梨木温泉 2013年6月27日 群馬の梨木温泉がキャンペーン中らしい。山の中の一軒宿だが、建物によって、梨木館本館、はせを亭、奥の細道と別れる。その中のはせを亭というのに泊まってみようというのが今回の目的。部屋の中に生ビールのサーバーが置かれていて、これが飲み放題。冷蔵庫の中の飲み物も無料というので、これは今日はどこへも寄らないで直接宿に入って、飲み放題を楽しもうという計画。 昨日は一日中雨だったが、今朝はきれいに晴れ渡っている。 電車で行って宿に入るだけだと、今日一日まったく運動をしない事になる。宿のご馳走に飲み放題のビールでは身体に良くない。それで浅草まで歩くことにする。11時50分発の特急りょうもう号に乗ることにしたので、10時半に家を出る。浅草まではゆっくり歩いて一時間ほど。今日は約50分で到着してしまった。 発車まで30分ある。松屋デパ地下探検。同じ浅草発の日光・鬼怒川方面に行くスペーシアにはビュッフェがあったり車内販売があったりするが、赤城方面に行くりょうもうは、そういったサービスが一切ない。それで何か昼用の食べ物を手に入れようと思ったのだ。若いころだったら弁当でも買って電車に乗り込むところだが、この年になってしまうと、どうも食が細くなってしまっている。昼からしっかりした食事をしてしまうと、旅館の夕食が胃に入らない。結局、惣菜パンを買う。それとホームで缶コーヒー。 一か月前に箱根に行ったとき、車窓から見る風景では田植えがようやく始まったという感じだったが、今は見渡す限りの水田が青々としている。新緑も深みを増し、眺めていて飽きない。やはり生命の息吹を感じるなぁ。 相老着、13時32分。陸橋を渡って、わたらせ渓谷鉄道のホームへ移動。13時41分発の下り電車は間もなくやってきた。一両編成。これって『あまちゃん』の北三陸鉄道みたいじゃないか。中に乗っているのも、制服を着た女子高校生がほとんど。 いったいどこでキップを買ったらいいのだろうと思っていたら、路線バスによくある整理券が出てくる機械があったので一枚抜き取る。 2駅目の大間々駅で女性の車掌さんが乗り込んでくる。整理券を見せると「どこまで行かれますか?」と訊ねられ、「本宿(もとじゅく)までです」と答えると、「350円です」と言い車内補充券というキップに、日付と金額をパンチして渡してくれた。なんかこれ、懐かしい。昔よく、国鉄に乗って乗り越しをしたときとか、バスの車掌さんがくれたのと同じシステム。こんなのまだやっているところがあったんだ。 大間々では長い停車時間。大間々を出ると車掌さんが大きなケースを持って再びやってきた。わたらせ渓谷鉄道グッズの販売だ。ひとつひとつ商品を説明してくれる。鉄道マニアなら絶対に欲しくなるところだろうが、私は残念ながら興味が無い。『あまちゃん』でも経営難の鉄道事情は語られているが、わたらせ渓谷鉄道も例外ではないようだ。もっと観光地として人気が出たらと思う。とすると、やはりご当地アイドルの出現でも期待しますか。 本宿は相老から4駅目。電車が無人駅のホームに入ると運転手がキップを回収する。ドアが開き、ホームに降りると梨木館の人がホームで出迎えてくれた。急な階段を登ると道路に出た。そこに宿のバンが停めてあって、それに乗り込む。 自動車は、梨木温泉4kmと書かれた脇の道に入り、クネクネと続く山道を入っていく。最初は登りが続き、やがて下り始めた。ちょうどひと山越えたという感じのところで、梨木温泉到着。 宿の人に案内されて部屋へ。はせを亭は全部で6室。予約を入れるときにどの部屋にするか指定しておいた。高くもなく安くもない中間の部屋、草庵というのにした。通された部屋は10畳ほど。宿帳に記入して、「部屋の説明を」と言われて、窓際を右に入ると、そこにさらに10畳と12畳。すると全部で三部屋ということになる。その3つの部屋にそれぞれ一台ずつテレビが置かれている。何もそんなにテレビがなくてもと思ったら、次にトイレと風呂場の説明。なんとトイレと風呂場も3つある。それで合点がいった。ここは元々は3つの部屋だったものをぶち抜いてひとつにしたものなのだ。なあるほど。 最初の部屋はいわばダイニング。夕食と朝食はここで出される。ここにはエスプレッソマシーンがあって、いつでもコーヒーも飲める。真ん中の部屋には布団が敷かれているから、まあ、寝室ってことなのだろう。最後の12畳の部屋には42インチのプラズマテレビとホームシアター・システムが置かれ、マッサージチェアもあるから、ここがリビングということなのだろう。大きな冷蔵庫があり、中にビールや冷酒、ソフトドリンクが入っているし、冷凍庫にはハーゲンダッツ。これらは全て無料。なにしろ山の中だからコンビニひとつない。娯楽はDVD観賞と酒呑んで温泉入って寝る。これだけ揃っていれば退屈はしないやね。 今は紫陽花の季節。庭にはたくさんの紫陽花が咲いていたが、建物の中にも鉢植えの紫陽花がところどころに置かれ、目にも楽しい。 ホームページには携帯電話はdocomoしか繋がらないとしてあったが、私のauは確かに圏外になってしまうものの、不思議なことに窓際の椅子に座るとアンテナが2本立った。今はもうどんなに山の中でも携帯電話は通じるが、まさかここで圏外のサインが出るとは思わなかった。まあ、浮世を忘れてのんびりしなさいって事でしょうね。 宿泊客が順番で貸切露天風呂に入れるというので、私は15時30分にしてもらった。露天風呂は一旦玄関から外に出て敷地内を歩いて行く。 濁り湯の源泉はぬるめに調整されていて、いつまでも入っていられる感じ。目の前には滝が見える。ここにいるとまさに時間を忘れる。 湯上りに、冷蔵庫で冷えているジョッキを取り出し、部屋の中に置かれているサーバーから生ビールを注いで飲む。一気に酔いが回ってくる。そのあとさらにもう一杯お代わり。人間、「放題」と言われると、どうも意地汚くなる。 18時夕食が運ばれてくる。 先付 さっきまで泳いでいたという岩魚の刺身 じゃがいもの冷製スープ 茹でた鶏肉の料理 空豆を裏ごししてモチモチさせた料理 野菜の煮物 揚げたての天ぷら(蓮根を擦っもの、オクラ、舞茸) どれもおいしい。生ビールと冷酒が進む。 そしてメインはしゃぶしゃぶ。名物キジ肉、大和豚、そして牛肉まで。キジ肉は癖が無くておいしかった。もちろん大和豚も牛肉も。野菜もたくさん付いてきて、この時点でもうお腹いっぱい。 これにキジ肉の釜飯、すいとんまで付く。こんなに食べられないよう。とか言いながら、すいとんは全部飲んでしまったし、釜飯も半分は食べた。そして運ばれてきたデサートまで平らげてしまうのだから現金なもの。 食後は敷地内でホタルが見られるところがあると言われて、宿の人に案内してもらう。今ぐらいの時期から夏にかけて飛ぶそうだが、天気のいい日でないと見られないらしい。今日は幸い天気もよかったので暗闇の中でホタルが光るのが見えた。その幻想的な美しさにしばし眺めいってしまった。ホタルは水のきれいな所でしか見られないというから、ここは本当にきれいなのに違いない。 そのあとも、ビールを飲んだり温泉に入ったりで、静かに夜は更けて行った。 6月29日記 |