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蕎麦湯ぶれいく

伊豆熱川の猫

2015年11月10日

 仕事をしなくなってから、ほぼ月一のペースて゜近場の温泉旅行に出かけている。よっぽど遠いところは別として、ほとんどが一泊。これも貧乏性な性格から来ているもので、宿泊費を一泊分で抑え、ほとんどが一日目の朝早くから、二日目の遅くまで二日間でフルに遊んでしまおうという考え。先日もある人と話していたら言われてしまったことがある。温泉に行くなら、時間があれば二泊して、真ん中の日は何もしないで宿で温泉に入ったり、ビールを飲んで昼寝をするのが正しい温泉旅行のあり方だというのである。そりゃあそうかもなぁ。日頃ちゃんと働いている人は、たまの休みにそうやって温泉にのんびりしに行くというのが、正しい温泉旅行というものかもしれない。しかしなぁ、私は日頃毎日、家でゴロゴロしているからなぁ。たまに旅行に出ると、やたらと行った先で、あちこち歩き回りたくなってしまう。

 今回、旅行先に選んだのは熱川。伊豆も熱川辺りまで下るとなると、いささかスケジュールがタイトになる。宿泊先に選んだ[熱川 大和館]が、比較的料金が安かったので、今回は思い切って二泊してくることにした。

 二泊してくるとなったら、一日目はどこにも寄らないで、チェックインの時間になったら直接、宿に入ろう。ということは出発も遅くていい。朝早くから出ていく必要はない。というわけで、12:00時東京駅発の、踊り子号のチケットを前もって買っておいた。乗り込んでみたら指定席は完売とのこと。へえ〜、平日の踊り子号って、そんなに利用者が多いんだ。ということは週末のチケットは、かなり早くから手に入れないと無理ということになりそう。

 昼食は東京駅の地下で買ったトルティーヤと、車内販売で買ったコーヒーで軽く済ます。

 小田原、湯河原、熱海と少しずつ乗客は降り、伊東で降りる人が最も多いようで、それから先はかなり空席ができた。

 伊豆熱川、14時18分着。熱川に来たのは四年ぶり。四年前は入院の直前だった。あのときは北川泊で熱川まで送迎車に来てもらっただけだったから、正確に言うと熱川に泊まるのは初めて。それでも駅前は四年前と変わっておらず懐かしい。あのときは手術の結果がどうなるかの不安も抱えていたから、今回とはまた違った気分だった。[熱川 大和館]は地図で見ると海岸沿い。屋上に「大和館」と書かれた看板の高い建物が見える。あそこを目標にして坂を降りていけばいいらしい。

 こうして坂を降りだしたら、道の先に一匹の猫が座ってこっちを見ているではないか。三毛だ。近づいて行っても逃げようとしない。「えっ? この猫、ひょっとして触らせてくれる猫? 屈み込んで頭を撫ぜても逃げない。猫が気持ちよく感じる顔の周りや尻尾の付け根を撫ぜてやると気持ちよさそうにしている。それなら何かご褒美に餌をあげようと、持ってきたイカ燻を口の前に持って行ったのだが食べようとしない。お腹は空いてないようで、飼い猫か誰かに餌を貰っているに違いない。久しぶりに触らせてくれる猫に出会った。こういう猫ってなかなかいないんだよねぇ。

 猫にバイバイしてさらに坂を降る。[熱川 大和館]の前に着いてしまったが、まだ14時半を回ったところ。まだ日も高いので、宿に入ろる前にもう少し散歩しようかと思ってしまうのが、やはりまだまだ正しい温泉旅行には程遠いんですな。

 一つ先の、片瀬白田駅までは海岸線を歩いて2.7Km。気持ちよさそうな道だったので、これを歩いて隣の駅まで行ってみることにする。

 歩き出したら、またもや目の前に猫。人懐こそうに寄ってくるじゃないの。この猫にイカ燻をあげたら喜んで食べる。そしてその気配を感じて数匹の猫が寄ってきた。イカ燻をあげると全員喜んで食べる。中に一匹、まだ生後一ヶ月ちょっとくらいの子猫がいる。ただこの子だけは、餌に興味があるというのに近づいてこない。こっちから餌をあげようと近づくとサーッと逃げてしまう。結局、旅行中のヤオヤツにと思って買っておいたイカ燻は猫たちに全部あげてしまった。食後は撮影タイム。これがまたもう餌のお礼のつもりなのか防波堤に飛び乗ってポーズを作ってくれるのだ。海をバックの猫というのは、以前から憬れていた構図。岩合光昭でもなければ撮れないと諦めていた写真。それがこんなところで撮れるなんて。というわけで、今回、下の写真はほとんどこの日に撮った猫ばかり。エヘヘヘヘ。

 片瀬白田という駅は知らなかった。そこまでの道は自動車もほとんど通らない気持ちのいい道。海を左に見ながら、そして波の音を聞きながらゆったりと歩く。まあ、これも私にとっては、のんびりした温泉旅行に近いウォーキングコース。

 それでも片瀬白田には30分ほどで着いてしまった。上り列車の時刻表を見ると、次の電車まで30分以上ある。駅前には何もないし30分ぼんやり座っているのも退屈だ。ということで、元来た道をまた熱川まで引き返す。歩いていると今度は犬が一匹、猛然とこちらに向かって走ってくる。敵意はなく楽しそうに走ってくる。飼い主さんによると、この犬は人間好きな犬で、誰にでも喜んでしまうんだそうだ。今日は猫にも犬にも好かれて、いい一日になった。

 16時すぎにチェックイン。十階建ての建物で、部屋は八階。全室オーシャンビューだが、さすがに八階となると眺めがいい。右から左までぜーんぶ海。この景色が何よりもてなしてくれている。

 ロビーで抹茶のサービスを受け、さっそく大浴場へ。けっこう大きな旅館だから宿泊客はそれなりに多いが、大浴場には二〜三人しか入っていなかった。夜中に男湯と女湯が入れ替わるが、ふたつの大浴場はそれぞれに工夫がなされていて飽きそうもない。

 風呂上りに自販機で缶ビールを買って部屋で飲む。これぞ温泉旅行だ。

 18時になったので食事処へ。伊豆だから、伊勢えび、鮑、金目鯛が売りなのだが、一泊目は、一日三組限定だという鉄板焼きコースにしてみた。これが大正解。料金は同じだが、せっかく伊豆に来たのだから伊勢えびや鮑や金目鯛が食べたいという人は別にして、鉄板焼きコースの方がお得だと思った。
 鉄板焼きのカウンターに座るとスパークリングワインのボトルを注文。
 まずは先付。和牛のクロケット、鮑ソテー肝ソース、トリュフの茶碗蒸し。いきなりご馳走だ。クロケットといってもコロッケというよりメンチ。牛肉たっぷりじゃないか!
 鉄板の上で何やら丸いものを焼いていたが、これが次の椀物、伊勢えびと蓮根の饅頭。
 お造りは、本まぐろやら旬のシイラなど。これを本わさびを摩り下ろして食べる。鮮度は抜群だ。
 ズワイガニは鉄板で焼いてグリル。それに黒酢ソースをかける。
 口直しのニューサマーシャーベットがあって、
 静岡産牛ステーキを目の前でミディアムレアに焼いてくれる。
 締めが金目鯛のひつまぶし。もうお腹一杯でも、これは食べなきゃ。
 抹茶マスカルポーネアイスで口をさっぱりさせて、ごちそうさまでした。

 部屋に帰り、テレビを見ながらのんびり。いつもは初日から歩きすぎてしまうのに、今日は適度なウォーキングのみで疲れもない。

 寝る前に大浴場に行き、寝心地のいいベッドに潜り込む。

 夜中に一度目が覚め、日付が変わって女湯と男湯がチェンジした大浴場に行った以外は、朝までグッスリ。

 そういえば後日思い出したのだが、ボランティアが熱川にいる野良猫をみんな去勢して世話しているというニュースを見たことがあった。猫のいる温泉としてもっと有名になるといいな。私もまた来たくなったし。

11月13日記





















静かなお喋り 11月10日

静かなお喋り

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