ゾロサン
A5 P16 コピー本
100円
「仲間」としてできることは何か?
楽しいだけじゃだめだ。目の前で、
誰かが倒されるのは、もう二度と見たくない。
サンジは無気味な乙女たちから遠ざかり、本物のレディたちのいる世界に戻ってきたのだ。
もう過去にとらわれなくてもよい。
それなのに、繰り返し思い浮かぶのは、己をかばったゾロの姿だった。
「花嫁修業」と言われて思い浮かべたのは、緑の頭の男。
カマバッカ王国でいるとき、思い出すのは、ナミさんでもなく、ロビンちゃんでもなく、迷子男のことばかり。
やつの頭はどれぐらい緑だっただろうか?
やつの目はどんな色をしていただろうか?
いつもいつも、ケンカばかりしていたのに。
あのいかれた島のせいだ。いかれたオカマたちのせいだ。おれは、あんなやつのことなんか好きじゃねえ。
やつらは、「恋」だと言った。
好きだから、悪態をつくのだと言った。
そんなはずはねえんだ。地獄での気の迷いだ。おれに乙女の心なんてあるわけがねえ。それなのに、やつらはおれが仲間だと言い張った。
何度、無気味なスイーツドレスを着せられそうになったことか。一瞬、乙女になってしまった時もあった。くわばらくわばら。
もう、地獄からは抜け出たんだ。
ゾロがかっこいいわけなどねえ。
しっかり、おれ!!
サンジはぶんぶんと首を振った。
ゾロはわめきたてるサンジを見た。
シッケアール王国跡は、暗くよどんだ地だった。
修業には、邪念は無用なのだが、ときどきこいつのぴかかの頭だとか、食い物だとかを夢に見た。
何にも執着してはいけねえはずなのに、むかつくコックのことを思い出した。
思い出すたび、こいつはどんなだったかを考えた。
背は同じぐらいだった。
目の色は深い海の色。
髪は明るい金の色。
何かというと、余計なことを言って来て、無闇に小競り合いをした。
それでも、ちゃんとおれの好きな食い物を作ってきた。
焼きおにぎり、えびマヨネーズおにぎり、テンプラ、みそ汁にスシ。
他の誰も作れない、イーストブルーの味をちゃんと研究しおれが注文をつけるとシモツキ村の味まで再現させた。
シッケアール王国跡では戦いのみ。
食い物も、そのへんにあるものを食って生き延びた。
美食など、贅沢にすぎない。無用のものだ。
そう分かっているのに、サンジの料理を思い出した。
サンジの姿を思い出した。
やつと、またケンカしてえ。
あの生意気な目が、おれだけを見て、笑いかける。
そんなことは、めったにないけれど、そうされると、いい気分になる。
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「YOUR SONG」
ELTON JHON