★ PEARL ★ RUFFY★SANJI ★ |
「なー、サンジ。なーなー」
サンジは名前を呼ばれて誰かに頬をぱしぱしされているのに気づく。
夜の闇。
まだ真っ暗だ。
いつ寝たんだっけか。
ていうか、今、何時だ。
「あァ? 何だよ・・」
半分まだ夢見心地だ。
さっき、夢の中にきれいなお姉さんがいたのに・・・。
「じゃ、出発な」
あー、何だ、ルフィじゃねえか。
って、どこに・・。
ぼんやりした頭で考えているうちに、ずるずると体が引きずられる。
ルフィは迷わずにサンジを小舟に乗せた。
???
何だよ。
「おい・・・ドコ行くんだよ」
さすがにサンジの頭もはっきりとしてきた。
まだ真っ暗だ。
あたり一面の闇。
静かな、静かな海。
月のない夜なので、満天の星が輝いている。
音の無い静かな夜。
ルフィは返事をせずに、いきなり船を漕ぎ出した。
「何だよ・・・」
無口なルフィにサンジも調子が狂う。
沈黙。
ルフィは猛スピードで船を漕ぐ。
ちょ・・・。
アブねえだろ。
こんな速く漕いで。
真っ暗な海面を物凄いスピードで進んでいく小舟。
サンジは目を凝らして前を見た。
何も見えない。
でも、ルフィは何かを見ていて、それに向かっている。
それは何なのか。
暗闇の中、迷わず進むルフィ。
これって・・・。
コイツの生き方に似ている。
闇の中で浮遊しているみてえ。
ゴーイングメリー号も遥か彼方に。
過去とか。
そんなものも置いてきたような奇妙な感覚。
船はスピードを落とすことなく進む。
10分。
20分。
30分。
辺りは闇のまま。
そのうち時間すら分からなくなる。
だが不思議と眠くならない。
闇しか見えねえ。
ひたすら意識だけが覚醒して研ぎすまされていくような感じ。
体から心だけをとりだしてしまったような。
どこにいる、とか。
どこにいた、とか。
どこにいく、とか。
全てがどうでもよくなるような、漆黒の闇。
思考も。
言葉も。
そんなものは無い闇の世界。
かすかに、水面に明かりが見えた。
??
サンジは目を凝らす。
ルフィはますます漕ぐスピードを速めた。
ぐんぐん近づいてくる、光のかたまり。
その地だけは、その海だけは、漆黒の海の中で眩しい光を放っている。
近づけば近づくほど、光量が増し、あたり一面、光につつまれる。
眩しい。
サンジは思わず目を細めた。
水面下にクラゲのようなサカナのようなものが沢山泳いでいる。
それらは、ひとつひとつ輝いている。
発光魚。
サンジもガキの頃に見たことがあった。
大騒ぎして、クソジジイに笑われた。
でも、どうしてこんなに沢山。
一面が輝き、そこだけが真昼のようだ。
いや、どんな太陽の光もここまで輝かない。
真珠の固まりのような光の群れ。
眩しい。
目がくらむような。
触れてはいけない。
近寄ってはいけない。
恐れさえ感じさせる程の眩しさ。
ひたすら輝き続ける空間。
サンジはしばし声が出なかった。
美しすぎるから。
清らかすぎるから。
圧倒的な光のさざなみ。
「ししし。いいだろ、コレ」
ルフィの言葉に我に返る。
ルフィは船に座って嬉しそうに笑っていた。
何で?
何でだよ。
サンジは心の中で思った。
「サンジに見せたかったから」
声に出してないのに、ルフィはそう答えた。
きらきらした光の中で。
きらきらした笑顔で。
サンジは茫然としている。
ルフィはまた笑った。
ヘンかな、オレ。
でも、見せたかったんだ。
サンジには。
サンジは輝く光の中に立っていた。
神々しいまでの光。
それを見せようとしたルフィ。
何故だか涙がでそうになった。
ルフィ。
てめえにはかなわねえよ。
いつも、いつも、裏かきやがって。
ひたすら輝く光の中、サンジは笑った。
だって他に何ができる。
ここも奇蹟の海の一つだ。
夢の海の。
ルフィもまた笑った。
サンジの笑顔。
オレはこれが一番好きだ。
どんなに美しい光にも負けない。
ナミの持ってる沢山の宝石の輝きよりも。
何万ベリーもするという、海の中の宝石。
どんな真珠よりも光って見える。
出会った時。
それから時がたつけれど、時がたてばたつほど愛しさはより輝く。
あの雪山で。
雪に埋もれたサンジを見つけた時、世界はモノトーンになった。
震える手で手袋を履かせ、ぐったりした体を運んだ。
「サンジが死ぬ」
だが、振り返るのは無駄だ。
声を出すのは駄目だ。
涙さえ惜しい。
そのために助けられなくなったら?
オレのコック。
オレのもんだ。
オレは助けるんだ。
ナミも。
サンジも。
そのためなら何だってする。
必死で崖をよじ登った。
口だけでサンジを支えた。
命の火の消えかけている体。
罵声もない。
ケンカもない。
ケリもない。
さっきまで共にいたのに。
これからも共にいるのに。
サンジ。
勝手なことするな。
自分だけ。
助かる。
助ける。
どんなことをしても。
痛みも感じない。
冷たさも感じない。
助けるんだ。
みんなを。
真っ暗な世界。
頂上についたらバアさんがいた。
「医者」だ。
ナミも。
サンジも。
助かる・・・。
あの時、世界はモノトーンのままだった。
オレ達は元気になり、仲間も増えた。
世界には色が戻った。
でも今は特に綺麗。
このサカナ見た時に思った。
世の中にはこんなに輝くもんもあるんだなって。
そしたらサンジを連れてきたくなった。
「なあ、サンジ。死んだら駄目だぞ。死んだらぶっとばしてやる」
「あァ? やってみやがれ」
そう言いながらもサンジは死にかけたことを思い出す。
ルフィに助けられた。
分かってる。
オレはナミさんを助けられなかったって事も。
ルフィの顔が近づいてくる。
真剣な顔。
サンジはゆっくりと近づいてくる顔を見ていた。
やがて唇が重なる。
あたたかい、感触。
涙が。
ナンデ。
何で涙が、出る。
胸の中にいっぱいに溢れてくる感情。
後悔。
罪悪感。
反省。
憎悪。
愛情。
幸福。
ルフィはサンジの涙のあとをなぞる。
「ずっと一緒だから」
そう言ってサンジを抱きしめた。
あたたかい体。
良かった。
良かった。
胸に触れると、サンジの鼓動が聞こえる。
離ればなれになんかならない。
失ったり、しない。
絶対に。
*
*
やがて暗闇に光がさし始める。
星が姿を消し、奇蹟の海も姿を消す。
海原にあらわれるのは眩しい太陽。
本物の光があまねくものを照らし出す。
いつもと同じ朝がやってくる。
幾千回もくり返された朝。
ある人にとっては単調でも、ある人にとっては特別な朝。
*
*
「なー、ルフィ、どうやって帰るんだ?」
サンジはタバコをふかしながらルフィに尋ねた。
「カンだ!!!」
断言するルフィに、いやな予感を感じる。
「ここまで、どうやって・・・」
「カンだ!!!」
思わず、汗のでるサンジ。
再びルフィは舵をとり、思いっきり漕ぎ始めた。
「うおーーー。気持ちいい」
船はまっすぐに進む。
きっとそこにゴーイングメリー号はある。
みんなが待っている。
だから、進むんだ。
ひたすらに。
全速力で。
雪山編はルサンでしょう!!!
そしてラブラブなのだ!!!
すごい気が合ってますね。もう唖然としてる私。(思い込み)
「愛だろ、もうまいったね。」(ここはパールさん風に)
っちゅう感じ。え、違う?