R20
                                                                       悪の華
                                                                       
XS
                                                                       
                                                                       届かない大空
                   
Squalo14-22
                                                                  R20
                                            (九代目×S・家光×S ほか)
                                                                       
                                            冷血
  
                                                            
                                            
                                                       (スクアーロ22)
                                            
 
                                             
                                                            
                                                                       9
                                                                       
                                                                       
                                                                   
                                                                   ザンザスがいなくなってから8年が過ぎた。
  暗殺部隊ヴァリアーはその名をとどろかせ続け、
  仕事が途切れることはない。
  スクアーロは、
  危険なミッションや、注文の多いミッションをこなし、
  邪魔者を切り捨て続けた。
  来る日も来る日もくだらない仕事ばかりだった。
  相手も雑魚ばかりで手応えがなかった。
  
  ヴァリアー本部に足を踏み入れることのできるものは限られており、
  恐怖の象徴であるその場に進んで来るものなど誰もいない。
  古城を改装して作られたアジトは、重厚で独特の存在感を持っていた。
  ヴァリアーのボス代理であるオッタビオは、
  自分の職場であるアジトに来るたびに、
  威圧感を感じ、肩が重くなるような気がした。
  もう、ここにはあの方はいないというのに。
  8年が過ぎても、そこにはザンザスの気配が残っていた。
  
  オッタビオは執務室に入り、ザンザスが腰を下ろしていた椅子に座ると幹部を呼び指令を出し始めた。
  きちんと物事が進まないと気に入らないオッタビオにとって、ここの連中は実に扱いずらい。
  「ししし。王子、その任務行きたくないから、スクアーロに行かせたら?」
  ベルがそっぽを向いた。
  「はあ? ふざけるなあ!! こんなつまらない任務誰が行くかぁ!!  レヴィにでも行かせろぉ!!」
  「ぬう!! 誰が行くか!!」
  スクアーロにレヴィが怒鳴り返していたが、写真を見たルッスーリアが突然興味をしめした。
  「あら、私が行ってもいいわよ。この男、いい身体してそうだから」
  「ボクも行ってもいいよ。ただし、報酬は2倍もらうよ」
  マーモンもちゃっかり話に加わって来た。
  何年たってもこの調子だ。
  普段の生活となると、まるで役立たずの人格破綻者ぞろいなのだが、暗殺の腕だけは超一流だ。
  もっとも正気や良識があれば、暗殺などできはしない。
  まったく意見も噛み合ず、年中仲間割れ状態なのに、それでもヴァリアーは崩壊せずに生き残っている。
  ろくでもないやつらだが、これからもその力を私のために使ってもらわないと。
  毎日、この連中といるのはうんざりだ。
  ヴァリアー本部にやってきて、彼らにたまに任務の言い渡しをするだけで私の仕事は終わりだ。
  ザンザス様のもとでこのアジトにずっといた時には気づかなかったが、
  この地から遠ざかると、いかにここが異端か分かる。
  普通の生活というものがどういうものかが分かる。
  ここには、生と死と争いと快楽しか存在しない。
  息をひそめて、殺しを行い、ボスに従って生きる。
  私もそれがおかしなことだとは思っていなかった。
  テュール様やザンザス様にはそれだけのカリスマ性があったからだ。
  
  「では、ルッスーリアとマーモンに任せましょう」
  オッタビオは、命令を言いながら、スクアーロの様子をうかがった。
  愚か者なりに知恵を働かせるようになり、
  オッタビオの出す「特殊任務」や、直に下す「体罰」をごまかしたり避けたりする回数が増えていた。
  少年愛好家に提供するには年が行き過ぎているが、まだいくらでも需要はある。
  誰も見向きもしないぐらい醜く育てば、「特殊任務」から解放してやってもよかったのに。
  あの方がいないのに、憎しみは終わらない。
  この連中があまりにも変わらないせいだ。
  8年もたつのに、今すぐあの方が帰ってきてもおかしくないようなこの空気は何なのだ。
  もう、ここは私の支配下のはずなのに、いつまでたっても反抗的なこいつらの態度は何なんだ。
  無理もないかもしれない。
  あの方を陥れたのは、私なのだから。
  こいつらは真実を知らない。
  まったく愚かで助かる。
  私の策にはまってもがく愚か者を見ていると、ぞくぞくする。
  真実を悟らせてはならない。
  これからも、私の思い通りに動いてもらわないといけないから。
  
  オッタビオが帰った後、スクアーロはいつもの場所に指令が残されているのを見つけた。
  そこに書かれている場所に行けば、次の指示が分かるはずだ。
  暗殺ではない闇の仕事。
  それは、忘れたころに与えられる。
  きっとオッタビオの嫌がらせだ。
  単なる男娼でも出来るような仕事をわざわざ回してくるのだ。
  それでも、そいつは死んじまうわけだし、
  オッタビオとヤるよりマシか。
  今更、マシも、マシでねえもないけどなあ。
  オッタビオはさめた目でいつもヴァリアーの様子を伺っていて、
  ちょっとやつの意から外れようとすると、こういう指示を出して釘を刺す。
  警告だ。
  オレたちは自由なんかじゃねえってことだ。
  ターゲットはみんな、「女みたいな髪」と言って、それでも髪をほめる。
  ふざけるな。
  これは、誓いだ。
  ザンザスのために伸ばしているものだ。
  てめえらなんかに簡単に触れさせはしねえ。
  だってよお、オレにはもうこれしかねえから。
  他は全部差し出して、これしか残ってねえから。
  
  スクアーロは、予定より早くターゲットを始末して、急いで連れ込み宿を出た。
  ターゲットが乗り気なのをいいことに、
  ひっぱるだけひっぱって、
  一方的にイかせて、暗殺し、
  部屋をぐちゃぐちゃにしてから、火をつけて出た。
  火なんざすぐに消されるけれど、ごまかしにはなる。
  所用時間は30分。
   
  これだけ早いと、オッタビオの「確認」も間に合わないぜえ。
  ときどき、オッタビオはスクアーロがちゃんと仕事したかどうか身体を確認する。
  きちんと身体を使ってないと、そこで「罰」が与えられる。
  部屋は燃えてるし、分かりゃしねえぞお。
  スクアーロは、いい気分になって時計台を見た。
  日が落ちたばかりで、まだ8時前だった。
  どこかに寄ろうかとも思ったが、一応「仕事帰り」の身だ。
  どこにも寄らずに、まっすぐヴァリアーのアジトに帰った。
  
  「あら、スク、おかえりー、早かったわねえ。
  私たちの任務はつまらなかったわ。
  その男は、貧相な身体だったの。行くんじゃなかったわあ。
  もう9月9日の仕事は、お・わ・り。みんなで、もっと刺激的なことをしましょうよ!!」
  ルッスーリアがくねくねしながら、日めくりカレンダーをちぎっていた。
  「ししし、スクアーロ、どこ行ってたんだよ。ヒマだから、ポーカーしよ?」
  少し元気のないスクアーロに構わず、ベルがトランプを押しつけた。
  レヴィはすっかりスタンバイしていた。
  「そんな奴はほっといて、さっさと始めろ!!」
  「レヴィにもマーモンにも勝つね。だって、オレ、王子だから」
  ベルが得意げに言い、マーモンが頬をふくらませた。
  「ムッ。ボクから金はまきあげられないよ」
  スクアーロは勢いで椅子に座ってしまい、すぐに次のカードが配られた。
  「ゔぉおおおい、何だこのカードは!!!!」
  ろくでもない手札がやってきて、スクアーロは怒鳴った。
  たいていいがみあっているが、嫌なことがあっても、ヴァリアーでいると忘れられた。
  「ししし。まるわかり。カモ登場!!!!」
  その後徐々に掛け金がつり上げられて行き、レヴィとスクアーロは明らかにカモ状態だった。
  単純勝負に弱い二人はエキサイトしていた。
  実力で勝負できないのは残念だが、勝負はこれからだぜえ。
  勝つのはオレだあ!!!!
  
  必死になると、目の前のものしか見えない。
  熱中したスクアーロは、
  すぐそばにあらわれた影に気づくことはなかった。
  
  
               
                                                       
                                                                 
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