あるお好み焼き屋



4ヶ月ほど単身赴任をしてたとき、マンションの近くにとても気になるお好み焼き屋があった。 民家みたいな入り口なんだが、電気のついた小さい看板もある。 基本的に料理ができない俺はほとんどが外食となるんだが、マンションの周りは民家とうるさい犬しかいない。歩いて1分ほどの場所にあるこのお好み焼き屋が使えると、雨の休日などはかなり大きい。 それにけっこう夜遅くまで開いているので気になってしょうがない。 きっとお好み焼きをつまみにビールを飲めるんだろう。

ということで、ついにある土曜日の夕方その店に入った。 しかし、入った途端に期待は裏切られた。 3〜4人が座ればいっぱいのカウンターだけの店で、 端のほうにはマンガが積み上げてある。 壁に並べられたメニューは日に焼けている。 汚いのはまだいいんだが、メニューに酒類がない。本物の(?)お好み焼き屋だ。

誰もいないので「こんばんは」と声をかけると 「はいはい」と言っておばあさんが出てきた。 すぐ奥には茶の間が見えて家族団らんの様子。 「民家みたいな」ではなかった。民家だった。

俺は出るに出れず、しょうがないので「いか玉」を頼んだ。 なんと380円、安すぎるのも嫌なもんだ。 しばらくすると6〜7才の孫が出てきた。
「おばあちゃん何してるの」
「お好み焼きを作ってるんだよ」
「何か手伝おうか」
「はいはい大丈夫だよ」

この女の子が外孫であることを祈った。 いつも家にいるのなら「何してるの」とは聞かない。 もし内孫にもかかわらずこの質問をしたのなら、この子のおばあちゃんは 「珍しいくらい久しぶりに」お好み焼きを作ってることになる。 まさかこの子が生まれてから一度も・・・なんてことはないだろうな。

しばらくして、なんの変哲もないお好み焼きが出てきた。 どっちかというと広島風で、薄い皮の中に具が入っている。 ソース入れのふたは穴があいていた。(さびてるのだろうか・・・) 味はというと可もなく不可もないという感じ。 小麦粉の皮に野菜を入れてソースで味付けすれば そんなに味に変わりがあるわけはない。 ただ、キャベツがやたら量が多くて(しかも角切りだ)、うさぎになった気分だ。

要するに、小中学生が学校帰りにちょこっと寄るような田舎の店よ。 (ほんとに小中学生が寄ってればまだいいけどね。)
もう2度と行かないでしょう。

(11th May, 2002)


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