堕ちた天使

オレは何も欲しいものはない。
欲しいものは全部奪ってきた。

クリーク海賊団。
最強最悪の大艦隊。

何でも手に入った。
首領の言うとおりにしていれば良かった。
男も。
女も。
望むものは全て。

海賊艦隊戦闘総隊長。
戦闘に義や情は不要。
鬼人。
みなはそう呼ぶ。
 

おれたちは無敵のはずだった。
しかし、たった一人の男に破れた。
鷹の目の男。
伝説の剣士。
海には誰も知らないようなことがたくさんある。
手段を選ばず、勝つ事。
首領がいつも言っていることだ。

食いものがない。
みな、腹をすかせている。
なかには餓死するものもでてきた。
オレは食いものを探して漂流した。

何日も漂流した。
日が昇り、日が沈み、星がまたたく。
オレは政府の船にとらえられ・・・
罪人。
死刑。
いつかは死ぬ。

オレは、こんなところで死ぬのか。
意識が薄れそうになる。
情けねえ。
だがどうにもならない。
もう、ダメかと思った。
オレは飢えて死ぬのか。
これまで何をしてきた。

朦朧とする意識のなか、奇跡的にレストランが見つかった。
食いものだ。
オレは力を振り絞った。
「何か食わせろ」
でかいコックはオレをたたき出した。
無理もねえ。

こんなコック普段なら、問題ではない。

だが、殴りかかる力もない。
オレには、次の店をさがす力もない。
もう駄目か。
起き上がることもできなくなった時、側に食いものがあった。

「食え」

オレは夢中で食った。
どんな飯よりうまかった。

たった、ひと皿の、食いもの。

オレはそれに救われた。
これで、また生きていける。

命の恩人。
オレはあの人に会った。

サンジさん。

オレにあんなことをしてくれた人はいなかった。
ただただ嬉しい。

サンジさん。
オレはあんたが忘れられない。