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蕎麦湯ぶれいく

霧のハレルヤ摩周湖観光

2014年7月2日

 [スーパーホテル釧路駅前]の部屋で目を覚ますと、窓から光が差し込んでいた。まだ5時だが、外はすっかり明るい。窓からは、バスターミナルが見え、向かいの建物は、[東急イン]。30年前にオートバイで来たときに泊まったホテルだ。

 部屋のタオルを持って、一階の温泉に入りに行く。さすがに朝5時ではほかに入りに来る宿泊客はいない。浴槽で、のびのびと身体を伸ばす。

 部屋に戻って、またしばらくベッドに寝転がる。ちょっと大きめのベッドは、とても寝心地がいい。ビジネスホテルのベッドも、本当にいい物を使うようになった。私が普段寝ているシングルベッドは15年前に買ったもの。当時はかなり奮発していいベッドを買ったはずなのだが、あれより遥かに寝心地がいい。ベッドの進歩も、この15年の間に、かなり目覚ましかったに違いない。

 6時半になったので、宿泊費に付いている朝食を食べに行く。ブッフェ形式。6時半の開始と同時に、かなりの人が押しかけている。トレイを持って、皿に食べ物を乗せていく。驚くほどたくさんの種類の食べ物が置いてある。マンモスホテルの朝食ブッフェには負けるものの、これだけのものがあれば、まったく文句ない。和食も洋食もごっちゃまぜ食べ物を録取る。不思議なもので、いつも「パンとコーヒーだけでいいや」と思いながら、食べ物を目の前にすると、あれもこれもトレーに乗せてしまう。

 窓際のカウンター席に座って食べ始めた。すぐに両隣も埋まる。左の女性はほぼすべての料理を少しずつ乗せてきた。右の男性は、おかずもサラダも大盛り。さらに四種類あったパンを全種類とコーヒーという取り方。猛然とパンに齧りついている。いいなぁ。私は朝からそんなにパンは食べられない。とかなんとか言いながら、取って来たものを完食。さらに根菜がたくさん入ったカレースープを取りに行き、仕上げに牛乳。さらにコーヒー・・・って食べ過ぎだろ。

 7時45分にチェックアウト。今日は定期観光バスに乗ることにした。北海道はとにかく広いし、車を使って廻らないとなると、交通機関の接続が極めて不便。やはり効率よく廻るには定期観光バスを使うしかない。[スーパーホテル釧路駅前]の一階に、阿寒バスの窓口がある。あらかじめ、インターネットで申し込んでおいた、ピリカ号は8時出発。窓口で代金を支払い、ターミナルに入ってきたバスに乗り込む。

 バスは、昨日走ったと同じ道を進んでいく。釧路市湿原展望台へ向かう道だ。しかし今日の予定は湿原を見に行くプランは入っていない。バスの中から眺めるだけ。バスからではほとんど見えない。まっ、いいか。昨日はさんざん見たし歩いたし。

 このバスのガイドさん、実によく喋る。釧路を出発してから、ツアーが終るまでずーっと喋りっぱなしだった。湿原のこと、丹頂鶴のこと、牧畜のこと、いやぁ〜、詳しい詳しい。ツアーの間中、北海道の授業を受けていた趣き。勉強になりました。ただ、時に、真っ直ぐ続く単調な道路を走りながら説明を聞いていると、眠くなることも。そんな時に限って、ガイドさんがタンチョウヅルを見つけた「あっ、丹頂だ」「えっ、どこどこ」と言った瞬間には、もう見えなくなっているのでした。

 最初の目的地は摩周湖。摩周湖には十代の頃来たことがある。それがなんと歌の題名どおりの、霧の摩周湖で、なんにも見えなかった。目の前の湖が霧でなんにも見えないくらい虚しいことはない。それで懲りてしまって、30代になってからオートバイで来た時には、天候もパッとしなかったし、「どうせ見えないだろう」と、行こうともしなかった。今回もなんとなく嫌な予感。頭の中で布施明の歌声が響いている。

 摩周湖で30分の休憩。駐車場から展望台への階段を上がる。果たして見えるだろうか? 「見えた!」。空は曇っていたが、摩周湖は目の前にクッキリと、その姿を現していた。これはきれいな湖だ。摩周湖は、空が晴れているから見えるというわけでもないらしく、また曇っているから見えないというわけでもないそうだ。霧の発生にはいろいろな条件があるようで、しかも、言われる通りに霧で見えないという確率もかなり高いようなのだ。日頃の行いとも言うが、う〜ん、十代の頃は確かに日頃の行いは悪かったのかもなぁ。

 川湯温泉を通過して、硫黄山でまた30分。硫黄泉が噴出しているところ。それ以上のところでもない。東京から来ているらしい観光客の「大涌谷と同じ」には笑ってしまった。それを言っちゃあおしまいなんだけど。でも、大涌谷の黒玉子ではないけれど、温泉玉子という名の茹で玉子を売っている。ここも5個セット。『暴力脱獄』のクールハンド・ルークじゃあるまいし、そんなに食べられないよ。ガムテープを使えば簡単に殻を向けるという解説書とガムテープがテーブルの上に置いてあった。

 屈斜路湖の畔、砂湯で20分。屈斜路湖はオートバイで来た時は、そのまま通り過ぎてしまったところ。いずれ別の機会には、ここに泊まりたいと思っている。あまり一般的ではないようだが、静かな景勝地という感じだ。

 さあ、あとは一路、阿寒湖へ。ここが最終立ち寄り地であり、あとは釧路空港、釧路市街へ向かうことになるのだが、私はここで下車。今宵は阿寒湖に泊まることに決めていた。

 そのままこのバスで釧路へ帰る人は、ここで2時間の休憩。この間に昼食を食べたりアイヌコタンに行ったりすることになる。私は予約した宿の位置を確認してから、阿寒湖の畔を歩き、街の東側に広がる自然探勝路を歩きに行った。ここは道がうまく整備されている森の中。昨日買った熊ベルをザックから取り出して、頭の中で♪ある日 森の中 熊さんに 出会った〜 と歌っていたら、目の前に何か動物がいる。「あっ、キタキツネ」。なんとキタキツネが道の真ん中に立っていて、こっちの方を見ているではないか。急いでカメラを取り出してシャッターを切った。確かに捉えたと思ったのだが、確認したら写ってなかった。化かされたか? 次の瞬間、草木の陰に消えてしまった。

 そのあとアイヌコタンをうろつく。オートバイで来たときは、ここでバンダナを買ったんだったよなぁ。あのバンダナ、どこへやってしまったんだろう。今はもう手元にない。

 15時の観光船に乗る。湖の東側は入り江のようになっていて、ここはちょっとしたジャングル・クルーズの趣き。見たこともない鳥がいたり。このちょっとした冒険のようなクルーズを体験した後は、チュウルイ島へ。ここはマリモ展示観察センターがあるところ。阿寒湖といえばマリモ。しかし、この天然記念物をどう見せるかということで、苦肉の策として作られたのが、この施設なのかもしれない。

 チュウルイ島を出て、船は出航地へ戻る。船内放送でマリモを歌詞にした曲が流れてくる。ひとつは有名な曲らしいが、私は知らなかった。
♪阿寒の山の湖に 浮かぶマリモは何思う マリモよマリモ 緑のマリモ・・・
う〜ん、マリモは何も考えてないんじゃないかなぁ。もう一曲は歌詞の中に、マリモを抱いた女っていう歌詞が出てきて、思わずのけぞってしまった。どういう状況かわからないが、なんか、マリモを抱いて立っている女って、怖くないか。

 船着き場からそれほど離れていないところに建つのが、今宵の宿、[あかん鶴雅別荘 鄙の座]。エントランスを通るとインドネシアか? と言った感じ。センサーで音楽のようなものが鳴るが、これもちょっとガムラン調。ロビーの大きな一枚板のテーブルで、宿帳を書きながら、柚子ジュースと自家製プリンをいただく。これ、おいしいプリンだぁ! 食べ終わったところで、お姉さんが部屋に案内してくれる。どうやらここのシステムは、ホテルに入った時から帰る時まで、決まったひとりの人がお世話してくれるのかもしれない。食事の時も、このお姉さんだった。とても感じのいいお姉さん。うれしくなる。部屋は、畳敷きの広い部屋とは別に寝室があるし、源泉かけ流しの個室露天風呂付き。冷蔵庫は二つあって、一つの方は有料の飲み物。もうひとつは無料で、ミネラルウォーターやお茶が入っている。さらにうれしいのはカップアイスも無料で入っていたこと。

 夕食は食事処で。
食前酒 柚子酒。
箸附 とうもろこし茶巾寄せ。とうもろこしの甘さがしっかり出ていておいしかったぁ〜。
前菜 北海縞海老打瀬漬、蝦夷鹿肉のたたき、じゅん菜(土佐酢)、姫筍とホワイトアスパラの炙り、地路冬瓜浸し、天豆スワン。どれも細かい仕事がしてあるなぁ。
お造り イトウ、本鮪、たんたか鰈、雲丹、牡丹海老。イトウが食べられたのはうれしい。本鮪も口の中に入れただけでしあわせ。
ここの名物は、めんめ鍋だそうだ。昨夜は炉端焼きでめんめを食べたが、今夜はそのめんめを鍋で。上品な白味噌で、うまくめんめの脂を調理している。これは名物というだけのことはある。汁も残らず飲み干してしまった。
焼物 目抜葱味噌焼き。焼魚も上品。
煮物 阿寒ポーク大船煮。薄味の角煮。ラーメン屋の濃い味の角煮とはずいぶん違う。
強肴 富良野産和牛ステーキ。やわらかい。ソースも抜群ですね。
止肴 虹鱒利休漬。もうこの時点で満腹で何も入らないと思っていながら、冷たいこの料理、食べてしまった。
食事 千石黒豆御飯。ごはんまでは無理だったけど、豆御飯と聞いて一口。お腹が空いてたらガツガツいっちゃうんだろうな。
デザート ウェルカムドリンクに付いてきたプリンがあれだけおいしかったのだから、ここのパティシエのデザートがまずいわけない。お腹いっぱいでもしっかりいただきました。
ごちそうさまでした。

7月7日記





















静かなお喋り 7月2日

静かなお喋り

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