世話を焼く女



レストランで「肉の焼き具合はいかが致しましょうか?」と聞かれたら、俺は「レア」と答える。別に「肉汁がうんたらかんたら」とうんちくをたれるわけではない。レアは気持ち悪いという人だっているだろう。それを否定する気は毛頭ない。

逆に言うと、他の人がどうあろうと俺はレアがいいということだ。上でも書いたようにレストランなら各人が「俺、レアね。」「あたしはミディアムレアがいいな。」「俺はウェルダンで。」などと注文すればいい。レストラン側で自分の好みの焼き具合にしてくれる。(もっとも、レアを頼んだつもりなのに鉄板の上でジュージュー言ってる肉を切ったらミディアムだったということはよくあるが・・・)

ところが、問題は焼き加減を自分で調整しないといけない焼肉屋での食事だ。これから忘年会シーズンだし、多人数でその手の店に行く機会も増えるだろう。しかし、こういうとき必ずよけいな世話を焼く女がいる。鉄板にガンガン肉を乗せて、「さあみんな食べて、食べて〜」などと言う女のことだ。(この手の女はたいてい「食べて」を2回言う。)

こういう女は焼き加減にあんまりこだわっていないから、肉を鉄板に乗せるだけ乗せてフォローをしない。油断していると、肉のおもてはまだ生で、裏は真っ黒になってしまう。俺にはそれが耐えられない。俺は必死になって肉を裏返す。しかし、俺だって生ビールは飲みたいし、レバー刺しも食いたい。肉をひっくり返してばかりはいられないのだ。っていうか、俺は肉を食いに来たのであって、ひっくり返しに来たのではない。そういう思いが、つい心のスキを作ってしまう。生ビールをごくごくっと飲んで、「くーっ、うめええええええ!!」などと言ってるうちに、いつのまにか、すこし焦げた肉が自分の皿においてある。

食べて、食べて〜」(・・・こいつか)

「あれ〜、食べないの〜?」(語尾を延ばすなっての)と言いながら、また俺の皿に肉を置いている。今度はさっき置いたタレのたっぷりついたカルビーの上にタン塩を重ねてきやがった。「ぐわああああ!!」タレ系と塩系を一緒にするなああああ!!
こういうときにたまりかねて、「もういいよ、俺は自分のペースで肉を焼くから。」と言うと 「遠慮しなくていいのよ、食べ放題なんだからあ」などと、こちらの言い分を全く聞いてくれない。

肉を鉄板に乗せるのが親切だと思っているこの手のバカ女と、同じテーブルについてはいけない。

( 29th Nov, 2000)


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