もうすぐ11月10日も終わる。
夕方に岸に船を着け、
みなそれぞれに自分の目的を果たしに行った。
サンジはぼんやりとゾロやルフィが消えた先を見ていた。
夕食の準備もしなくてよかったから、
夕方からずっと飲んでいる。
急に「仕事しなくていいわよ」って言われてもなあ・・・。
みな宿に泊まって2.3日するという。
「ナミさん、オレが恋の見張り番させていただきます!!」
サンジはいつもの性でつい見張り役に立候補してしまった。
陸に上がったら、
きれいなオネエサマがいて気が紛れるかとも思ったが、
べつにどうでもいいかとも思う。
クソ。
ナンパすらやる気がしねえなんて、最悪だ。
そろそろ寝るか。
そう思った時だ。
見なれた緑頭が何か袋を下げて船に戻ってきた。
ゾロ?
ゾロは買い物してきたらしい。
荷物を置くと、
床に座って酒を飲んでいるサンジを見て困ったような表情を浮かべた。
「てめえ、宿に泊まるんじゃなかったのかよ」
サンジはいつものクセでケンカ腰になる。
「もうすぐオレの誕生日だ。
プレゼントをくれ」
ゾロのいきなりな言葉にサンジはキレそうになった。
「あんだと、てめえ!!!!
いらねえって言ったのはてめえだろが!!!」
怒るサンジにゾロは頭をかきながら答えた。
「あー、そんなこと言ったか?」
「覚えてもねえのかよ!!!」
サンジはあまりにも悔しくて、
腹が立って、
どうしていいかわからないくらいムカついていた。
なんで!!!
もう蹴って暴れるしかねえ!!
サンジは恨みのこもった目でゾロを睨んだ。
「やっぱり、駄目か?」
ゾロは大真面目にサンジに問いかけた。
これまで見たこともないくらい真剣なゾロ。
こんなゾロ初めて見る。
いつもバカにしてケンカばっかりしてるのに・・・。
なんか、調子狂うじゃねえかよ。
「ええと、それで、てめえは何が欲しいんだっけ?」
サンジは料理のレパートリーをいろいろ思い巡らした。
だけど食材ねえかも。
もう真夜中だから、
買いにもいけねえし。
「おまえ」
言われた意味が分からなかった。
あまりに間抜けな顔をしていたのだろう。
ゾロは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「だから・・・サンジ、
てめえを食わせろって言ってんだよ」
へっ、どこ食う気だよ。
「えっ?」
もしかして・・・。
「ヤらせろって言ってんだよ」
ゾロはなかなか意味を把握さないサンジにいらついていた。
いつもワケのわからないところで急に暴走したり、
全然人の都合を考えてなかったり。
「なんで?」
サンジとしては、
心からの問いだった。
だってゾロはルフィが「スキ」で。
ゾロはオレの事なんて「いらねえ」のに。
何で、
こんな時に来るんだよ。
オレだったら、
ことわれねえとでも思ってるのかよ。
「スキ」でもねえのにオレとするんだ。
ゾロとルフィを見て毎日毎日イライライライラして。
腹が立って、
惨めで、
だけど見てしまう。
ナミさんは「最近、平和ねえ」
なんて言ってたけど、
オレは全然そうじゃねえんだ。
ゾロを意識しはじめてから、ずっと。
ずっと・・・。
ゾロばっか見てる。
ゾロのことばっかり考えてる。
ルフィよかオレのこと「スキ」にならねえかなって。
でも、たまに寝て、
あとはケンカばっかりしてるもんなあ。
口を開くと憎まれ口しか出てこねえ。
分かってるよ。
オレだって、しゃべらねえほうがマシなことくれえ。
でもムカムカすんだよ。
自分じゃ止まらねえ。
悪気はねえんだけどよ。
ゾロは急に黙り込んだサンジをじっと見た。
それから真面目に言った。
「欲しいもんはそれだけだ」
サンジはうつむいた。
ここで抱かれたら、
オレはもっともっと苦しくなる。
だけど抱かれたい。
だってオレ、
ゾロのこと「スキ」だから。
誰にも知られちゃいけねえけど。
「24時間。
おまえの11月11日の全部をくれ」
ゾロの言葉にサンジは目を見開いた。
「はァ?」