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寒風吹きすさぶ夕暮れ時。
あるバカ女子高生が下校途中、歩いていると、
大きめの石をふんずけてしまい、足がガクンとなった。
「っていうか、チョー運悪いって感じ。」
どこにでもある、ごく日常的な風景...。
しかし、そこに一つだけ、非日常的なことがあった。
バカ女子高生が踏んだモノは、石ではなく、亀だったのである。
「いでで、また誰か踏んでいきやがったのにぃ。しつれいなのにぃ。」
その亀はとてものどが渇いていた。
手持ちのお金はジャスト20円。
「あと100円、あと100円さえあれば、ジュースが買えるのにぃ。
そしてそれを、がぶがぶ飲めるのにぃ...。」
という、かなり図々しい願いを持っていたことは確かである。
するとどうだろう、亀の前方にあまりにジャストなタイミングで
100円玉が落ちているではないか!!
「おおー、ラッキーなのにぃ!」
亀と100円玉との距離、おおよそ20メートル、その間、障害物なし。
亀は100円玉に向かって最短距離となるようなコースをとり、歩き始めた。
つまり、直線ルートである。
一生懸命歩いて、その距離がようやく5メートルにまで縮まった。
「あともう少しなのにぃ、がんばるのにぃ!」
ここで我々が頭に入れておくべき事は、
亀というモノは一般的に、動作が遅いという事実である。
そして、この恐るべき事実は、あまりに無情な悲劇をもたらした...。
突如後ろから走ってきたハナタレガキが、先にその100円を拾ってしまったのだ。
「100円だ、ラッキー。 ゲーセンでもいこーっと。」
くやしがる亀。
「くそーーーー、もうちょっとだったのにぃ。ゆるせないのにぃー。
ぼくちんが、ぼくちんがこんなにのどが渇いているというのにぃーー、
あのこわぁ、あのこわ、あの100えんを、ゲーセンでつかってしまうのにぃーーー!!」
そこで亀は気を取り直し、極めて紳士的な態度でそのハナタレガキに話しかけた。
「ときに少年、わたくし、亀というまことにつまらぬモノでございます。
わたくし、ただいまとてものどが渇いているのでございます。
よろしかったら、よろしかったらでいいのですが、その100円を、
わたくしめに恵んではいただけないでしょうか。」
ハナタレガキは亀の方を見て言った。
「うるせえ、このクソガメ! あっちいけ!
つっても、トレェからあっちいくにも時間かかるな、ぎゃはは!」
(むっかぁ〜、下手にでりゃいい気になりやがって、このガキャア、
ぜったい殺すっ!!!)
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「フォーメーション、ワン!!」
亀は高々とジャンプし、手、足、頭、しっぽを引っ込め、
ハナタレガキに向かって猛烈な勢いでブッ飛んだ!!
「カメニッシュアターック・スペシャルゥゥウウアアアアーーーー!!!」
ドッカァァアアーーーーーーーン!!!!
「ぐおっへぇぇええーーーーっ!! うぎゃぁぁああーーーー!!!!」
ハナタレガキの腹にカザアナが開いた。
「フォーメーション、ツー!!」
亀の甲羅がアンテナとなり激烈な電波を放射した!!
「ハイパーカメニッシュ・ビームゥゥウウアアアウオリャアアアーーーー!!!」
ズビビビビビィィーーーーーーー!!!!
「おぎゃあああああーーーーっ!! からだがぁ、カラダがああああーー!!!!」
ハナタレガキは激しく痙攣しその場にどさっと倒れた。
全身黒こげ状態。
「フォーメーション、スリー!!」
亀の甲羅の縁から無数の刃が出た!
シャキィーン!!
そして亀のカラダが高速で回転した!!
「とどめだぁぁああーーー!! ファイナル・カメニッシュ・デスラッシャァァアアーーーー!!!」
ぶぶぶぉぉおおおーーーーーーーん!!!!
ザークザクザクザクザクゥーーーーーーー!!!!
「ほぉぉーーぎゃぁぁぁぁあああああああーーーーーーーーーーー!!!!!!」
ハナタレガキ、からだ、まっぷたつ。 死亡。
「ぜえ、ぜえ、くそっ、またやっちまった...
このガキがイケねぇんだ、俺が下手に出てんのにぃ、出てんのにぃ....」
そして亀は何もなかったかのように100円玉を拾い、自販に向かった。
自販の前には怖いにぃちゃんが3人立っていた。
「おい、そこのカメ! その100円よこせや!!」
「いやなのにぃ。 この100円は、苦労して手に入れたのにぃ。
絶対やらないのにぃ!」
「なんだと? 上等じゃねえか、このクソガメ!!」
先ほどの三つの技で持てる力の殆どを使ってしまった亀は、
3人の怖いにぃちゃんにボカスカにやられ、
100円玉を奪われた後、全身に灯油をかけられ、火をつけられながら、
マンホールの中に捨てられてしまった・・・・・。
//完//
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この話を孫に読んで聞かせたあと、
じいさまはふぅーっと静かにため息をつき、
そして話し始めた。
「どうじゃった。」
孫は言った。
「グロかった、でもとってもためになったよ、おじいちゃん。
要するに、見かけで相手を判断しちゃいけない、そして、
この世は弱肉強食だってことだよね。」
「いや、違う。」
「え?」
「この話が言わんとしていることはなぁ、
やっぱり女子高生が一番ちゅうことじゃ。」
「そうなんだ。」
孫は2個目のみかんに突入していた...。
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