shampagne  shower

side ZORO
 
 
 
 

この街はでけえが、オレにとっては興味のある街じゃねえ。
食い物の店。
衣料品。
日用品。
オレが見る必要ないものばかりだ。

たいしてすることもなく、オレは通りをぶらぶらしていた。

見ると前から、でけえかたまりみたいなものがよろよろとやってくる。
荷物のかたまり・・・
と思ったが、足が見えるから、とてつもなくでけえ袋を抱えてるってことだ。
かたまりの向こうからはタバコの煙も見えることだし・・・
って、どっかで見た事あるはずだ。
あの黒い足には見覚えがある。

・・・。
あのヤロー前見えてねえな。
よろよろしてるし。

・・・。
しょうがねえ。
持ってやるか。

近づくが全然気がついてねえ。
すげー重そう。

オレは反対側から重そうな箱を引っぱった。

「誰だ、コノヤロー」
すげー機嫌悪そうな声だ。
むきになってるみてえで絶対に放そうとしねえ。

「おい。いい加減放せ」
「ゾロ。てめえ、何してやがんだ」
サンジはまだ放そうとしない。
「そこ、置きな。酒、持ってやる」
サンジは考えてるようだ。だが、袋の向こうで表情はわからねえ。

「そのままだと、ぜってーに落として割りそうだからな」
「ああ、そうかよ。なら、てめえは飲むな!!!」
むっとしたらしい。
けど、事実だろうがよ。
無理だって。

サンジはよろけながら、オレを無視してどんどん歩きだした。
重そうなのに・・
オレはしばらく様子を見る事にした。

後ろからゆっくりついていく。
どうみたってこいつ、力仕事が向いてるとは思えねえ。

サンジはしばらく頑張っていたが、限界だと思ったのだろう。
荷物を置くと、新しいタバコに火をつけた。

「だから、持ってやるって言ったろ」
オレは重そうな箱を持ち上げる。
やはり酒のようだ。
もう一つの袋もかなり重い。
だが持てねえことはない。
オレはこいつより力がある。
持つとすぐに歩き始めた。

サンジはあわてて追いかけてくる。
「おい、余計なことすんなよ」
「オレが飲むんだ」
「アホ!!ナミさんに飲んでいただくんだよ」
何で、重いから困るって正直に言えないのか・・・
まったく、こいつは。
ま、オレだって見るにしのびないから運んだなんて、言えねーけど。
 

「いいじゃねえか」
「オレが運ぶ」
いつしかオレ達は小走りで船に向かってた。

アホだ。
こんなことで張り合ってて何になるっていうんだ。
 

船に着いた時サンジは悔しそうなツラをした。
てめえに任せてたらいつ着くかわかんねえんだよ。
さっきみたいに100メートルで休憩してんじゃな。
 
 

サンジは少し機嫌を直したらしい。
ほんと、ころころ変わる。

「なあ、ゾロ。シャンパンなら飲んでもいいぜ」
「あァ?これか・・・」

箱の隅に1本だけキラキラした紙で巻いてある。
オレは栓を抜いた。
ポーンと音をたて、いきおい良く酒が飛び出した。

まるで、シャワーみてえにキラキラ光り、虹が出来た。
「ちくしょー」
オレは頭からかぶっちまった。
忘れてた。
走ったんだった。

サンジが笑ってる。
オレは瓶の口を向けた。

「何しやがる」
逃げる間もなく、頭からシャンパンがかかる。
 

二人ともシャンパンだらけだ。
サンジが笑ってる。

オレも笑った。
 
 
 
 
 

オレは笑ってるサンジの頬に口づける。
「あめェな」
すげー甘い。

サンジがオレの頬をなめてきた。
「いいシャンパンだ」
嬉しそうに言う。
 
 
 

もう二人で酔うしかない。
酒はいらねえ。
 

サンジが酔わせてくれるから。