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 ● 1994年って、何があったんだろうか?
 

 


 ■ 奴隷天国 エレファントカシマシ (1994)


 宮本浩次 - vocals, guitar
 石森敏行 - guitar
 高緑成治 - bass
 冨永義之 - drums

 

  おおよそ一般のエレカシファンですらも敬遠するこのアルバム、
  これが最高傑作だというのは、あくまで、”僕にとって”である。

  アルバム全体を覆うのは、”悲観的人生観”。
  これといった夢も目的もなく、ただ淡々と日々を送る人々の己の人生に対する諦め、失望。
  そういった状況や心情を表す歌詞こそがこのアルバムの全てであり、
  全ての曲において妥協することなくその世界一色で統一されている。 
  どうしようもなく後ろ向きなこのアルバムは、一種のコンセプトアルバムでもある。

  宮本浩二の自由奔放に暴れまくるボーカルと、絶妙なタイミングで決まるかけ声、
  意味不明(?)な発声が、ネガティブな言葉一つ一つと相まって僕のハートに突き刺さってくる。

  これを聴いていた学生当時、病んでいた僕の心が、
  彼の吐く言葉一つ一つにとても激しく共振したのを覚えている。

  タイトルチューン”奴隷天国”での、「おめぇだよ!!」の連発は、特に強烈だった。

  サウンド的には至ってシンプルで、軽く歪んだギターにベースにドラム、
  それらは特別な加工もなく、キーボードもコーラスボーカルもない。
  それがまた、ライヴ的で生々しくもあった。

  このアルバムは、”僕は大好きだ”というだけであって、一般には、 
  どうだろうか。 わからない。
  ただ彼はこのアルバムによって一度後ろを振り返り、
  何かを確認して再び前に進んでいったのではないだろうか。

  だから、エレファントカシマシの歴史を振り返るに当たって、このアルバムのみにスポットを当てて、
  善し悪しを判断するのは本来間違った見方なのかもしれないが、
  僕は敢えて歪んだ観点からこのアルバムが一つの作品としてとても素晴らしいものと感じてしまった。
  それは、僕がこのアルバムと出会った当時、ある意味、非常に歪んだ人間であったからに他ならない。
  その時の”歪んだ感動”を、今も少なからず引きずっているのも事実。

  ちなみに、一番好きな曲は”浮き世の姿”。
  どの曲も甲乙つけがたいが、畳み掛ける宮本の唄の展開が非常に魅力的に響く。

  ”いつものとおり”や”寒き夜”といった今作の締めへ向かうに至る曲の郷愁感も
  アルバム全体としての魅力を形作る一つとなっているが、
  少なくとも「”寒き夜”のメロディー、結構イイネ」みたいな聞き方は一切してない。

  そもそも”そんな風に耳に入って来得ないアルバム”だったし、
  そんな聞こえ方してたら、きっと自分にとってなんの変哲もない凡作で終わってただろう。

 (2014/06/24改)


   track list

  01. 奴隷天国
  02. 太陽の季節
  03. 絶交の歌
  04. おまえはどこだ
  05. 日曜日(調子はどうだ)
  06. 浮世の姿
  07. 果てしなき日々
  08. いつものとおり
  09.
  10. 寒き夜