謎のおばあさん



あれは俺が中学生、いや小学生の時だったかもしれない。とにかくかなり昔の話だ。 俺が自宅の近くの道路を歩いていたときのことだ。その道路は、片道1車線だが車の流れは途切れない道路で、道路の端の歩道を歩いていた。歩道といっても大人2人が並んで歩くのが窮屈なくらいの狭い歩道だ。 気がつくと、俺の前をずいぶん腰の曲がったおばあさんが歩いていた。 ゆっくりゆっくり歩いているので、こちらはかなり歩きづらい。

俺はおばあさんを追い抜こうとして足を速めた。そのときだ。おばあさんが俺の気配を察知したかのように足を速めたのだ。あれ?こっちももう少し足を速める。すると、相手はさらに足を速めた。

・・・・追い抜けない。

まあ、走るほどの事ではないし、おばあさんが足を速めればそもそも追い抜く必要はない。 あんな腰の曲がったおばあさんを追い抜けなかったことはちょっと釈然としなかったが、俺は普通に歩き始めた。・・・・・あれっ?気がつくと、おばあさんも元の速度に戻っている。また歩きにくくなった。「なんでこうなるんだよ。」仕方がないので再度追い抜きにチャレンジした。早足で歩く。あれっ?おばあさんは、また急に足を速めた。今度はこっちも気合いを入れて足を速める。しかし、おばあさんもスピードアップ!曲がった腰で突進。

・・・やっぱり追い抜けない。

「いったい何なんだ。」俺は再びスピードを緩めた。案の定、おばあさんもまたゆっくりゆっくり。今度は俺が走ったらどうするか試してみたい気もしたが、もし相手も走り出したらさすがに怖い。また歩きにくくなったが、もう追い抜く気はなくなっていた。

後から考えると、ひったくりか何かと思って危険を感じたのかもしれない(痴漢だと思ったとは言わせないが・・・)。しかし、上にも書いたように、車は通るし人も歩いてる。しかも真っ昼間だ。そんなに危険を感じるシチュエーションではない。それに、一回もこちらを振り返らなかったのも何か変だ。

いったい、あのおばあさんは何者だったんだ・・・・・。未だに謎のままだ。

(1st Feb,2001)


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