食に憧れたんだよねぇ。

 部屋に戻って荷造り。今回はいろいろ心配して、ウインドブレイカー、レインウェア、傘、懐中電灯など、いろいろとリュックにいれてきてしまったけれど、必要なさそう。

 8時半、チェックアウト。ホテル前のバス停に向かう。と、バス停付近になにやらパトカーが何台も停まっている。どうやら鑑識まで出動しているらしい。バス停に近付こうとすると警備の警察官に、こっちに来ないようにと言われてしまう。赤沼車庫へ向かうバス乗りたいのでバス停に行きたいと説明して通してもらう。「何かあったんですか?」と訊いてみたら、「変死体が発見されたんです・・・観光の方でしょ? 見ない方がいいですよ。気持ちいいものではありませんから」。中禅寺湖の方を見ると、第一発見者だろうか、湖を見ながら警察から事情聴取を受けている。中禅寺湖から死体が上がったのだろうか?

 8時50分の路線バスで赤沼車庫へ。途中、竜頭の滝を通る。ここで下車する人も多し。ここは一昨年の、はとバスツアーで来たこともあるから私はパス。外国人観光客もずいぶんと降りる。

 赤沼車庫にもほどなく到着。さあて、低公害バスの乗場はどこだろうとキョロキョロすると、ハイカーらしき女性ふたりが向かっている先から今まさにバスが一台出発しようとしている。「あれか?」。低公害バスというのだからもっと小さなバスを想像していたが、かなりの大型バスだ。正面に、「千手ヶ浜」と書いてある。やっぱり、あれだ。急いで追いかけて間に合った。

 バスは一般車両は入れないゲートを抜けて保護地区に入っていく。途中、ところどころで降りる人もいて、この湿原散策に行くらしい。このプランも楽しそうだ。いつかまた日を改めて来てみよう。バスはゆっくりと走り、やがて千手ヶ浜到着。

 東岸が中禅寺温泉で、いわゆる観光地だとすると、西岸の千手ヶ浜は静かな湖畔。まさに対照的な感じを受ける。今月末ごろが盛りらしいクリンソウを見ることができた。本当はもう少しあとに来た方がいいのだろうが、梅雨入りしちゃうと雨が心配だから、その前に訪れたのだが、でもとりあえず見られてよかった。

 さぁ、いよいよ昨日のリベンジ。昨日の予定とは逆コースからの中禅寺湖南岸踏破の旅だ。

 歩き始めは、実に気持ちのいいルートだった。左に中禅寺湖を見ながら、道幅も広くなだらかな道が続いてる。これなら確かに遊歩道。働歩道じゃないぞとウキウキ気分。ところが、この楽な道も、そう長くは続かなかった。道幅は狭くなり、湖は遠ざかり、アップダウンがきつくなり、どれが道なのかもよくわからなくなるという始末。「聞いてないよー」。これなら登山靴で来ればよかった。

 それにしても遠い。中禅寺湖はそれほど大きくないだろうと思い込んでいたのだが、デカいねぇ〜。そしてセミが一斉に鳴いている。東京に住んでいるとセミが鳴きだすのはまだ先だが、ここ日光ではエゾハルゼミというのが、やかましいくらいに鳴いている。鳥の囀りなんてかき消してしまう勢いだ。

 本に出ていた、千手ヶ浜→中禅寺温泉のコースタイムは4時間20分。それを信用すれば、歩き始めたのが9時半だったのだから、14時前には到着できるはずだ。ところが、最初の目的地の千手堂跡までの20分は、やや遅れて到着くらいだったものの、次の白岩までの55分というのが大幅遅れ。さらに大日崎までもけっこうな難所が続き、涙目状態。阿世潟に辿り着いたときには、ほぼ1時間遅れになっていた。疲れ果て、脚は上がらない。バスでも通っているなら乗ってしまいたい気分。

 と、ここから急にまた道がよくなった。車も入って来られる道幅になり、アップダウンはなくなり、左に見る中禅寺湖は穏やかな湖面を見せている。自然と歩くスピードも上がってくる。

 中禅寺温泉到着。15時ちょうど、1時間10分遅れでの踏破だった。

 東武日光行きの路線バスに乗り、座席に座ると急に疲れが襲ってきた。座っているだけで目がつぶってきてしまう。疲れた〜。こんなんで疲れてどうするって感じなのだが、やはり私は軟弱ハイカーなんだよなぁ。

 16時東武日光到着。帰りのチケット購入。16時25分の普通列車で下今市へ出て、16時35分の、きぬ118号に乗る。車内販売でアイスコーヒー。シロップも全部入れる。疲れた身体と頭には糖分が必要だ。

 18時15分、浅草着。東武線は安いし、早い。

 浅草で降りたので食事をしてから帰ることにした。雷門通りの[櫻田]。ここには10年ほど前に来たことがある。今でも隔月で開催されている、櫻田寄席を観に行ったのだった。あの当時のレギュラー・メンバーは、五街道喜助(現・桃月庵白酒)と柳家三三。ふたりともまだ二ツ目だったころ。しかもこのふたり、今や大の売れっ子だ。いい落語家が育ったよなぁ。

 選べる串焼き三品とクワ焼きの雷神コースにした。まず、食前酒とお通し、小鉢が運ばれてきて、ザルに乗せた串焼きが目の前に持って来られる。中から、のどぐろ、穴子、鹿肉などをチョイス。のどぐろは脂が乗っていておいしい。鹿肉も焦げ目がつくまで焼いて食べた。鹿、うまいなぁ〜。串焼きを食べ終わると、くわ型の鉄板が用意される。鴨か軍鶏のチョイスができるというので鴨を選択。鴨肉を鉄板に並べていく。最後に長ネギとキノコが乗せられ、すき焼き風のタレがかけられて完成。卵にくぐらせない、とりすき焼きといった感じ。これを食べ終わると、ここにご飯を投入。ちょっとした、すき焼き炒飯の出来上がりだ。さらにデザートは、目の前の炭火を使ってだんごを焼き、みたらしのミツをかけてくれるという、うれしいもの。

 今回の1泊2日も中身濃かったなぁ。軟弱ハイカーと笑わば笑え。これが私の楽しみ方なんだ。

 帰宅して、早めに就寝。おやすみなさい。

6月6日記





















静かなお喋り 6月3日

静かなお喋り

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