ゾロは困っていた。
3月2日。
サンジの誕生日だ。
自分の誕生日の時にはサンジが作った料理を食わず、悲しい思いをさせた。
何かやりたいと、思う。
しかし、何を。
ナミに頼むのは嫌だし、ウソップには絶対に頼めない。
奴の目つきを見るとまだサンジを狙っている。
自分の思いつくものといったら、包丁とか、まな板とか・・・。
あと鍋も料理にいるよな。
サンジはそんなことで喜ぶのか????
何が困るってお互いの性格的な問題で本人には聞けないってことだ。
弱った。
そう思っているうちに、3月2日が来てしまった。
何の準備もないままに。
クソ・・・。
船は穏やかに航海を続けている。
サカナとるか、サカナ。
いつもより深く海に潜るがロクなサカナがとれない。
海草もとるがナカナカとれない。
「今日のゾロって、面白いわねえ」
ナミがお茶を飲みながらウソップに話かけた。
「そうだな」
だってサンジの誕生日だからな。
オレはちゃんとサンジの喜びそうな調味料セットを準備してるぞ。
ゾロは・・・見たところ、何も買ってない。
ホントに不器用というか、気の効かない・・・。
なのに、サンジはゾロを選んだんだから。
未来の海賊王で成金で富豪のキャプテンウソップよりアイツを選んだ。
何故だ!!
ゾロはあっちでうろうろ、こっちでうろうろと場所を移動してはぐるぐる歩いていた。
今日の修業は終わった。
後は、サンジの誕生日に何かを・・・。
何もねえ!!
何もねえんだ!!
オレの刀やるか?
大事なもんだ。
でもサンジは使わねえし。
あと、大事なもん・・・。
無え!!
サンジが大事だからって、サンジにゃやれねえし。
困った。
サンジはゾロの落ち着かなさに疑念を持った。
今日ってナンカあったっけ。
ウソップからプレゼントを貰い、自分の誕生日だったと言うことに気づく。
よっぽどそういう経験がないのだろう。
何故か急にサカナとったり、海草とったりするゾロ。
恐らくプレゼントなんかしたことないのだろう。
ゾロは晩メシの時も落ちつかない。
うわのそらでメシを食い、にこやかなサンジの様子に我に返る。
何でも、その日の内でないと効力を発さないという誕生プレゼント。
タイムリミットは着々と近づいてる。
何でもいいから買っておくんだった。
でも、何をみてもサンジに相応しいものはない気がした。
クソ・・・。
サンジはいつものように片づけを済ますと時計とにらめっこするゾロの姿を見つけた。
思わず笑いが漏れる。
「あア、笑ってんじゃねえよ、クソコック!!」
「いや、あんまりてめえがバカみてえだから・・・」
笑うサンジの顔を睨みつけるゾロ。
「考えてんだよ!!イロイロと!!」
「へ−−っ。例えば?」
う・・・。
思わず、言葉につまる、ゾロ。
ニヤニヤ笑いを浮かべるサンジをしばらく見ていたが、あきらめたような表情で床に座った。
「欲しいもん、言え!!」
サンジもまた床に座る。
腕組みをして座り込むゾロに手を伸ばす。
「やるから、言え!!」
サンジはゆるやかに笑った。
「ゾロ、てめえをくれ」
サンジの艶やかな笑顔に一瞬ゾロは見蕩れた。
「アホか。それならもうてめえのもんだ」
サンジがゾロに抱きついた。
「なら、もう何にもいらねえよ」
ゾロはサンジの柔らかな髪を撫でる。
嬉しそうにしがみついて来る時のサンジは・・・実に可愛いと思う。
抱きしめながら、やっぱり何かやりてえな、と思う。
好きだから、もっとやりたい。
色んなものを届けてやりたい。
サンジは抱きしめられて、心が満たされていくのを感じた。
呆れるほど不器用な剣豪の精一杯の心を貰った。
形あるものよりずっと、ずっと値打ちのあるもの。
それをゾロはくれた。
thank you
and
I love you
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