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それは久しぶりに陸に上がった時だった。
サンジは買い出しの荷物運びとしてゾロを指名した。
「酒をどっさり買うから」
そう言われてはゾロも断われない。
不承不承だが、同行を決める。
二人はたいてい別行動だ。
普通に話をしていたはずが、何故かケンカになってしまう。
サンジはとなりを不機嫌そうに歩くゾロをちらりと見た。
まったく・・・。
なんて、コイツって、愛想のねエ奴なんだ。
やっぱり買い出しはナミさんと・・・。
おっ、あそこに美女が!!
ゾロは猛ダッシュしそうなサンジの襟をひっぱった。
女を見ただけで、さっきまでの機嫌の悪さも嘘のようになり、目はハート。
アホか・・・、こいつ。
いや、充分分かってるんだけどな。
分かってるつもりだが、ここまでアホだと、憐れみすら感じるけどな。
「酒、買うぞ、コラ!!」
そう言いながら、サンジを引きずって酒屋に入った。
サンジはぶつぶつ文句を言っている。
酒屋のオヤジがニヤニヤ笑いながら、出てきた。
「いやあ、仲いいねえ。お兄ちゃんたち」
大男で力もありそうだ。
無視して瓶の棚を見回す。
「いい酒あるよ。お兄ちゃんらにとっておきの酒」
オヤジは勝手に言うと、奥の方から何やら怪し気な瓶を取り出してきた。
別々に別れて酒を見ているゾロとサンジの様子をしばらくじっと眺める。
「兄さん、これ、どうかな」
ゾロが振り返るとオヤジは真っ黒な瓶を手にしている。
「何だ、ソレ?」
オヤジはゾロを手招きするとひそひそ声を出した。
「金髪の兄ちゃんがもっと可愛くなる酒だよ」
「あア?」
ゾロのこめかみに青筋がたつのも気づかず、オヤジは続けた。
「すごいキキメだから、お薦めだよ。子猫ちゃん達向けの酒だよ」
あア?
こいつ、アホか?
・・・子猫ちゃんて?
サンジか?
!!??
待てよ、今、子猫ちゃん達って・・・?
達って・・何だ・・・?
達って・・・。
あまりのことにゾロの頭が一瞬まっ白になった。
「オッサン!!これいくらだ?」
サンジの声にゾロは我に返った。
オヤジはあわてて、ゾロの側から離れていった。
ゾロはキレそうな神経を懸命に押さえた。
あまりにムカついて、許せない気分になってきた。
こんなことで暴れるのは愚かだ。
アホは相手にしないのが一番だ・・・。
自分にそう言い聞かせる。
「高えよ、もっとまけてくれ」
並べてある酒の値段を聞いているうちに、
サンジはいつの間にかオヤジが異常接近していることに気づいた。
こいつ、でけえ。
変身時のチョッパーくらいあるんじゃねえの・・・。
よってくんなよ・・・。
気づくと壁に押さえつけられるような形になっている。
ちょっと・・・。
さっき買った卵が割れちまうだろ・・・。
習性で睨み返した時だ。
「そう睨むと、可愛い顔が台無しだよ」
耳元で囁かれた。
オヤジの言葉にサンジはぽかんと口を開けた。
思わず、くわえていたタバコが口から落ちた。
あア?
今、コイツ、何・・・て・・・言った???
いかん、脳が拒絶してる。
言葉の意味を咀嚼して理解するまでに絶大な時間を要した。
唖然としているサンジにオヤジはのうのうと言葉を続けた。
「いやあ、お兄ちゃんとは、店主と客でない所で会いたいなあ」
このクソオヤジ、何ふざけた事を・・・。
・・・コロス!!!
でも、今、ここで暴れたら、酒が全部ダメになっちまう・・・。
・・・クソ!!
「サンジ、出るぞ!!」
ゾロの怒鳴り声が聞こえてきた。
は?
サンジは一瞬、われに返るが、視界はオヤジの体で遮られている。
ゾロはオヤジに押しつぶされそうなサンジをオヤジから引き抜くと、店を出た。
あのクソオヤジ・・・。
何考えてやがんだ・・・。
店を出てしばらく歩く。
「あーーーーっ!!」
いきなりサンジが叫ぶ。
「どうした?」
「卵が全部割れてやがる!!!
信じられん!!あのオヤジ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「全部?」
「全部!!!!」
一瞬涙目になっていたサンジの目に怒りの火がともる。
そしてまた、ゾロの目にも。
許せん!!
二人の目が合う。
このままで済ますものか。
どうしたら、いい?
その時だ。
猫が目の前を横切った。
二人の目が光る。
猫だ。
猫だ。
もはや言葉は要らない。
ゾロとサンジは散った。
そして、猫を片っ端から捕まえた。
黒猫、白猫、まだら猫、とら猫、赤猫、三毛猫・・・。
この島にいるあらゆる種類の猫を集めたのではないかと思う程に。
ニャー、ニャー、ニャー。
ニャオー、ニャオー。
準備が終わった二人はまたしても目で合図をする。
サンジは微笑みすら浮かべて、また酒屋のドアをくぐる。
「あっ、また来たのかい?」
喜色満面のオヤジにサンジはにこやかに答える。
「酒届けてくんないかな。外にでてこねえ? 外れの小屋の中で待ってるからさ」
しばらくすると、「先に行ってる」と言うサンジの言葉に何の疑いも持たずに、
オヤジはめかしこんであらわれた。
酒瓶を大量に手にしている。
「お待たせ、子猫ちゃん」
ドアが閉められた瞬間。
大量の猫が落ちてきた。
ニャー、ニャー、ニャー。
ニャオー、ニャオー。
ニャゴー、ニャゴー。
ウニャー、ウニャー。
「うわあああああああああ」
ズシーン。
何かが倒れる音。
小屋の中から響き渡る声。
「逃げろ!!」
サンジとゾロは酒を奪うと一目散に走り出した。
走り続けて、違う区画まで抜ける。
走って、走って、
走り疲れて腰をおろす。
荒い息を整えながら、ゾロが言った。
「・・あの野郎、さぞかしびっくりしただろうな」
「あんな大量の猫、見たことねえだろうよ」
サンジがニヤリと笑う。
「・・・ははは」
「はははは」
「卵だらけだしよ!!」
想像しただけで笑いが止まらなくなる。
本物の、猫だ。
あの小屋の中のほとんどが猫。
「あんなにめかしこんで、アホだよな!!!」
「ぎゃはははは」
「おっかしい!!」
笑い始めると止まらなくなり、通行人の冷たい視線を浴びながら、二人は笑い続けた。
他の買い物も済ませ、卵も買い直した。
船に帰り、酒を見ると上等の酒ばかりだ。
ゾロはその中に、「金髪の兄ちゃんがもっと可愛くなる酒」も入っていることに気づいた。
この酒をどう分けるか?
「猫の数に比例しようぜ。なんせ、オレは20ぴきは捕ったからな」
ゾロの余裕の言葉にサンジが反応する。
「あんだと、コラ、オレだってそんくらいとってる!!」
「オレが多い!!」
「いや、オレだ!!!!」
「やるのか、コラ!!」
「てめえこそ!!」
そしていつものようなケンカが始まる。
その後、いつものように酒を飲む。
ゾロはちょっと気になっていた。
本当に「もっと可愛くなる酒」なんだろうか。
だったら早く飲ませてみてえ。
そんでまたケンカすんのも悪くねえ。
end
パピコさんの33333リク、
二人で楽しくバカやってるゾロとサンジです。
ってリク内容であってるのは「二人」と「バカ」だけでは?
アホだ。
どこに出しても恥ずかしい、アホ・・・。
二人が真剣に猫集めしているところを想像するのが一番笑えるかも。
猫を捕って、ニヤリと笑うゾロとか・・・最低??
いや、私はノリノリで書いてましたけど・・・。
あの二人は、気が合う時は物凄く合うと思うのです。
しかし、何かが、違う。