恋はあせらず can't hurry love |
深夜。
サンジはいつものように料理をして、
いつものように片づけを終えた。
しずかな海。
しずかな夜。
タバコをくゆらし、デッキの様子を見る。
手酌で酒を飲んでいるゾロの姿が見える。
最近、毎日ゾロはそこにいる。
必ず。
今日も、いる。
サンジは安心する。
手にはゾロの好きなつまみが盛られた皿。
いつの間にか、ゾロのためにつまみを作るようになった。
ゾロは何も言わずに、ただ酒を飲んでいる。
今日のようなおだやかに晴れた夜も。
冷え込む夜も。
雨の夜も。
どんな時でも、必ずそこにいた。
その背中や横顔を見る度に、サンジは不安定な気持ちになった。
見たくねえ。
見たくねえのに、見てしまう。
ゾロといると、つい憎まれ口をたたいてしまう。
でも・・・。
気になってしょうがねえ。
なんで、こんな腹巻き男を、と思うのに。
なんでかな、チクショー。
あんなに可愛いナミさんやビビちゃんとは違う。
最悪だ。
なのに・・・気になっちまう。
「オイ、つまみだ」
ゾロはサンジが手にした皿を受け取った。
何故か、酒をここで飲むようになった。
どこで飲んでも酒は酒。
だが、他の場所にはコイツがいない。
そう思うといつの間にかここで待つようになった。
最初はイロイロからんできたんだが、最近は何も言わずつまみを持ってくるサンジ。
オレはサンジが嫌いなわけじゃねえ。
なのにいつも、コイツを怒らせちまう。
だって、あんまりアホだから、つい言っちまう。
アホまるだしでビビやナミにこきつかわれてる。
コイツにはプライドなんてねえのかも。
どうでもいい筈なのに、つい、言っちまう。
なんかムカつくんだ。
女にふらふらしてるサンジを見ると。
「うめえ」
ゾロの言葉にサンジがにっこりと笑った。
「クソうめえだろ」
子供のような笑顔。
ゾロはそんなサンジを黙ってみていた。
・・・。
コイツ、可愛いじゃねえか。
ゾロはサンジの髪に手をふれる。
さらさらとした細い髪が指にからまる。
かすかに頬を赤らめたサンジの顔をひきよせ、ゆっくり口付けた。
サンジはゆっくりと瞳を閉じ、ゾロに答えようとした。
その時だ。
「あーーーー!!!」
いきなり大声がした。
あわてて離れるゾロとサンジ。
「ずりいぞ、ゾロ!!! 今、サンジとチュウしてただろ!!」
ルフィがずんずんと近づいてくる。
いつもなら子供はとっくに寝ている時間だ。
「ゾロだけずるいぞ!!」
ルフィは唖然とするサンジの顔をつかみいきなり口付けた。
「んんん」
驚きに目を見開くサンジ。
「・・・・!!! ルフィ!!!てめえ!!!」
ゾロはあわてた。
まさか、こういうことになるとは。
ルフィの奴、サンジを狙ってんのか。
「離しやがれ、クソ野郎!!!!」
やっと口を解放され、わめくサンジにルフィは抱きついている。
それを引き剥がそうとするゾロ。
「なんで? オレ、サンジ好きだし」
抱きついたルフィはゴムなのでひっぱってもサンジから剥がすことが出来ない。
「ルフィ!!! こいつはオレのものだ!!」
ついゾロの本音が口から出た。
それを聞いたサンジのこめかみに青筋がはいる。
「あァ? この腹巻き!! いつからオレがものになったんだ!!!」
「うるせえ!!てめえはオレのもんだろが!!」
いつも繰り返されているケンカが始まりそうだ。
「てめえ、コロス・・・」
「おお、上等だ!!」
ルフィはそんなサンジにしがみついたままだ。
ゾロもサンジも、ムキになって言い合っている。
しがみついたサンジの細い体。
やっぱりコイツいいよな。
サンジも食いてえな、オレ。
うまそうじゃん。
「ししししし」
ルフィは楽しくなってわらった。
「笑うな、クソゴム!!!」
サンジ、真っ赤になって怒ってる。
ガキみてえで、可愛いなあ。
でもゾロもそう思ってるんだよな。
ゾロはサンジにチュウしてるんだ。
だったら、オレも負けずにするぞ。
そんで、オレのもんにするんだ。
「オレのもんだ」
ルフィの言葉に、ゾロが反応する。
「オレのもんだって言ったろ!!!!!!」
そのうち、何だか分からないが、もみ合いになった。
ぶつかったり、蹴ったりしているうちに、壁に穴が空いてしまった。
マストもちょっと折れた。
「止めんかーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
中止の声と同時に激しく頭をはたかれる。
痛みにうずくまる男達。
「・・・・いてえ・・・」
「・・・ナミひゃん・・・」
そこには仁王立ちになったナミがいた。
涙目のサンジをナミは冷たい目で見つめる。
「サンジ君、あなたの貞操より、私の睡眠の方が大事なの。分かる?」
ナ・・・ナミさん。
なんて恐ろしいことを。
あとずさるサンジ。
「とにかく、あんた達。今すぐ寝なさい!!!」
不服そうなルフィにナミは約束する。
「サンジ君の事は、私が考えてあげる」
「本当か!!!サンキュー、ナミ!!!」
明るく答えるルフィにゾロは脱力した。
なんでここでナミに礼が言えるんだ。
それも、心から・・・。
そして、そのナミの前ではあやつり人形のようになるサンジ。
・・・。
冗談じゃねえ。
「とにかく、あせらないことよ」
ナミの頭の中では、チェスの駒の代わりに金貨が動いているに違いない。
そう確信するゾロだった。
ナミをにらみ、それからサンジをにらむ。
てめえ、ほんとにオレのもんだろが。
なんでそれを素直に認めない。
それはちょっと許せねえ。
ルフィはサンジを見た。
そっか、サンジはゾロが好きなんだ。
ゾロもサンジが好きなんだ。
でも、オレもサンジが好きなんだ。
サンジはナミも好きだよな。
だったら、皆おんなじじゃん。
でもサンジはオレのものにしたいな。
さっきのゾロ見て、オレもチュウしたりイロイロしたいなって思ったから。
サンジは皆の視線を感じ、固まった。
四・・四面楚歌??
前門の虎、後門の狼???
ゾロ、すげえにらんでる。
って、ナミさんに言われたらしようがねえし。
ルフィには弱いんだよな、オレ。
つい、言うことを聞いちまうんだよな。
何でだろ。
ゾロの奴、さっき言った事・・・本気なのか?
「好き」なんて聞いたことねえ。
オレだって言ったことねえし。
「オレのもの」ってどういう意味だ?
確かに・・・ちょっとレディには言えねえようなことはしたかも。
けど・・・。
どういうことだよ。
クソ剣士。
あー、イライラするぜ、もう。
「ししししし」
ルフィはサンジの様子をずっと見ていた。
そうだ。
あせらなくてもいい。
先は長いのだから。
海賊王にオレはなる。
その前に、サンジはオレのものになる。
ゾロみたいにあせらないことだ。
絶対、そっちがいい。
サンジはどっちを選ぶのかな。
ゾロ?
それともオレ?
やっぱ、オレだろ。
モンキー・D・ルフィだ。
そこのあんた。
あんたもそう思うだろ?
★
りるりるさんの44444リク、ゾロサンベースでルサンです。
やはりルフィは無敵っぽいです。
しかし、これ、ナミサン??? 常にナミサンだよねえ。下僕状態。
「恋の奴隷」とか言って、おバカなサンジは喜んでいるのでしょう。
「近くにこんないい男がいるのに。許せん!!!」
とゾロは思っていることでしょう。
何も考えていないルフィの乱入に、二人の未来はどうなる??!!
果たしてサンジはどちらを選ぶのか!!!
次回を待て!!
(ウソップ談)
ガボーーーン。