バカ犬とクソガキ



俺は犬が嫌いだ。どうやらこれは、犬嫌いの母親の影響があるようだ。母親は小さい頃、足を犬に咬まれたことがあり、今でも犬に吠えられると怖いらしい。さらに、彼女は潔癖性なので、外を歩き回った足で飛びつかれたり、よだれが服に付いたりするのがたまらなく嫌なようだ。統計を取ったわけではないが、身近にいる動物だけに、母親の犬の好き嫌いが子どもに及ぼす影響は大きいんじゃないだろうか?

以前、テレビ番組で、妊娠している女性が精神的に緊張すると、明らかに胎児の脈拍等に変化が見られるという事を言っていた。犬に吠えられた母親が恐怖を覚えると、胎児も心穏やかではないということだ。となると、胎児にも外界の音は聞こえるらしいから、犬が嫌いな母親の子どもは、生まれたときから「犬が吠えると緊張する」という条件反射を起こすことだってあるはずだ。
生まれた後も、犬嫌いの母親は、子どもと散歩するときに犬のいる道を避けるかもしれないし、野良犬に吠えられたら大騒ぎするだろう。近寄ってきたら「しっしっ」と言って嫌がるかもしれない。こういう具合に、母親が犬嫌いだと先天的、後天的に子どもに大きい影響を与えるような気がする。

さて、俺の「犬嫌い=母親由来説」の真偽はおいといて、とにかく俺は犬が嫌いだ。吠えてうるさいし、よだれは垂らすし、汚い足で飛びかかってくるし・・・。大体「犬は人間の古くからの友達だ」なんて言う奴がいるが、大間違いだ。友達にお手ちんちんをやらせる奴がどこにいる。学校なら「いじめ」になるぞ。それに、そもそも俺は犬の顔が嫌いなんだ。俺は、丸っこい顔が好きだから猫は大好きだが、犬みたいに鼻がとんがってる顔はダメだ。子犬の時はまだかわいいが、だんだん鼻が伸びてくるにしたがって嫌いになる。

同じような理由で、俺は人間の子どもも嫌いだ。赤ん坊の頃は、よだれを垂らし、ギャーギャー泣くし、うんこは臭い。少し大きくなると生意気になって、憎まれ口は叩くし、いたずらはするし、ゲームセンターでは、頼みもしないのに見ず知らずの俺に近寄ってきて「あ、それはこうやった方がいいよ。」とか教えたがる。

実は犬と子どもには共通点がある。それは、飼い主又は親に「デリカシーが無い」ということだ。つまり、自分の犬や子どもが他人を不快にさせていることに気づいていないわけだ。

俺がある家(親戚とかではない。)に行ったときのこと。ピンポーンとチャイムを鳴らすと、玄関の向こうで人間より先に「ワン!ワワワワン!」と犬の鳴き声がする。続いて中年の女性の声。「あらあらメリーちゃん。あなたのお友達じゃないのよ。お客様なのよ。まあまあ、こんなに喜んじゃって・・・」嫌な予感がした。次の瞬間、玄関が開いてメリーちゃんが勢いよく飛びかかってきた。コーギーっていうんだっけ?あの「顔はコリーで足はダックスフンド」っていう変な犬だ。そんなに大きくない犬なので倒されるわけではないが、盛んに俺の足に飛びついている。気が付くと、スーツのズボンにメリーちゃんの毛がたくさん付いていた。心で泣きながら笑顔をつくる。「ほらほら、お客さんが中に入れないじゃない。ほんとに大歓迎なんだから。誰か人が来ると嬉しくってしょうがないのよ。」・・・・・・あのねえ、俺は犬が嫌いなの!どんなに歓迎されても全然嬉しくない!っていうか、こういうときは俺が我慢しないといけないわけ?じゃあ、あんたが家に来たらニシキヘビで大歓迎してやろうか?(犬もヘビも好きなら逆効果かもしれないが。)

犬の嫌いなところを、猫と比較して列挙してみる。

ワンワン吠えてバカ丸出し。
(猫は吠えない)

しっぽふってバカ丸出し。
(猫は人に媚びない)

舌出して、よだれ垂らしてバカ丸出し。
(猫は舌を出して「ハッハッハッ」なんてやらない。)

犬は逃げるとき振り返りもせず一目散でバカ丸出し。
(猫は逃げても遠くで必ず振り向いて様子を伺う。)

人をなめ回してバカ丸出し。
(猫は意味もなく人を舐めない。)

これと同じ事が人間の子どもの場合にも起こる。電車でとなりに座ってるクソガキに髪の毛を引っ張られたり、靴の泥を付けられたり、よだれを垂らされたりすることは誰でも経験あるだろう。その親は、一応「どうもすみませ〜ん」とか言いながらも「コラ!ほんとに少しもじっとしてないんだからあ」などと嬉しそうだ。こっちはこれから出勤で、スーツが汚れないかハラハラしてるのに、全く意に介さない。母親が凄く美人だったり、当の赤ん坊が可愛いければ、まだ我慢のしようもある。しかし、そういうときに限って、見ただけで意味もなく殴りたくなるような不細工な親子だったりする(しかもうりふたつ!)。「自分がこんなに可愛いく思うのだから、周りの人もそうに違いない。」と思っているんだろうが、「その子を可愛いと思ってるのはこの世でお前だけだ。」と教えてやりたくなる。

まあ、今回は強い異論があろうが、俺にとってバカ犬はバカ犬で、クソガキはクソガキだ。別に好きになるつもりはない。

(27th Feb,2001)


←お帰りはこちら