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蕎麦湯ぶれいく

五色沼

2015年9月29日

 裏磐梯に行ったのは、私が小学生の夏、両親に連れられて行った家族旅行だったから、もう50年以上も前のことになる。あのときに目にした五色沼のきれいな水面の色が忘れられない。

 というわけで、今回の旅行は裏磐梯。

 幸い天気はよさそうなので、雨具はいらないだろうと判断して、レインウェアも折り畳み傘もザックに入れなかった。ただ、今夜の宿にインターネットで予約を入れたら、「朝晩は寒いので暖かい恰好をしておいでください」とメールが返って来たのが気になった。旅行に行って風邪をひいてはつまらないので、レインウェアの代わりに薄手のセーターを一枚入れる。

 前回、旅行に出たのは7月初旬の北海道。8月は暑いし、どこも混んでいるので旅行には出ないことにしているから今年もパス。9月に入ったらどこかへ行こうと思っていたら悪天候続き。そのまま、あれこれ予定が入ってしまっていて、もう9月も終わろうとしている。こうして約3ヶ月ぶりの旅行ということになった。

 最初に東北新幹線に乗ったのは、まだ開通して間もない頃のこと。郡山に在住の知人の結婚式に出席するために乗ったのが最初。そうだ、そのあと一度、仙台まで乗ったことがあったっけ。あとは2年前と3年前、塩原へ行くのに那須塩原まで行ったくらい。今回は久しぶりに郡山まで乗る。

 8時56分東京発の、つばさ129号は、上野、大宮、宇都宮各駅で停まった以外は通過して郡山に10時13分に到着。大宮までは比較的ゆっくり走っていたのが急にスピードを増したような感じ。

 郡山で在来線への自動改札を抜ける。小さな売店があって、ここで駅弁を購入。秋季限定、松茸弁当が1050円。「安いですね〜」と思わず声を出したら売店の女性が「国産じゃないんですぅ〜」。アハハハ、別に国産じゃなくても結構。

 すでにホームに入っていた磐越西線に乗り込み、お腹が空いていたので、さっそく弁当を開ける。スライスした松茸が数枚乗っている炊き込みご飯弁当。結構、いい香りがする。野菜の煮物やサツマアゲ、大学芋もおいしく炊けている。

 10時45分に郡山を出発した磐越西線の快速は11時17分、猪苗代到着。11時25分発の路線バスに乗り換えるのには8分の余裕しかない。3ヶ月前に帯広駅の乗り継ぎで、もう少しで乗り遅れるところだったので、少々心配になったが、問題なく駅前のバス乗り場に入って来た路線バスに乗車。

 バスは市街を抜けて行く。前方に磐梯山の姿が見える。山って、なぜか見ただけで感動を覚えるものがいくつかある。代表的なのはやはり富士山だが、九州の阿蘇山とか、Othumさんの写真にときどき登場する弘前の岩木山。そしてこの会津の磐梯山。人はなぜ、こういう特定の山に「うわーっ」という感情を抱くのか。その理由がわかるのだったら教えてもらいたい。

 東北新幹線で郡山まで来た車窓では、もうほとんど稲刈りは終わっていたが、この地域は、まだ稲穂が黄色く残っている。それでもそろそろ稲刈りのシーズンなんだろうな。猪苗代の駅に降りたら、さすがに涼しいを通り越して寒いくらいだったもの。

 民謡『会津磐梯山』の中で、「♪笹に黄金が成り下がる」という歌詞があるが、私はこれ、笹ではなく稲穂の黄金色の米穀のことを意味しているのかと思っていたら、どうも違うらしい。笹は60年に一度実を付けるらしくて、ある飢餓の年に磐梯山の笹が一斉に実を付けて、食糧不足を救ったという話があるらしい。私は最初に磐梯山に来て50年ちょっと。あと少しで笹の実が実るということだろうか?

 今宵の宿は、秋元湖入口バス停近くの[ホテリ・アアルト]。車窓からその場所を確かめて、さらにその先の、五色村入口まで行く。

 五色沼自然探勝路の出発点は毘沙門沼。ここは五色沼の中でも一番大きく、沼の中を見ると大きな鯉がたくさんいた。エサやりは禁止とのことだが、人が覗きこむ位置に上がってきて、いかにも餌をねだっている様子。案外、観光客が食べ物をあげているのかもしれないが、おそらく観光用に飼われているに違いない。そうでなけりゃ、あんなでっかくならないでしょ。

 毘沙門沼を起点に、赤沼、みどろ沼、竜沼、弁天沼、瑠璃沼、青沼、柳沼と回って、桧原湖に隣接する裏磐梯高原バス停まで歩く。毘沙門沼は水面を手で触れるくらいの近さの場所があったが、ほかの沼はほとんど遊歩道から遠く眺めるといった格好。なにしろもう、50年以上前の小学生の時に来て以来だから記憶は定かでないが、あのころはもっと近くまで入って行けたような気がする。年々観光客も増え、自然を荒らさない処置が施されたのかもしれない。全長3.6キロ、一時間ちょっとの距離をのんびりと歩く。と、瑠璃沼を通過したあたりで雨。今日は降水確率10%くらいと言っていたのに、山の天気はなかなか一筋湯ではないらしい。折り畳み傘も持ってないので、残りの道を足早に進んで裏磐梯高原のレストハウスへ逃げ込む。次のバスは14時19分。まだ25分くらいあるので、このレストハウスで休憩。と、また雨は止み、太陽が出てきた。山の天気はこれだからなぁ。

 路線バスには十数人の観光客が乗り込む。ほとんどみんな五色沼入口まで戻る人々。クルマを置いてこの遊歩道を歩き、路線バスで戻って来ようという人たちだ。私はここで降りずに宿のある秋元湖入口まで乗る。と、バスを降りたところで、またいきなり雨。なんだか雨に追いかけられているよう。

 雨に濡れて[ホテリ・アアルト]に入ると、宿の人がタオルを持って来て下さった。ありがたい。ウェルカム・ドリンクのアップル・ジュースをいただきながら宿帳書き。ラウンジにはソファーもあるが、外が眺められるカウンターがあり、そこがすっかり気に入ってしまい、以降、帰るまでこのラウンジを何回も利用することになるのだが、ここに座るのが一番落ち着くようになってしまった。

 部屋に案内される。この宿は全13室。私の泊まった部屋は208号室。部屋の中央が凹んでいる不思議な空間だが、この部分はエレベーター・スペースらしい。しかし木目のよさを生かした作りで、こじんまりしていて落ち着く。

 まずはさっそく温泉へ。全13室が塞がる日は混雑するのだろうが、それほど大きくない浴室ながら誰も入って来ない。結局一泊するうちに5回入ったが、一度もほかの人と一緒にならなかった。なんだか貸切風呂状態。この日の泊り客は4組だったそうだ。

 早い時間にチェックインしてしまったので、夕食までに時間がある。外を見たら、またもや雨は上がっている。それなら近所を散歩しますか。明日の予定である秋元湖のサイクリングロードを歩き中津川渓谷探勝路まで行くコースを途中まで確かめに行くことにする。用心のために宿で傘を借りて秋元湖と書かれた立札の方向の道を歩いて行く。いくつかのペンションや民家を抜けていくと、20分ほどで道も狭くなってきた。そこに、秋元湖展望台の立札。その狭い道を歩いて行くと、突然に視界が開けた。想像していたよりもはるかに大きな湖がそこに見えた。これは凄い眺めだ。雄大な湖。五色沼にちょっとがっかりしてしまった私だが、こちらの方がなぜか感動がある。やはり人間、大きなものを見ると、なにかしら感情が高ぶる。これは雄大な山を見たときと同じ。いったいなんなんでしょうねぇ。テレビ画面には収まらない何かを感じるんだろうなぁ。

 夕方になって、言われた通り寒くなってきた。これは宿に帰って、またひと風呂入った方がいい。元来た道をテクテク歩いて宿に戻る。

 ひと風呂浴びて作務衣に着替えラウンジへ。ここでは22時まで飲み物のサービスがある。例のカウンターに座って庭を眺めながら湯上りの生ビール。これが飲みたくて旅行に出て、歩き、温泉に入るようなものなんだよねぇ。いつもは缶ビールのことが多いから、生ビールはうれしい。

 生ビールを飲んでいるうちに18時。夕食の時間なのでダイニングルームへ移動。夕食時の飲み物も料金に含まれているとのことなので、食事の流れで、スパークリングワイン、白ワイン、赤ワインをそれぞれ一杯ずつ。いくら飲んでも同じだからって無茶な飲み方をしなくなったのはエライでしょ。

 本日のメニュー。

本日のアミューズ
 サーモンフュメのタルトレット
 香り枝豆のフォンダン
 コンテチーズをはさんで焼き上げるグージェル
 キッシュローレーヌ
 グレープシードオイルでヘルシーに仕上げる海老のアヒージョ
金山カボチャの冷製スープ
帆立貝とサーモンのタルタル 野菜のヴィネグレットをつけて
目鯛のメダイヨン フュメと野菜をソースにして
和牛テンダーロインのロティー マルサラソース
白河清流豚と味噌バルサミコパスタ
パープルスイートポテトのクレーム・ブリュト

 今まで食べたことがない珍しい料理が次々に出てくる。最初に本日のコースメニューを見たときには、こんなに食べられるだろうかと心配してしまったが、全部おいしく食べられてしまった。とくに最後のパスタはきついだろうなぁと思ったのだが、ガラスの小鉢に入って来たパスタは「よく混ぜておめしあがりください」とのことで、マゼマゼしたら、なんとなくジジャー麺みたいな感じになってパクパク食べてしまった。
 目鯛のメダイヨンって、シャレみたいですけど、食材をメダルのように丸くカットすることなんですね〜。う〜ん、勉強になりました。
 お野菜がどれもこけもおいしい。ビーフに付いてきた食用ホウズキ、ミニトマトの食感にも似ているのだけれど、それともまたちょっと違う。おいしいものだなぁ。
 紫芋のスイーツをハーブティーでいただいて、ごちそうさまでした。

 食後、ひと休みして、もうひと風呂。
 ラウンジでナイトキャップのウイスキーをいただく。料金を気にしないで済むのがうれしいね。

 部屋に戻ると、お夜食が届いていた。もう食べられないよぉと思いながら、蓋を開けてみたら焼きおにぎり。辛みそが付いていておいしそう。私は子供時代、よくおこげのおにぎりに味噌を付けたものを母親に作ってもらっていた。焼きおにぎりのみそ味には目がない。結局全部食べてしまったー!

10月2日記





















静かなお喋り 9月29日

静かなお喋り

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