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蕎麦湯ぶれいく

2012年9月12日大沢温泉

 八月いっぱいまでは夏休みシーズンということもあって旅行は封印していた。何といっても混むし、場所によってはオンシーズンということもあって宿泊料金が割高だったりする。毎日が日曜日の私が何も無理に、混んでいる上に高い料金を払って旅行することはあるまい。
 というわけで、七月下旬から八月までは、暑い東京でジッとしていた。

 九月。いよいよ動きだそう。

 スーパービュー踊り子号に乗ってみたかったということから、今回の旅行計画は始まった。去年の十一月、北川温泉に行ったことはあったが、あのときはふつうの踊り子号。なんだか気分は、伊豆方面に行くというのに、これでは半分くらいのワクワク感しかなかった。それに手術を前にして、私の心は重かった。今回は晴れてすっきりした気分で伊豆に行かれる。

 11時東京初のスーパービュー踊り子。窓が大きく取ってあって、やっぱり気持ちがいい。やはり、平日とあって利用客は少なく、発券しているのは海側の席だけ。山側の席は誰も乗っていない。

 下田まで約2時間30分。快適な列車の旅を楽しむ。

 下田駅には、今日の宿から送迎のクルマを頼んであった。改札を抜けると宿の名前を書いたものを持っている人が何人か立っている。その中から目当ての旅館名を探し、近づいていくと、「お待ちしていました」とクルマに案内された。

 今夜の宿は大沢温泉ホテル依田之庄。送迎車は田園風景の中を走る。下田からひと山越えたようなところにある大沢温泉までは約30分。ちょっとしたドライブだ。

 すれ違うクルマも少ない国道を快適に走り、国道を右に入り、しばらく行くとクルマは川沿いの宿に着いた。蔵造の古い宿だとは聞いていたが、その外観に圧倒される。これが旅館? 外には大きな水車が回っている。古い作りの天井の高いロビーで宿帳に記入すると部屋に案内された。落ち着いた、いい部屋だ。

 持ってきてくれた冷たいお茶を飲んで、辺りの散策に出る。
 国道沿いに道の駅・花の三聖苑というのがあるというので、それを目標にブラブラと出てみる。宿の前には桜並木の川があり、それを下っていく。
 無人の野菜や梅干しの販売ボックスがあったりして楽しい。

 道の駅は、大きな庭時計が目印。温泉もあって入浴ができるようだった。歴史的建物や資料館も兼ねた複合施設のようなものでもあり、ブラブラして、また宿の方に戻って行ったが、夕食まではまだ時間がある。宿で貰った地図を頼りに、もう少し下流まで散歩してみることにする。

 歩き出すと民家から猫が出てきて、こちらに歩いてくる。どうも旅行に出ると猫と遭遇することが多いというジンクスは、今回も当てはまるようだ。東京都心部の猫は警戒心が強いが、田舎の猫はあまり人を警戒しないのが多い。久し振りに猫の写真を撮る。

 国道沿いの川も桜並木になっていて、遊歩道が続いている。別に何があるというわけでもないが、この片側が川、もう片方の側が田圃という風景の中を歩いているのは気持ちがいい。来月にはもう稲刈りであろう稲穂を眺めながら歩く。
 すれ違うのは、ウォーキングをしているらしい中年女性のふたり連れ、それとランニングをしている体格の良い若者くらい。自転車に乗った中学生の男の子が「こんにちは」と挨拶して通り過ぎる。いいなあ、こういう場所。暑くはないが歩いているうちに自然と汗ばんできた。いい加減のところで引き返す。

 宿に戻って、食事前に風呂に行く。この宿には三つの風呂がある。男性は今日は、庄屋の湯の解放日。天井が高い。二方向に広く高いガラス戸。その向こうは日本庭園だ。戸を開けて庭園のテラスにも出られるようになっていて、湯に飽きると外気に当たってボンヤリできる。浴槽は大きなのがふたつ。ゆったりと入れる。浴室の中にも植物が植わっていて、なぜか池があるのも風流。お湯はぬるめでで、いつまでも入っていられる感じ。

 18時夕食。食事は珍しいことに部屋食。最近はどこへ行っても、人件費のこともあるのだろうが、食事処といわれる食堂に出向くことが多いが、部屋食とはうれしい。

 風呂にはほかに誰も入っていなかったし、ほかの泊り客ともすれ違わない。食事を持ってきてくれた人に聞いてみると、なんと今日は珍しいことにほかに泊り客は誰もいないとのこと。こういうことはほんとに珍しいらしい。

 本わさび付きの刺身のおいしいこと! まさに中トロのうまい鮪が四切れ、ホタテ、そして新鮮なものだから身が首から取れにくい海老。
 陶板焼きは金目鯛、イカ、豚肉、玉ねぎ、シシトウ、じゃがいも。これをポン酢で食べる。金目鯛はもちろん、野菜の甘くておいしいこと!
 金目鯛は姿煮を注文すると別料金になってしまうし、そんなに食べられないと思って大好きな煮つけは諦めていたが、大きな切り身の煮つけが食卓に上った。ラッキー!
 もっとも、名物の桶寿司までたどり着いたところで、お腹一杯でギブアップ。病気前だったら、このくらい食べられたのになあ。

 食後、のんびりとテレビを観たりして、22時に露天風呂・満点の湯に行く。足元以外は、ほとんど真っ暗だが、空気がいい。周りはその名にふさわしく満天の星空。昼間の蝉の声の大合唱は終わり、秋の虫が一斉に鳴きだしている。ひとり静かに『里の秋』を口ずさんでみたり・・・。

 体重を量ってみると、満腹のせいもあるが55.5キロ。二か月前は53キロだったから、ようやく体重も上向きになってきた。





















9月16日記

静かなお喋り 9月12日

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