愛って言ってイイデスカ

  *2*


 
 
 

港に着くとルフィは大はしゃぎで飛び出して言った。
ウソップもナミも目当てのものがあるようで、勝手に出ていく。
残されたのは、サンジとゾロ。

サンジは考えた。
ゾロは暇だ。
普段はケンカばっかりしてるけど、別に嫌いじゃねえし。
こいつがついてきたら、重いもんも買える。
たまには、いいか。

「オイ、てめえ、何か用があるのかよ」
サンジの言葉にゾロは曖昧に返事をした。
「いや、特には」
「なら、買い出しにつきあえ!! きまりな!!」
返事もしてないのに、さっさとサンジは船を下りた。
陸から手招きをする。
「はやく来いよ!!」

ゾロは複雑な気持ちで陸に降りた。
あちこちでサンジが買い物をすると袋は全部ゾロに渡される。
これって・・・荷物持ち?

「いやー、助かるぜ」
上機嫌のサンジは次々に品物を買う。
ゾロの初めてみるような嬉しそうな顔。
 
 
 
 

しばらく行くと何か祭りのようなものをしているようだ。
高い建物が見えて、乗り物みたいなものが見える。
家族連れがそこから笑いながら出てくる。

サンジの足がそこで止まった。
高く上っていく乗り物をじっと見ている。

通り過ぎる人々。
話声。
サンジは上を見上げたまま、何も言わなかった。
ゆっくりと高く上がり、回っていく乗り物。
それを黙って目で追っている。

ゾロはその様子を見ていた。
コイツ・・・。
観覧車に乗りたいのか・・・。
て、あれは女コドモが乗る乗りもんだろうが。
あんなもの、乗ったって・・・。
くだらねえ。
ゾロは動かないサンジをもう一度見た。
おもわず溜息をつく。
しょうがねえ。

「オイ、あれに乗るぞ!!」
驚くサンジを引きずるようにして乗り場に向かう。
案の定、客は親子連れか、ガキばかり。

「券2枚くれ!!」
ゾロの迫力に健全な一家が一歩二歩後ずさる。
母親に手を引かれていた女の子は火がついたように泣き出した。
クソーー。
何でオレはこんなつまらない乗り物に乗るために、待ってるんだ。
イライラするゾロ。

「オイ・・・いいのかよ」
サンジがいつになく控え目に聞いてくる。
どうしてゾロがコレに乗ろうなんてするのか。
そりゃ、オレは乗りたかったけど。

「どうぞ」
切符きりにうながされてゾロとサンジは乗り物に乗った。
ゾロは乗る前に生意気なガキを一瞥して脅すことを忘れない。

ゆっくり回ってくる乗り物に乗る。
静かに宙に浮いて、まわりの景色が見えてくる。

小さくなってゆく人々。
サンジは下をずっと見ていた。
ガキの頃。
オレはコレに乗りたかった。
でも、オレには乗せてくれる人もいねえし。
コドモらしくもなかったし。
とても言えなかった。

ゾロは言葉もなく、景色を見ているサンジを見ていた。
景色などは元々興味なかった。
ゾロの様子にも気づかず、サンジは夢中で下界の様子を見る。
嬉しそうな顔。
そしてせつなそうに唇をきゅっと噛みしめた。

ゾロはその様子をじっと見ていた。
ああ、オレは、コイツが好きだったんだ。

サンジは夢中になって景色を見ていたが、ふとゾロの様子に気づく。
景色、見てねえのか。

「オイ、あれ見ろよ」
サンジが指さした先には特徴的な鼻を持った男が・・・。
「ウソップじゃねえか・・・。あの野郎、何してやがんだ」
テントの側で売られている怪し気な工芸品を手にとっているようだ。

「呼んでみるか・・・おお・・・んん」
サンジはいきなりゾロに口を手で塞がれてもがく。
「アホ!! こんな所見られたら!!」
冗談じゃねえ、ナミに何言われるか、たまったもんじゃねえ。

「何で?  いいじゃねえか、別に。やましいことしてるわけ・・」
サンジが全部いい終わらないうちに強く頭を掴まれて、引っ張られた。

唇に温かい感触。
えっ、何・・・?

あまりの驚きに反応できない。
今・・・。
何だ・・・。
今の・・。
キス・・・だよな。
でも、何で。

「気づけよ!!このバカ!!」
ゾロが顔を赤らめて言う。

サンジはようやく置かれている状況に気づき、赤面した。
心臓がバクバク言っている。
えっ、オレどうしたらいいんだ。
どうしよう。
って、ゾロが・・・。
ええ?!

混乱してる頭。
ゾロが近づいてくる。
重なる唇。

「嫌か?」
真剣に尋ねられ、サンジは首を横に振った。
どうしたら、いいんだ。

固まっているうちに観覧車は地面に着いた。
ギャラリーのことは上の空で降りる二人。
 
 
 
 
 

祭りなので多くの人が歩いている。
ぼーっとしていてはぐれそうなサンジ。
ゾロはその手を掴んだ。
手を繋ぐなんて勿論始めてで・・・。
だってしようがねえだろ。
こいつ、オレが手を離すとどっかにいっちまいそうだから。
料理人の手。
やっぱり違う。
鍛えてねえ。
当たりまえだが。

思ってたよりずっとずっとガキなサンジ。
まあ、オレが面倒みてやらねえとな。
 
 
 
 
 
 

サンジは頭の中がぐるぐるしていた。
オレはゾロとケンカばかりしてた。
でも嫌じゃなかった。
今までつっかかってたのは、嫌だからじゃなくて。
好き放題言ったり、したりしてたのは、オレを見て欲しいから?
オレもゾロが好きなんだ。

まいったな。
ゾロの手、でっけえよな。
初めて繋いだ。

これって「恋」かな。
でもレディやマドモワゼルたちにしてた「恋」とは違う。
じゃあ「愛」かな。
こういうのも「愛」って言っていいのかな。
「愛」も、なかなかいいもんだ。
 
 
 
 
 



あんずさんの22000リク。
「主導権がとれなくなっていくサンジ」と「保護者になっていくゾロ」です。
何故か観覧車のシーンからゾロの保護者化?
リクとは何か違いますね。
私は楽しく書いたけど。
旦那、ラブラブでっせ。
 

クソショウセツ
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