ura-top  地下食料庫  November  Rain
November
Rain
 act 7
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「ギンさん、今度のファイトに出るんだってな」
「あの人はサンジさんの下にいるが、
本当はサンジさんより強ええらしいぜ」
下っ端どもが噂する中、
サンジたちが戻ってきた。

黒いレザーのジャケットとパンツ、
サングラスをかけたサンジの姿は、
明るい髪を際立たせ、
ひときわ目立っている。
寄り添うように、
ギンが後を歩いていく。

「帰ってきたぜ。
今日はサウスブルーの奴とひと当たりしたらしいぜ」
怪我をして運びこまれる仲間たち。

「ああゆう、見てくれだけど、
カッコいいんだよな、サンジさんて」
「男なら最後まで戦ってみろって・・・」
「イカすよな!!」
「あのケリがまたスゲえんだ。
なんであの体からあんなケリが出るかね」

ギンは傍らで偉そうに座るサンジを見た。
・・・いつものサンジさんだ。
今日はケリにキレがなかった。
サウスブルーのやつらと小競り合いが始まるまで、
行方をくらましていたサンジさん。

あんた、どこにいた?
何をしてた?

かすかに赤くなった目の縁。
知りたくねえ。
だけど、知らずにいられねえ。

オレはあんたが全てなのに。
オレたちはあんたが全てなのに。
あんたは分かってねえよ。

鈍いサンジさん。
大事に大事に守ってきた。
甘やかしてるのはオレだ。
だってオレがついてねえと、
あんた、すぐに足元さらわれちまう。
オレがにらみをきかせてねえと、
そこいらのクズの手にでも引っかかりそうだ。

キレイな心。
オレはそれを汚したくねえ。
キレイな体。
いつだって心の底では汚してみたいと思っていた。
あんたはオレには眩しすぎる人。
だから、どんなことをしても守ってきた。

オレは勝つ。
ロロノア・ゾロに。

このトンファーで、あいつを殺す。
サンジさんの愛する人。
サンジさんの愛した体。
サンジさんを愛した体。
粉々にしてやる。
 
 
 
 

サンジは座りごこちのよいソファに腰を下ろし、
早いピッチで酒を飲んでいた。
「イーストブルーの幹部」の取り巻きのくだらねえ男たちの雑言。
つまらねえ。
・・・ギンは勝つだと。
ゾロが腰抜けだと。
よくある下世話なたわ事だ。
くだらねえ。

・・・ゾロ。
今日も、抱かれた。
オレにとってゾロは何だ。
ゾロにとってオレは何だ。
見つかると・・・やっぱりリンチか?
裏切りもの・・・だよな。
分かってるのに、
ゾロと会わずにいられない。

熱病だ。
危険だとか、
これまで築いてきた幹部としての地位だとか、
どうでもよくなる。
ゾロが欲しい。
そのためには何でもしてしまいそうな自分。

ゾロが死ぬのは嫌だ。
魔獣と呼ばれるゾロ。
あいつのタフさは寝ただけでも分かるけど。
オレが気をヤっても、
体力バカなアイツはまだまだイケる。
オレだってそこいらの雑魚には相手にならねえくらいのスタミナはあるし、
強ええんだ。
だけど、ゾロにはかなわねえ。
あいつの熱い体に触れると、
オレはおかしくなる。
サカリのついたケダモノみたいになっちまう。
恥もプライドもない動物に。
言葉すら出てきやしねえ。
じっと見て、
情欲に身を焦がす。

ギンが妙な顔でオレの今日の戦いを見ていた。
キレが悪いって・・・・。
しようがねえだろ。
油断すると体内に入ったままのゾロの精がこぼれそうだったって・・・。
まるでタチの悪い、ポルノショウだ。
そういうのが好きな奴もいる。

ゾロによって昂らされた体と心は、
あのバトルでは収まらねえ。
もっと・・・。
もっと・・・。
戦ってる時は、
独特の高揚感と緊張感につつまれる。
オレはそれが嫌いじゃねえ。
ぶちのめされる時もあるが、
戦うのは好きだ。

だがこの身を焦がすような感覚はなんだ。

知らなかった。
自分がこんなに飢えていたことを。
ゾロ、てめえに出会ってオレは変わった。
全てがてめえに結びつく。

今まで信じてきたもの全てが壊される程に。

ギンとゾロのファイトは一週間後。
オレはイーストブルーサイドの椅子に座る。
そして二人の戦いを見る。

はじめて見るゾロの戦い。
見たくねえ。
ギンが傷付くのも、
ゾロが傷付くのも。

たかだかストリートファイトのひとこま。

運命があるなら、
神はどちらを選ぶのか。
神様なんていやしねえ。
この街には。
もし、いるならば、
この街以外のどこかだ。

だから夢なんぞ見ねえ。
でもどうしても、
ゾロが忘れられねえ。
ゾロに会いてえ。
チクショー。
どうしてなんだ。

どんなに飲んでも、
消えねえ影。
どんなに戦っても、
消せねえ影。
 
 
 
 
 
 
 

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