厨房裏
 
 

堕ちた天使


 
 
 
 

サンジさん。
ごめん。

オレはぐったりしたあんたを抱きしめた。
手加減したつもりだが、あんたが抵抗するから・・・

気を失ったあんたにそっと触れる。
夢で見たよりなめらかな頬。

オレは絶対に忘れちゃいけねえ。
全部。

忘れられるわけもない。
オレが汚した。

サンジさん。
サンジさん。

大切すぎて壊してしまった。
もうもとには戻らない。

あんたがいたらオレは苦しくていられない。
オレはゆっくりと首に手をかけた。

今なら。
オレのものになったままこの人を殺せる。
めざめたらあんたはオレを殺すだろうか。
そうしたらオレはどうするのか。

オレは再び首領と行く。

だが。あんたがいなくてもオレは生きられるのか。
 
 
 
 
 
 
 

かけられた腕。
涙・・・?

ギン。
何だ、泣いてる?

すげえ、涙。
何だ。

「ごめん。サンジさん」
「ごめん。サンジさん」

うわごとのようにくり返される言葉。

そうだ。
こいつは、オレに・・・
 
 
 

オレは一気に我に返った。
起き上がろうとすると、激しい痛みが体に走る。
いてえ。
自分の体が目に入る。

一瞬、めまいがした。
何だこりゃ。

明らかに陵辱された身体。
よみがえる感触。
 
 

「ぶっ殺す」
オレはキレた。
ギンにケリを入れる。
続けざまに。
 

気がついたときにはギンは血を流して倒れていた。

チクショウ。
許せねえ。
何でだ。
泣きたいのはオレだ。
なのに。

ギンは壊れた人形のように、無抵抗だった。

「なんで、てめえが泣くんだ」

人生の終わりみたいなツラして。
チクショウ。
 

「だって、あんたはオレのこと見てくれない」
呻くようなギンの声。
苦しんでる。

ギンがオレを好き。
知らなかった。
どうしてだか、これっぽっちも考えた事なかった。
だけど、こんなことしていいわけがない。
サイテーだ。
うなだれるギンを見て、オレは怒る気が失せてきた。

今日は特別な夜だ。
こいつは明日船出する。
船出の前は別れる恋人と過ごす。
それが古よりのならわし。
だから、ギンがひょっこりあらわれた時にはびっくりした。
だが、大切な人とは別れる事もないのかも、と思った。
オレ達は、ただ酒を飲むだけだと。
ひどい事をされた。
なのにギンのことが憎めねえ。
どうしてだ。
 

チクショウ。
いてえ。
追いつかない身体。
追いつかない心。
何が何だかわからねえ。

だからって
「「ただたせたせかに