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蕎麦湯ぶれいく

御在所ロープウェイ

 6時起床。
 地下の浴場は、朝は6時から入れるので、部屋の目覚まし時計を6時にセットしておいたのだ。さっそくタオルを持って浴場へ。こんな朝早くから風呂に来るビジネスマンはいないらしく、他には誰もいなかった。朝風呂、気持ちいいのになぁ。でも、これから今日一日またお仕事のビジネスマンは少しでも長く寝ていた方がいいのかもしれない。

 部屋に戻って、6時25分から10分間、NHKのテレビ体操。

 このホテルは朝食付き。6時30分から食べられるとのことなので、体操を終えてさっそく最上階のレストランへ。貼り紙には、コーヒー、サラダ、パンとあったので、簡素なコンチネンタル・ブレックファーストを想像していた。そりゃそうだ。5500円のシングルルームでは、アメリカン・ブレックファーストのようなものは期待できまい。
 レストランに入ると、番号札を取るように言われた。7番。店内を見渡すとすでに6人の宿泊客が食事の最中。番号を呼ばれて厨房のカウンターに行くと、プレートを渡された。中にはスクランブルエッグ、ソーセージ、2種類のサラダ、トーストが乗っている。しかも店内にはテーブルが置いてあり、セルフでコーヒーやジュースの飲み物類、それにパンも取り放題だ。おかげで朝からお腹いっぱい。元気が出てきたぞ。

 レストランの窓から松阪駅が見える。静かに一日が動き出している。部屋へ戻って、洗面を済ませ帰り支度。
 7時50分に、大満足のお世話になった、ホテルAU松阪を後にする。

 8時7分の電車に乗って四日市へ。通勤通学に利用している人も多いのか車内は混んでいた。それでも津で大分降りる。

 四日市に着いて、湯の山線に乗り換える必要があるのだが、はて、湯の山線の乗り換えってどこだ? ここで私は大きな間違いに気が付くことになる。松阪駅にはJRと近鉄線が乗り入れていて、本来だったら近鉄線で四日市まで行かなければいけなかったのだ。駅員さんに聞いて、湯の山線さんは近鉄の路線であることがわかる。JRの四日市駅と、近鉄の四日市駅では、ちょっと離れたところにあるらしい。

 改札の駅員さんに、近鉄四日市駅までの行き方を聞くと、まっすぐ一直線に道を行けばいいとのこと。歩き出してみると広い道路が真っ直ぐ続いている。遠回りになってしまったが、結果的にはこの道が気持ちよかった。広い道路の中央が公園のような道になっていて木がきれいに紅葉している。これが見られただけでも儲けものもの。

 電車が四日市の街を抜けると、穏やかな田園風景が続いている。
 思えば、今年の1月に退院して、4月は塩原で桜を見て、5月は中伊豆で新緑と田植えを見て、6月に北海道で一面の緑と伸びだした稲を見て、7月に八ヶ岳高原と草津で青々とした山々と成長した稲を見て、9月には伊豆で秋の兆しを感じ刈取り間際の田圃を見て、10月には水上で刈取りの終わった田圃に更け行く秋を感じた。今、冬を迎えようとしている田圃や、遠く雪を被った山々を見ていると、四季の流れを感じる。こうしてこの8か月間、私は季節を追いかけながら日本を旅してきたことになる。今まで、毎日毎日朝から晩まで、来る日も来る日も働き詰めの人生だった。ようやく、四季のうつろいを、落ち着いて肌に感じることができるようになった。ほんとに生きていてよかった。
 ちなみに、一年前の昨日は癌の手術をした日。あのとき手術をしなれば、今頃私はもう死んでいたかもしれないのだ。

 湯の山駅へは30分ほどで着いた。ここで御在所ロープウェイ行のバスを待つ。
 時間があるので駅前の土産物屋に入って暇を潰していると、店の人が、「ほんとうにいい日に来なさったね」と言う。ロープウェイ付近の紅葉は今が見ごろらしいし、こんなに晴れた日も珍しいそうだ。昨日はこっちの方は雨だったらしいし。バスを待っている人も少ないみたいだし平日ということもあるから、今日はロープウェイも空いているかも知れないと思ったら、「いやいや、天気がいいとなると、みなさん自動車で来なさるから。バスもたくさんやってきます」とのこと。

 バスで湯の山温泉停留所へ。ここからロープウェイ乗り場まで、自動車道を10分ほど歩いて上る。するとロープウェイの乗り場と、ゴンドラが行く先の高いところに山頂らしきものが見える。これは凄い!

 ロープウェイに乗ってみて驚いた。これは今まで経験したロープウェイでもかなり長い距離のものであるだけでなく、谷底までの高さもかなりのものがある。こんな怖いロープウェイは初めて。とはいえ、景色はまさに絶景。特に出発地点の近くは紅葉の真っ盛りだ。それが次第に高度が上がるに従って冬の景色に近づいていく。一度で二度おいしい、得した気分。それに天気も最高。

 頂上に着くと地面は雪。長靴の貸し出しもしていたが、まだそれほどでもない。足場が悪いので慎重に歩く。遠い山々の景色も抜群。ホントいい日に当たった。
 山頂を散策して歩く。この先にはさらにリフトがあるのだが、リフトの先を見てみると雪がたっぷり積もっている。「雪は嫌だな」と思い、これはパス。下りのロープウェイに乗る。

 ロープウェイの乗り場からは、また歩いて下ってバスを待つのが億劫になってしまいタクシーで近鉄湯の山駅へ。
 近鉄四日市駅で快速に乗り換えて名古屋へ。

 早めに名古屋に出たのは、突然、名古屋でひつまぶしが食べたくなったから。今や東京でもひつまぶしを食べさせてくれる店は増えたが、やっぱりひつまぶしだけは本場の名古屋に来なければというのが私の持論。味噌カツも煮込みうどんも名古屋の名店が東京に進出しているが、うなぎはやはり東京とは焼き方からして違うから、食べてみても「ちょっと違うんだよなあ」と思ってしまう事が多い。
 ひつまぶしといえば、[以ば昇本店]。タクシーに乗って行ってみればシャッターが閉まっている。金曜定休。定休日とは気が付かなかったなぁ。
 どこかほかに、ひつまぶしが食べられるところはないか。時刻もそろそろ14時半。飲食店自体、昼の営業はほとんど終わっている。こんなときは、携帯電話のインターネット機能で検索。すると名古屋駅のレストラン街で15時過ぎまで営業している鰻屋を発見。タクシーで名古屋駅まで戻る。

 [備長エスカ店]。よかった、やってた。ひつまぶし、さすが本場の味だ。おいしい、おいしい。
 と、あとで東京に帰って気が付いたのだが、この備長、東京に進出していたのだ。銀座二丁目と、池袋パルコ、さらには東京スカイツリータウン・ソラマチにも出店しているんだとか。急にガックリきたが、今度東京の店にも行ってみよう。

 15時50分の、のぞみで東京へ向かう。
 事前にきっちり旅行計画を立てて行くのも楽しいが、行き当たりばったりのハプニングもこれまた楽しものだ。
 帰りの車窓からも夕暮れの富士山が見えた。
 どんなに綿密な計画を立てても、天気とそれに伴う景色だけは、その時になってみなければわからない。

 すっかり日が落ちて暗くなった東京駅。行きと同様、家まで歩いて帰る。

 快い疲れを感じ、早めに寝床に入る。おやすみなさい。

11月20日記





















静かなお喋り 11月16日

静かなお喋り

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