ボスの辞書に「素直」はない



27巻デコピン話より妄想
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ヴァリアー本部には、いろいろな投書が寄せられている。
それは匿名で送られてくるものもあるが、隊員自らが待遇改善や希望を訴えることができるようにもなっていた。
目安箱のようなそれには、幹部が一応目を通す事になっていた。

「えーと、最近ボスを見かけないけど、しくしくワ゛ォンワ゛ォンしてませんか、だってさ!!!」
ベルが笑いながらその投書をかざし、ルッスーリアに渡した。
「あらーー、誰がこんなこと書いたのかしら!! 
もう、困っちゃうわねえ・・・」
ルッスーリアは、自分にあてて書かれた「ルッス姐さんのおかげで、怪我が治りました」
という感謝の投書をこれみよがしにひらひらさせながら言った。
「おのれ、ボスに対してなんと無礼な!!!」
その投書を渡されたレヴィが鼻息荒く叫んだ。
「やべっ、ボス来たぜ!!!」
ベルが言ったころには、すでにザンザスがやってきていた。
いつもなら、幹部で楽しんだあと、ボスが怒りそうな投書は隠しておくのだ。
それなのに、よりによってお楽しみの最中にボスが来てしまった。

ザンザスはレヴィから束ごと投書を奪い、むっつりした顔で一番上にある問題の投書を見た。
瞬時に憤怒の炎が巻き起こった。
「待てっ!!」
スクアーロは投書のたばを燃やしたザンザスを止めようとしたが、すでに遅かった。
ザンザスは、むっとした顔のままスクアーロの額を指ではじいた。
「ガッ!! グハァ!!」
額を押さえて、スクアーロが怒鳴った。
ザンザスはうずくまって怒鳴るスクアーロを見て、少し気が晴れたようだ。
「ふん、カスが」
スクアーロを見て、鼻で笑うと部屋を出て行った。
「あーあ。投書をかっ消してアホのロン毛隊長に八つ当たりのデコピン入れて行っちゃいましたねーーー」
フランが、興味なさそうに言った。
「う゛ぉおおおい、いてえぞぉ!!!」
額を押さえるスクアーロを見て、ルッスーリアはため息をついた。
「しょうがないわねえ。
わたしが、治してあ・げ・る!」
「いるかぁーーーー!!!」
スクアーロが乱暴にけりを入れようとし、ルッスーリアはあわてて逃げた。
「おほほほほ、スクってば、本当に怒りっぽいんだから」
そういいながら、素早く近寄り、スクアーロの腕をとってしめつけた。
「・・・!!!」
「だめよ、スク。油断しちゃ」
ルッスーリアは得意の接近技でスクアーロの動きを止め、額のケガをチェックした。
「ししし。ちょっと赤くなってるだけじゃね」
ベルもすぐ側に近寄ってじろじろ見た。
「うわーーー、すごく手加減してますねーーー」
様子を見ていたフランが棒読み口調でつっこみを入れた。
ルッスーリアは、くねくねしながらうっとりした。
ボスってば、大人になったわね。
これなら傷は残らない。
やっぱりスクちゃんに八つ当たりしたかっただけなのね。
かわいいわあ。
いつまでたっても、心はガキ大将よね。
かまって欲しいのに、言えないのね。
分かるわあ。
「スク、あとの書類、あんたがボスに見せに行ってね。
私たち、これから仕事なの」
「う゛ぉおおい、何でおれが?」
「はい、このたばですねーーー。どうぞーー」
「なら、このおれがポスに・・・」
手を伸ばしかけたレヴィの前に、ベルのナイフが突き出された。
「ししし、お前は用事があるんだよ。そうだろ?
それとも王子に刺されたい?」
「いや・・・おれは・・・うぬう・・・ボス・・・許してくれ!!!」
レヴィは葛藤しつつ、ボスのそばに近寄ることをあきらめたようだった。
「ちっ、しょうがねえなあ。
持って行ってやるぞぉ」
スクアーロはしぶしぶ書類のたばを持って出ていった。

「あ、そう言えば、あの書類に、まだかっ消されてない投書があって、
スクアーロ作戦隊長の色香に惑わされて仕事に集中できませんてのがあったと思うんですけどーーー。
ボスと作戦隊長は別れて欲しいとかもーー。
ミーには関係ありませんけどーー」
「ボスが・・・いや、ボスはスクアーロなどと付き合ってなど・・・。
うおおおお、ボス、嘘だと言ってくれ!!!!」
レヴィが大声で叫んだ。
「え、そんなのあったの。
おほほほほほほ。
ボス、めちゃ怒るかしら・・・」
ルッスーリアは汗を流した。
「・・・。王子、知らね」
ベルはあさっての方を向いた。
「あーーー、夕日が綺麗だなーーー」
フランが遠くを見つめてつぶやいた。

今日も平和に終わりそうです。
スクアーロ作戦隊長は明日は仕事にならないかもしれませんけどーーー。
それにしても、まったくボスは素直でありませんねーーー。
きっとボスの辞書から「素直」の字はかっ消されていると思いますーーー。
この人たちって本当におもしろい人たちです。
師匠より無害ですし。
おもしろいので、ミーはもうしばらくここにいることにしますーーー。
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気にいらないことがあると、スクアーロだけにデコピンするボス!!!
どんだけお子様!!!!
どんだけスクが好きなのか!!! 
かまってほしいモード全開ですね。
そして、そのボスの繊細さにいっこうに気づかないスク!!!! 
デコピンの意味も投石の意味も髪をひっぱる意味にもさっぱり気づかないに違いありません。
三十路なのに!!!!!!!!!!




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