直線上に配置

蕎麦湯ぶれいく

憧れだった尾瀬ヶ原

2015年6月11日

 明け方に目が覚めて、竹林風呂へ。ここも川の流れが見られる露天風呂だ。さすがに山の中だけあって、朝方は寒いくらい。湯船に身体を浸けていると出たくなくなってしまう。そのくらいいい温度の温泉だ。部屋に帰って再びベッドにもぐり込むと、身体がポッポしている。やはり温泉効果だなぁ。

 今日は曇り空で夕方からは雨になるという予報だったが、今のところ陽が射している。今日の予定は、水上温泉旅館協同組合の出しているバス、尾瀬ライナーで尾瀬に向かう。

 尾瀬は、昔から憧れでもあった。水芭蕉が咲くという広い湿原の木道を歩いてみたい。しかし山小屋に泊りがけで行くほどの暇はなかったし、第一、山小屋に泊まった経験もなく、そんなところで眠れるだろうかという不安もあった。また夜行日帰りの電車やバスというのも体力のことを考えると気乗りがしない。今回、水上で一泊して朝もそこそこのんびりして、一時間ほどバスに乗れば尾瀬に着けるというこのプランは、今の私にとってベストと言える。今回の旅の最大の目的は、この尾瀬ハイキングにあった。

 8時朝食。シンプルな和朝食。焼きシャケ、冷奴、シラスおろし、山菜の煮物、温泉玉子、トロロイモ、サラダ、お浸し、味付け海苔、味噌汁、漬物、ご飯、ヨーグルト。お腹いっぱい。よ〜し、今日はまた頑張って歩くぞ!

 上毛高原駅を8時30分に出発した尾瀬ライナーは、水上に9時。各旅館の前を通過してお客さんを乗せ、私が泊まっている[龍洞]の前は9時35分ごろに通る。少し早めにチェックアウトして、宿の前の道路に立っていたら、35分ぴったりに尾瀬ライナーはやってきた。バスに乗り込むと運転手さんから名前の確認があった。最後部の座席に座ると、「それでは全員揃いましたので、これから尾瀬に向います」と運転手さんから一言あって走り出した。どうやら[龍洞]が最後の通過地点だったらしい。

 それもそうらしく、これ以降は旅館はおろか、家もほとんどない山の中に入って行った。舗装された道路だが道幅も狭く、車がすれ違うのも苦労するほどの道。それが一時間続いた。アップダウンの曲がりくねった道。感覚からいって、ふた山越えたような感じだろうか。とにかく道と緑しか見えない単調とも言えるコースだ。十数人の乗客もまだ眠いのか、みなさん静か。

 バスはやがてマイカー規制されている道に入る。いよいよ鳩待峠。定刻通り、10時30分到着。ここにはたくさんのバスが集結していて、これから尾瀬に入ろうとする人たちでいっぱい。鳩待峠から入る人の数は多いとは聞いていたが、こんなにも多いとは思わなかった。とくに目立つのはクラブツーリズムの募集した観光ツアー客。各地からいろいろなタイプの尾瀬ツアーを企画してやってきているらしい。尾瀬に入る前に準備体操をしている団体もいる。

 鳩待峠から山ノ鼻に向って坂を下って行く。道には二本の木道が敷かれているが、尾瀬では右側の木道を歩くのがルール。もうひとつの木道は復路用。実際に、もうひとつの木道を登ってくる人たちとずいぶんとすれ違う。それにしても人が多い。長〜い列を作って歩くというのは、ちょっとしたストレス。いい景色だなと思って立ち止まったり眺めたり写真を撮ったりという行為は、はばかられる感じ。小学生の遠足の列もスピードが遅いし、ガイド付きのツアーの団体などは、要所要所でガイドの説明があって止まってしまう。すると大渋滞が起こってしまうから反対の木道に出て追い越さなければならない。そうして苦労して一時間ほどで山ノ鼻へ到着。

 ここからいわゆる尾瀬ヶ原に入る。ひたすら広〜い大湿原地帯を、やはり木道の上を歩いて進んで行く。最初のうちは、ここでも渋滞が凄かったが、そのうちに道は空いてきた。この道を一時間歩いて牛首分岐まで行って戻ってくるのが、本日の予定。
 
 尾瀬と言えば水芭蕉。六月中旬までが見頃と言われていて、なんとか間に合った形。うん、よかった、よかった。木道の間から顔を出していた黄色い花は、おそらくリュウキンカだろうなぁ。
 
 透明度のいい水の中にも魚の姿が見られた。ガイドさんの話を耳にしたら、「あれはアブラハヤという魚です」とのこと。

 それにしても一時間、いつまでたっても景色に大きな変化がないので、正直言って飽きてきた。「もういいや」と少々うんざりしたところで牛首分岐到着。ここで休憩している人多し。プ〜ンとカレーのいい匂いがしたと思ったら、カレーを作って食べている人がいた。いいなぁ。こういうところで食べる食事って絶対においしいんだよなぁ。

 一息ついて持参したペットボトルの水で水分補給していると、この休憩所に向ってヘリコプターが飛んできた。物資をロープに吊り下げている。休憩所上空でホバリング。凄い風だ。ヘリは荷物を降ろすとまた飛んで行ってしまった。

 さあ、今来た道を、今度は戻らなくちゃならない。「よっこいしょ」と腰をあげて出発。うしろから大きな背負子を肩にした青年がふたり追い越して行った。歩荷(ぼっか)。荷物を背に背負って山小屋に届ける人。どうやら帰りらしい。お疲れ様。

 行きでもう飽きた道を、また一時間かけて引き返す。山ノ鼻に戻って来たときは、もうヘトヘト。ここで名物花豆アイスを食べる。450円。疲れた身体には糖分はいわばカンフル剤。元気復活。あとは出発地点の鳩待峠への坂道を登るだけ。

 ここでもクラブツーリズムの団体が長〜い列を作って登っている。かなり若い人たちも多いが、高齢者も多い。途中で息を切らして座り込んでいる人も。この時間になると、もう尾瀬に入って行こうという人はほとんどいないから左側の木道を使って追い越す。しかし凄い人数だなぁ。

 山ノ鼻→鳩待峠のコースタイムは1時間30分となっていたが1時間かからないで着いてしまった。帰りの尾瀬ライナーは16時出発。15時40分には到着すると言っていたが、まだ時刻は15時前。こんなことならもう少しのんびりしてくればよかったかな。休憩所でアイスコーヒー(400円)を飲んで暇を潰す。

 約束の15時40分を5分ほど過ぎたところで帰りの尾瀬ライナー到着。乗り込んだら、全員16時前に揃っていて、すぐさま出発。帰りのバスの中もみなさんお疲れになったのだろう。スヤスヤとお休み。

 昨夜の宿[龍洞]の前を通り、一路、水上へ。バスの乗客の半分くらいは水上駅の手前で降りて行った。[水明荘]という宿泊施設だ。国家公務員共済組合連合会の施設。一般の人間も泊まれるようだけど、国家公務員だともっと安く泊まれたりするのだろうか?

 終点の上毛高原駅には18時到着予定だったが、なんと17時30分に着いてしまった。帰りの新幹線は18時台は、18時42分しかなかったから、そのキップを買っていたのだが、これならもう一台前の新幹線に乗れる。窓口で17時53分のものに変えてもらう。

 列車に乗り込むとアナウンスがあって、この便には車内販売があるという。しばらく待っていたら車内販売が通りかかったので、缶ビールとオツマミのセット。今回もお疲れ様でした。それにしても天気に恵まれ、雨どころか陽もずっと照っていた。お天道様にも感謝る

 もう鳩待峠から入る尾瀬は、二度と行くことはなさそう。あの人、人、人の群れはもう、うんざり。自然を求めて行って、かえってストレスを感じて疲れて来るんじゃ意味がない。でも、比較的空いているという尾瀬沼方面へのアプローチには、いつか挑戦してもいいかなと思う私なのでした。

6月13日記





















静かなお喋り 6月11日

静かなお喋り

このコーナーの表紙に戻る


トップ アイコンふりだしに戻る
直線上に配置