shampagne   shower

side  SANJI
 
 
 
 

オレは買い出しのため、両手に荷物をもっていた。
ここはでけえ街だから、食材も豊富だ。

調味料。
油。
肉。
野菜。
果物。

まったく、手がいくつあっても足りやしねえ。
でけえ袋に詰めてもらうが、もう持ち切れねえほどある。

軽いものはつぶしちゃいけねえし、肉や果物をいためてもいけねえ。
何回も食材を運ぶために、船と街の間を往復するのは性にあわねえ。

オレは持てる限界まで、荷物を持った。
けど、今日は、小麦粉とか、酒の方が重いんだよな。
 
 

あいつら、よく食うし。
よく飲むし。

まったく、てめえで買いやがれってんだ。

だけど、ここにはいい酒があったんで、つい買っちまった。

「兄さん、おまけにこのシャンパンつけとくよ。甘くていいやつだからさ」
小さな店の酒を3分の1も買ったオレに、店のおかみはほくほく顔だ。

「ありがとよ」
しかし、買いすぎたかも・・・

クソ重てえ・・・
 
 

オレはしんどいことは嫌いなんだ。

よろよろ歩いていると、誰かにぶつかった。
思わず、大事な酒を落としそうになる。

「誰だ、コノヤロー」
むかつく。
どこのアホがぶつかりやがったんだ。
 

そう思っていると、酒の入っている箱を無理にひっぱられた。
オレは放すまいとする。
こいつ、ドロボーか。

ケリいれてもいいが、このままだと買ったもんかなりダメにするし・・・

「おい。いい加減放せ」
聞き覚えのある声。

「ゾロ。てめえ、何してやがんだ」
何だ、ゾロか・・・
だったら、何で先に声かけねえ。

「そこ、置きな。酒、持ってやる」
何だ。今日はやけに親切じゃねえか。
明日は雨かもな・・・

「そのままだと、ぜってーに落として割りそうだからな」
むかーーーっ。
そういう事言うか。

「ああ、そうかよ。なら、てめえは飲むな!!!」
オレはそのままつき進もうとする。
だけど、ろくに前が見えねえ。
おまけにクソ重い。
 
 

ゾロの声がしないから、もうどこかへ行ったんだろう。
 

かなり頑張って歩いたが、だんだん手に力が入らなくなってきた。
もう辛抱できなくなって、しばらく行くと荷物を置いた。
 
 

クソー。
重すぎる。
額ににじむ汗をぬぐう。
ネクタイをゆるめ、新しいタバコに火をつけた。

「だから、持ってやるって言ったろ」
ゾロがそこにいた。
何で。
こいつ、ずっとついて来てたのか。
 

ゾロは無言で、酒の箱と小麦の袋を持ち上げる。
その二つがバカ重いんだが。

持つとすたすたと歩き始める。

オレはあわてて残りの袋を集めた。
かさはでけえが、軽いもんだ。

「おい、余計なことすんなよ」
「オレが飲むんだ」
「アホ!!ナミさんに飲んでいただくんだよ」
ゾロの好きな酒も買ってあったが、誰が正直に言うもんか・・・

「いいじゃねえか」
「オレが運ぶ」
いつしかオレ達は小走りで船に向かってた。

アホか。
こんなことで張り合ってて何になるっていうんだ。
 

結局ゾロが重いもんを運んじまった。
むかつくけど、助かったのも事実だ。
 
 
 
 

オレは店のおかみがサービスにくれたシャンパンのことを思い出した。
あれなら、タダだし、いいだろう。

「なあ、ゾロ。シャンパンなら飲んでもいいぜ」
「あァ?これか・・・」
 

ゾロが栓を抜く。
ポーンと音をたて、いきおい良く酒が飛び出した。

まるで、シャワーみてえにキラキラ光り、虹が出来た。
「ちくしょー」
ゾロにかかったのを見て、オレは笑う。
 

ゾロがこっちに瓶の口を向けてきた。
「何しやがる」
頭からシャンパンをかぶっちまった。
 

二人ともシャンパンだらけだ。
何だかオレはおかしくなった。

ゾロも笑ってる。
 
 
 

ゾロが近づいてくる。
笑ってるオレの頬に口づける。
「あめェな」

オレもゾロの頬をなめてやった。
「いいシャンパンだ」
 
 
 

もう二人で酔うしかない。
酒はいらねえ。
 

ゾロが酔わせてくれるから。