悲哀、失望、期待



カズ:

俺は決してカズが嫌いではない。むしろ大ファンだった。
・・・92年アジアカップ広島大会、引き分けでも次がないイラン戦。両チーム無得点で引き分けムード濃厚な後半終了間際。 オフサイドぎりぎりで飛び出したカズはキーパーと1対1。俺はテレビに向かって叫んでいた。
「頼むぞ!カズ!!」
「まかせろ!」と声が聞こえたような気がした。次の瞬間、二アサイドのゴール上方にボールは突き刺さっていた。
・・・この時以来、カズは俺の期待にことごとく応えてくれた。ドーハやJの創生期を見てきた人の中には、俺のようにカズに特別な思い入れを持つ人が無数にいるはずだ。

しかし、昨夜の試合でカズが終了間際に出てきたとき思った。 万一この男が決勝点を取ったら、この約6年間が結局無駄になってしまう。 日本は7年前俺がテレビに叫んだときと何にも変わってないことになる。 バッジオが一発芸でインテルを救うのとは違う。プレーを見る限り、明らかにカズは終わっている。

小野:

なんで、こんなに気になるのか?俺だけじゃないはずだ。 この男に自分でも理解できない期待をしてしまうのは・・・。
中田がペルージャで大活躍しても、素直に中田ファンと言いたくない理由があった。 この男がいたからだ。
今に見てろ。中田が逆立ちしても小野のファンタジーにはかなわない。 そう思ってた。
しかし、冷静に見れば、昨夜は全く輝きがなかった。少なくとも日本代表の中で並の選手だ。 このままファンタジスタは幻想になってしまうのか。洒落にもならないぞ。

俊輔:

うまい。とにかくうまい。現時点で、小野よりも遥かに強い輝きをはなつファンタジスタだ。 頭では理解している。素晴らしい選手だ。
・・・でも生理的にどうしてもだめなの・・・見た目が・・・(合掌)

昨夜の試合:

「攻め込んでいたが、結局中田を中心とした個人技でチームとしてのコンビネーションとしてはイマイチ」とかスポーツ紙や評論家が言っている。 そんなもん当たり前じゃん。代表の試合なんだから。 五輪代表なんかは比較的合宿とか頻繁にやってるけど、 フル代表なんて海外に出てるやつもいるわけだからコンビネーションなんか成熟するわけがない。 今回みたいにワーッと各国から呼び寄せて、チョチョイと打合せしてハイ本番。 結局、個人技の集大成なのよ、代表は!
逆に言うと、国のレベルが如実に出るわけよ。 ブラジルの代表なんて急に集まったって、がんがんパス回していけるんじゃないか。 つまり、ブラジルは飛びぬけたひとりじゃなくてチーム全体の平均点が高いわけだ。 道端で遊んでる子どもや八百屋のオッサンがすんげえサッカー上手いんだろ?ああいう国って。 サッカーにおける国力よ。
だから、昨夜の試合が日本のサッカー国力なんだ。 そういう視点でみたらあんなもんだよ、日本は。期待し過ぎちゃいけない。 と言うより、昨夜のパス回し悪くなかったぜ。 むしろ、Jリーグ百年構想は間違ってないという確信を得たね。 小学生のガキンチョレベルから国力は間違いなく上がってる。

(16th Mar,2000)


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