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蕎麦湯ぶれいく

十勝定期観光バス午後の部

2015年7月6日

 昨年、釧路を中心に旅行を計画していて、いわゆる道東を調べていた。釧路周辺だけでも、細かく廻ろうとしたらかなり時間がかかると思ったが、まあ取り残したところは、またいつか行く機会もあるかもしれないし、一生行かれなくても、それはそれ、私には縁がなかったと思って諦めればいいやというくらいに考えながら地図を見ていた。そんな最中に一番気になったのが帯広を中心とした十勝平野。釧路へ行くには、たんちょう釧路空港を使うとして、地図上ではそんなに離れていないところに、むとかち帯広空港がある。釧路と帯広は、すぐ近くのような気がするのだが、ここもひとつの独立した文化圏。なんだか面白そうだなと感じた。

 北海道に一年に一度旅行したいと決めて、今年は四回目。いくつかの候補から、私の頭の中では十勝にいってみたいという気持ちが、だんだん膨れ上がっていって、この春には「今年は十勝にする」と決めていた。

 十勝には定期観光バスが走っている。午前コースと午後コースがあり、それを合わせたものが一日コース。これを一日目に午後コース、二日目に午前コースと分けて利用するのが今回の狙い。この定期観光バスに乗ることの特典のひとつは、空港から市内までの連絡バスが無料になること。この連絡バスだけで1000円かかるのが無料というのは大きい。これも同じ十勝バスが運営していることの強みでもあるが、十勝バスさん、太っ腹ですこと。羽田7時10分発の Air Do で帯広へ。羽田を出る時は雨だったが帯広は曇り空ではあるものの、雨は降っておらず。さっそく十勝バスのカウンターに行って、インターネットで予約しておいた名前を告げ、午後コースのチケットを買い、市内までの無料キップを受け取る。おおっ、硬券だよ。先日観た『路線バス乗り継ぎの旅』で十勝バスさんに乗るシーンで硬券を発券していたのを見たけれど、ここでも硬券。もっともバスに乗るときにこのキップ、すぐに回収されちゃったから写真を撮る暇もなかったけど。

 空港連絡バスで帯広バスターミナルに向かう。白樺並木の一直線の道路を走っていると、「また北海道にやってきたな〜」という感慨に浸れる。四年連続ともなると、最初の感激こそないが、この雄大な景色は普段ゴミゴミとした風景の中で暮らしていると、解放された気持ちになるからいい。

 10時前には帯広の駅に着いた。まずは腹ごしらえ。帯広といえば豚丼。まだランチタイムには早くて開いている店は少ないが、帯広駅改札の横に、豚丼弁当を売っている店があった。[ぶた八]という店が出店しているようだ。加熱式容器のものもあったが、使い捨て容器の豚丼をレンジで温めてくれるタイプのがあった。こっちの方が楽だ。大きなサイズが850円。小さなサイズが650円。小さなサイズのものを買い、温めてもらう。駅の待合室へ行って、ホカホカの豚丼を食べる。タレが別になっていたので上からタレをかけまわす。うん、このタレはおいしい。なんだか豚肉はなくとも、ただご飯にかけて食べてもおいしい気がする。豚丼って、先日まで食べたことがなかったのだが、帯広行を決めてから、東京に出店している[ぶたいち]で食べて、豚丼っておいしいな〜と認識したばかり。帯広には豚丼の店がたくさんあり、なかには専門店ではなくとも中華料理屋などでも別メニューで出しているところもある。店によってタレの味が違うらしくて、人気の店は人によってバラバラだけれど、帯広の人って本当に豚丼が好きらしい。どこにでも店があるし、お昼時など歩いていると、人気店の前には行列ができている。

 午後コースの定期観光バスは、バスターミナルを出発するのが、13時25分。それまで時間を潰さなければならない。地図を見ると競馬場がある。帯広競馬場。といっても、ばんえい競馬だ。出かける前にインターネットを調べたら、今日はレースのある日。ただしどうやら第一レースの発走は14時過ぎらしい。これはちょっと間に合わないが、ばんえい競馬の競馬場って見たこともないので、どうなっているのか見に行くことにした。地図によると中心部から白樺通という道をまっすぐ西へ行けばあるらしい。というわけで西へ向かって歩き出したのだが、この帯広の道というのは、歩くと妙に疲れる。歩道に人はほとんど歩いていないし、車道もまたほとんど自動車が走っていない。東京都心を歩くのも疲れるが、このやたらだだっ広い道というのが、歩いていて足に疲労感を起こさせるのじゃないかと思う。

 とにかくこっちの方だという道を辿って歩いているうちに、あちこちに標識が目に飛び込んできて、競馬場まで来ていた。別にものものしいゲートがあるわけでもなく入場料を取られるわけでもなく競馬場はそこにあった。観覧席ステタンドがあり、目の前は、ばんえい競馬の直線コース。第一障害の坂と第二障害の坂がある。惜しかったなぁ、もう少し早く気が付けば定期観光バスの予定を入れずに、この競馬観戦を楽しんだのだが。でも、ばんえい競馬のレース場をこの目で見られただけで楽しかった。

 集合時間にはまだ時間があるので、ここから南に下る形で、緑ヶ丘公園に行ってみることにした。西南大通を下って行く間に、曲がり角に気が付かずに直進してしまい、また戻るというミスをしたりして、ようやく緑ヶ丘公園に到着。いや〜、公園といっても、さすが北海道、さすが帯広。とにかく広い。とんでもない広さの芝生地帯には400mベンチが置かれている。しかしこのとんでもない広さの芝生、災害避難場所に指定されているらしいが、普段何に使っているんだろう。ここでサッカーをやったら選手はヘトヘトになってしまうに違いない。ゴールとゴールの距離が400m。ディフェンスのしようもないだろうし、責める方だって相手のゴール前まで行き付く前に倒れてしまうんじゃないの? アハハハ。

 ほかにもいろいろな美術館や博物館、動物園もあったが、そろそろ時間も迫ってきていたので帯広駅のバスターミナルへ戻る。

 今日の午後コースの参加者は、17〜8人といったところ。午後コースは花めぐり。三つのガーデンをバスでめぐる。最初に訪れたのは[紫竹ガーデン]。今でも健在な紫竹昭葉さんという方が24年前の63歳の時、老後をどう過ごそうかと考えて、15000坪の敷地をすべて庭にして、あらゆるところに花を植え、お客さんにも見てもらえる自分の広大な庭を作ったのだそうだ。これは確かに驚いた。私など都心部のマンション住まい。庭なんて夢の夢みたいなもの。それがこの自然の中のお花畑だ。その庭は整然としたものではなく、どちらかというと自然のまま。あえてあまり手を入れずに自分の敷地を花でいっぱいにしようという試み。実際、三つ回ったガーデンの中で、一番きれいに花が咲いていたのがここ。ただ庭としてはあとの二つに比べると雑然とした感じがする。まあ、好みの問題ですかね。

 十勝は平野が続いているところだが、[十勝ヒルズ]はその名の通り、ちょっと小高い丘になったところにある。[紫竹ガーデン]が手づくりのよさだとすれば、こちらはプロの手が入った、実に整然と整備されたガーデン。しかも花だけではなく野菜畑も見事だし、木の庭、蓮の池、うさぎや羊やポニーのいる場所も実によく手入れされている。さらにはどうやら本格的な料理を出すレストランもあり、定期観光バスで来るのでなければ、ここで食事がしたかったくらい。

 最後の三つ目は、一番帯広市内に近い[真鍋庭園]。ここはガーデンというよりも、もはやテーマパク。順路に従い歩いて行くと、いろいろなエリアがあり、人工的に自然を作り出してしまったかのよう。これは私は三つの中では一番気に入ってしまった。できることなら二周してきたかったくらい。

 バスターミナルに戻って来たのは17時すぎ。予定より早めに終了だったが実に楽しかった。各施設の入園料がそれぞれ800円くらいすることを考えて、これに空港→市内連絡バス1000円も浮いたことを考えると、4100円の料金は安い。得した気分でウキウキと下車。ところが本日の宿泊先のホテルへ向かう途中でたいへんなことに気が付いた。バスの座席にカメラを忘れてきてしまったのだ。カメラはズボンの後ろのポケットに突っ込んでいたのだが、シートに座るのに尻ポケットにカメラが入っていると座りにくいので、外に出して、隣の座席に放り出しておいたのを、うっかり忘れてしまっていた。こういうことは最近では年中だとはいえ、困ったものだ。慌ててバスステーションにとって返し、事情を説明すると、バスに連絡を入れてくれた。カメラは見つかった。ステーションまで届くのに、何時になるかわからないが、ケータイに電話をくれるとのこと。やれやれ。

 今夜の宿は駅前の[帯広ガーデンズホテル]。チェックインを済ませたらなんだか疲れがドッと出る。喉も渇いていたので缶ビールを買って飲む。ふわ〜。このホテルはいわゆるビジネスホテルだが、温泉大浴場が付いている。最近はこういうビジネスホテルが増えた。そこでひとっ風呂浴びに行く。

 カメラのことが心配だし、いつケータイに電話がかかってくるかもしれないので、早めに部屋に戻ってテレビを見ていたら、18時40分に電話があった。カメラがバスステーションに戻ってきたということなので、急いで取りに行く。とりあえずよかった。カメラ自体はそんなに高価なものではないが、今日撮影したデータが全部手元から無くなってしまうのでは取り返しがつかない。しかもこれから今回の旅行はまだ続くからカメラがないと本当に困ってしまう。

 晩飯は、電話で予約を入れておいた料理屋[春花 しゅんか]。ここに3500円のコースを予約しておいた。店は玄関を入って二階。
 ロワイヤル・ペルレのハーフボトルを貰って、付きだしはトコブシ。
 3500円のコースは六品。本日の六品は、
小鉢・・・玉蜀黍(とうもろこし)の豆腐とずわい蟹のにこごり
 抹茶酢がかかっていて、その甘さが引き立っている。
進肴・・・丸茄子の葱味噌焼き
 上品なごま油の薫り。味噌の味も白ごまのアクセントもおいしい一品でした。
刺身・・・炙り勘八、帆立貝柱、青曽以(あおそい)の昆布〆、雲丹
 どれもおいしかったけれど、やっぱりこの時期の北海道といえば、なんといっても雲丹。うれしかったな〜。
焼物・・・ツボ鯛の幽庵焼き
 幽庵焼き大好き。香りがいいものね〜。鬼おろしもうれしいし、付け合せもよく考えてあるな〜
揚げ物・・・銀鮭の竜田揚げと玉蜀黍とオクラと里芋揚げ
 銀鮭はもちろんおいしいけれど、やはり玉蜀黍も里芋も北海道のは一味違う。なんでこんなに甘いんだ?
 〆物・・・しらす雑炊と漬物
 〆がしらす雑炊とはうれしいな。お腹いっぱいなのにしっかり完食してしまいました。

 ホテルに帰りベッドに入ると、今朝は早起きした上に、一日中いろいろなこともあったので疲れて早々に眠りに就いてしまった。

7月9日記





















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