堕ちた天使


 

水上レストラン「バラティエ」
相変わらず繁盛している。
だが、もうすぐ閉店だ。
オレはそっと店につけて、目当てのデッキをめざす。

暗闇にかすかなタバコの明かり。
「サンジさん」
すると目当ての人の声が返ってくる。
「あァ、誰だ、てめえ」
オレは近寄って声をかける。
「オレだよ。ギンだ」
「なんだ。てめえか。またタダ飯食いにきたのか」
「いや、今日はあんたに会いたくて・・・」
「あァ、ふざけんなよ、コラ」
この悪舌もこの人の魅力なんだが。

機嫌が悪い。
だがそれが何だ。
オレだって決心してきた。
「サンジさん。オレのもんになってくれ」
いい終わったとたん、痛烈な蹴りが飛んできた。
「てめえ、毒が頭にまでまわったんか」
まわってるよ。
あんたという毒が。

オレはトンファーを取り出した。
できることなら、こんなことはしたくなかったが・・・
構えようとした瞬間、痛烈な蹴りが入った。
でもオレはあんたより強い。
トンファーをふりかざす。
ふりおろせば、一撃でダメージを与えられる。

だが・・・
ふりおろす事がどうしてもできない。

だめだ。
あんたを壊すことなんて、オレにはできない。

「何考えてんだ、この毒アタマ!!!」
オレは激しく床に叩き付けられた。
「あんたのこと・・・」
「あほかっ」
「しょうがねえだろ。あんたのことしか考えられねえんだ」
どかっ。
蹴り。
「サンジさんのことばっかり、考えてる」
どか、どかっ。
さらに蹴り。
痛え・・・でも、構わない。
サンジさん・・・

「やめろ、サンジ。てめえ、何してやがる」
他のコック達がサンジさんを押さえてる。
「はなせっっっ」
「仕事だ。ボケナス」
オーナーゼフがサンジさんを引きずっていく。

オレはただ取り残された。
サンジさん。
オレはあんたをあきらめない。