横谷峡 2014年10月8日水曜 8月はどこへ出かけても混んでいるから、暑くても東京で耐えていることにして、9月に入ったら早々にも、どこか高原の避暑地に行って来ようと考えていた。ところが9月に入ってみたら、天候がいまいちパッとしない。しかも例年と比べて、そんなに暑くない。東京はもう涼しいくらい。とすると、避暑目的の旅行というものは、あまり意味が無くなってしまった。天気予報を見ると、中央の山沿いよりは伊豆の方が天気がよさそうなので、結局、伊豆長岡へ行くことになってしまった。 10月に入って、それじゃあ今度こそ高原に出かけてみようかなと思い立った。当然、避暑と言う感じではないが、今度は秋らしくなって、そろそろ紅葉も始まっているんではないか。いくつか考えていたプランの中から、今回は蓼科に行ってみることにした。 7時発のスーパーあずさ1号に乗るために、6時台の都営新宿線に乗ったら、人でいっぱい。とても座れない状態。朝早くから通勤している人がこんなにたくさんいるのだろうか? 以前だったら6時台、それも早い時間だったら余裕で座れたはずなのに。みなさん、通勤ラッシュを嫌って、早めに通勤するようになっているということなのか? 6時台の電車に乗るという事は、朝は5時起きだろう。まあ、こちとら仕事をしていたときには通勤電車に乗らないまでも4時起きだったんだから、それ以上の早起きだったのだが。 新宿で降りて、JRの改札を通る。南口コンコースの[駅弁屋]で、デニッシュサンドと甘酢肉団子を購入。中央線特急ホームへ。すでに入線していたスーパーあずさ1号に乗り込む。 スーパーあずさ1号は混んでいた。どうやら指定席完売の様子。立川、八王子でも、どんどん乗ってくる。こんな早い時間の電車なのに盛況だなぁ。それも行楽客の姿などはほとんど見えず。お仕事なのだろうか、スーツ姿の人が多い。それに制服姿の高校生らしいのがたくさん乗っている。修学旅行か? なにか課外授業に向っているのか? 仕事をリタイヤすることになり、平日に通勤電車とは反対方向の列車に乗っていると、以前はなんとなく罪悪感のようなものを感じたものだが、もう今やあまり何とも感じないようになってきた。そう、あれからもう丸三年になるんだよなぁ。 車内販売のワゴンが回って来たので、コーヒーを買う。これを飲みながら、買ってきたデニッシュサンドと甘酢肉団子。デニッシュサンドは四つ入っていて、四つそれぞれ挟まっているものが違う。甘酢肉団子は、ほろほろと柔らかい。最初は普通の駅弁にしようかと思ったのだが、これでよかった。車内販売のホットコーヒーを加えても千円程度。最近の駅弁はなんたかやたら高くて、ちょっとよさそうなものだと千円を軽くオーバーしてしまう。 9時8分茅野駅着。西口2番乗場のバス停へ。9時20分のメルヘン街道バスに乗る。普通の大型バスをイメージしていたのが、可愛らしいバスがやってきたので思わず笑みがこぼれる。 バス市街地から田園地帯へ。稲刈りが終った田圃と、まだこれからの田圃。稲が黄色く色づいてきれいだ。これぞ日本の風景。米を主食にしている国ならではの光景なんだよなぁ。 乗降客が無いまま走り続け、横谷峡入口の停留所で十数人が乗り込んでくる。みんなハイキング姿の高齢者たち。おそらくこの辺りの宿で一泊して、横谷観音までバスで移動して、そこからまたここまで降りてこようという計画らしい。 道路は高度を上げて行って、バスは十数分で横谷観音到着。広い駐車場があって、ここまで自動車でやってくる観光客も多そうだ。今はまだ紅葉が始まったばかりだが、もうしばらくした土日には、かなりの観光客が押し寄せるのだろう。 バス停から横谷観音までは道幅の広い道を歩くのだが、ここから大瀧神社を経由する道は人気が無く静かそうなので、こっちへ。大瀧神社は黒曜石を祀った神社。ここを参詣して、反対側の段を下る。こちらの方がいわば参道。下りきったところに鳥居が立っていた。 ここから横谷観音はすぐのところにあった。広い境内である。その境内に珍しい道祖神が。なんと、ろくろっ首! 奥には展望台があって、ここから王滝が見下ろせた。ちょうどポッカリと王滝が見下ろせる。あとで近くまで行ってみようと思った。 坂を下って分岐点。右へ行けば下って横谷温泉方面だが、時間があるので左へ進み、おしどり隠しの滝へ行ってみることにする。こちらの道はかなり狭い。右は急な斜面。アップダウンはあまりないが慎重に足を進める。30分ほど歩いたところで、おしどり隠しの滝に下る急な坂道。つかまって降りるものも無く、慎重に降りなければならない。登山靴で来てよかった。しかし来てみた甲斐があった。ここは素晴らしい滝だ。紅葉ももう始まっていて、滝と紅葉のコントラストが素晴らしい。ここでも高齢者のハイカーが多い。しかもみなさん手に手に大きなデジタル一眼レフ。大きな三脚持参の人もいる。それだけの装備を持ってこの急坂を降りてくるのはさぞかし大変だったろう。まあ私と違って健脚で年季の入ったハイカーなんだろうがたいしたものだ。私などオモチャみたいなポケットカメラ。それがやっとだ。たしかにそれだけの装備のカメラなら、さぞかし素晴らしい写真が撮れるのだろうが、私はこれで充分。そんなに凄い写真を撮りたいとは思っていない。ハイカーとしても、へなちょこハイカーだから、キツイところには行かない。それで満足。 しばしこの素晴らしい景色を楽しみ、来た道を戻る。途中、あずま屋があり、ここからも王滝が見えた。こちらの方が展望台よりも近くに見える。ただ全貌は見えない。それを見るには、ここからさらに下ったところにある道から川沿いの道を歩かなければならず、その道はかなり険しいと書かれている。とりあえず行ってみますか。 ここから広くなった道をしばらく下って行くと、左側にたしかに渓流のすぐ横を王滝の下まで行く道があった。しかし、ちょっと行くと道と言うよりは、岩場を越えていくような、かなり大変そうなルートになっていた。それを見て、あっさりと諦める。怪我でもしたら堪ったもんじゃない。無理はしないと決めているのだ。 広い道を、左に川を見ながら下って行く。一枚岩、鷺岩、などを眺めながら霧降の滝。滝って何なんでしょうね。ただ急に川が落ちているってだけのことなのだけど、眺めるのって楽しい。 横谷温泉旅館の脇を通り、坂を下ると乙女滝。ここはその名とは裏腹。滝が落ちているすぐ手前まで道路があり、滝の飛沫が飛んでくる。むしろ豪快な感じがするが、全体をみると、なんとなくなだらかな女らしさも感じる。 横谷峡の滝めぐりもこれで最後。木戸口神社を見て、パークホテルの前を通り、横谷峡入口に帰ってくる。ここには蓼科中央高原観光協会がある。蓼科といえば、そばらしくて、そばのお土産品がズラリと並んでいる。奥では、そばが食べられるお店もある。そういえば蓼科はいたるところに、そば屋がある。ちょっと食べてきたいものだが、若い時と違って、すっかり量を食べられなくなってしまった。ここで食事をしてしまうと夕食が食べられなくなる。気持ちとしては、蓼科のそば食べ歩きがしてみたいものなのだが。 横谷峡入口から信濃路自然遊歩道を通って、蓼科湖に抜けるつもりだったのだが、地図の見方を誤ってしまった。てっきり国道299号メルヘン街道を歩いて行くと遊歩道に出られると思っていたら、そうではなくて、どうやら観光協会のあたりから入る道があったようだ。 疲れていたこともあって目の前にあったカフェに入る。ここはペンションも兼ねているらしい。テラスの席に座りアイスコーヒー。350円。ハーシーのチョコレートが付いてきた。疲れているときに甘いものってうれしいね。 店のオーナーに道を聞き、元気を取り直して遊歩道を歩き出す。この遊歩道は自動車も通れる広い道だが、クルマはほとんど通っていない。歩きやすくて気持ちのいい道だ。楢ノ木池という風情のある大きな池の脇を通過。40分ほど歩いたところで蓼科湖に出た。ここは灌漑用の溜池。どうやら人造湖のようだ。いろいろとレジャー施設もある。 蓼科湖からビーナスラインと呼ばれる道路を少し登ったところに、今宵の宿[ホテルハイジ]はあるらしい。そろそろ足が歩くのを嫌がりだしてきたが頑張って歩く。しばらくすると左側に[ホテルハイジ]のゲートが見えてきた。そのゲートがエントランスで道が上へと続いている。最後のひと踏ん張り。坂を登りきったところに[ホテルハイジ]はあった。15時30分到着。 フロントで記帳を済ませ、部屋へ案内される。ハイジという名にふさわしく内装はかわいらしい感じ。部屋に一応テレビはあるが、家具の中に隠されていて、観音開きの戸を開けないと見えないようになっている。俗世間を逃れてテレビの無い生活を欲しい旅行者に配慮した作りのようだ。テレビ自体も小さなサイズ。部屋にテレビが無いと確かに落ち着いた感じになって、これはこれでいいものだ。 まずは露天風呂に行くことに。露天風呂に行くには、一旦広大な庭に出て、そこから坂を下る。男女に別れた露天風呂は可愛らしい作り。3人も入ったらいっぱいになってしまいそう。それでも誰も入っておらず、のんびりと過ごす。この露天風呂は身体を洗う事は出来ず、ただ浸かるだけ。それでも、露天風呂って、普通、あんまり身体を洗う人っていないでしょ。 20分ほど浸かって着替える。庭に戻り、椅子に腰掛けて、生ビールを注文。ホテルの名前のようにスイス風の服を着たおねえさんがビールを持って来てくれる。よく歩いたあと、温泉に入ってさっぱりし、飲むビールの味はまた格別だ。 夕食まで時間があるので、薄暗くなってきたものの、ぶらりと外出。蓼科湖まで戻り、土産物屋、地元のコンビニを冷かして、蓼科湖の夕暮れをぼんやり眺めているうちに、本当に暗くなってきてしまったのでホテルへ戻る。 夕食はホテル内のレストランで。 ロゼワインをデカンタでもらう。 前菜は、スモークサーモンのグリエ、ういきょうのババロア、そしてプチトマトをゼリー状にしたもの。みんなおいしかったが、とくにういきょうのババロアは珍味。 二皿目はフォアグラのフイユテだった。根セロリのピューレと栗。 メインは仔羊ロース肉のグリエと仔牛フィレ肉のフォアイエ。柔らかくておいしい。 デザートはバナナの入ったチョコレートケーキ、シャーベットなどをハーブティでいただいた。満腹。 レストランの人が、「皆既月食が見えますよ」と言うので庭に出てみる。空に赤い月が見えた。そして空には満天の星る東京ではこんな空は見えないよなぁ。 部屋に戻ってベッドに入ったら眠くなってきた。ここのホテルは大浴場は無く、露天風呂も22時でクローズ。夜中に入りたいときはユニットバスということになるが、珍しく朝まで一度も目が覚めることは無かった。 |