新入り幹部の憂鬱    2





ミーの名はフラン。
泣く子も黙るヴァリアーの幹部だ。
ヴァリアーのボスと、その側近である作戦隊長が不健全な関係であることを知ったのはつい最近だ。
ミーがヴァリアーに入る前に、誰もそんなことを教えてはくれなかった。
ルッスーリアがオカマで、ベル先輩がいかれてるってのはすぐ気づいたが、まさかボスとあのロン毛のアホ隊長がそういう関係だとは。
確かに、妙に二人とも色気がある。
ボスが歩くと玉の輿を狙う女たちまでさざ波のように動いていく。
ボスはメスを発情させるオスのにおいをぷんぷんさせている。
スクアーロ隊長はまたタイプが違う。
最初見た時は、でかい声でうるさいし落ち着きないとしか思わず、気がつかなかったが、黙って立ってると何だか妖艶で目のやり場に困る。
今だってそうだ。
急な十代目からの呼び出しで、ヴァリアー全員がボンゴレ本部に行かなければいけないそうなのに、ミーたちは結構待たされた。
ルッスーリアとベル先輩は先に行こうと言ったのに、
レヴィ雷男が待つと言い張り、直立不動でボスが出てくるはずの出口を見つめ続けていた。
その時、広間に来ていないのは、スクアーロ隊長とボスだけだった。
ミーは待つのが嫌いなのに新入りだからしょうがなく待った。
ボスにはおっかなくて言えないから、スクアーロ隊長に文句を言おうと思ったけれど、出てきた隊長を見たら、何も言えなくなった。
「ゔぉおおい、待たせたなぁ」
いつもより声がかすれているし、顔は赤いし、なんていうか色気だだ漏れな感じなんですけど。
「あれ、まずくね?」
ベル先輩が小声でつぶやいた。
ミーは知りません。関係ありません。
そのうちに、やっとボスがやってきた。なぜかネクタイは外され、シャツもはだけられ、傷跡の残るたくましい胸をあらわにしている。
「まあ、素敵」
ルッスーリアが手をにぎりしめて、くねくねした。
「ザンザス様、お供します」
レヴィがボンゴレの旗をにぎりしめて、ボスの背後についた。
ボスは先に出てきているスクアーロ隊長をじっと見つめている。
スクアーロ隊長は、それに気づくと顔を少し赤らめて背中を向けた。
あのー、この人たち、何をしているんでしょうか。
ミーには理解できません。分かりたくありません。
ていうか、今までミーたちを待たせて、何をしていたのでしょうか。
ミーは嫌です。こんな状態でボンゴレ本部に行くなんて。
これではミーの上司は、色情狂みたいではありませんか。
ベル先輩が、ミーに近づいてきた。
「ししし、今、お前、何か思ったろ?」
「いえ、ミーはボスと隊長がエロすぎて迷惑だなんて、全然思ってません」
「ふーん。王子は思ったけど。ししし」
ベル先輩が妙にからんでくる。
隊長は事後でうわのそらっぽいし、ボスは隊長を見つめてるし、それをオカマとヒゲ男はうっとりと見つめている。
こうなると、ベル先輩のターゲットはミーしかいない。迷惑です。ミー、とても迷惑です。
この人たちの仲間だと思われるのも嫌だし、
目をそらして見て見ぬ振りをするのも嫌だし、
エロ隊長を見すぎてボスに制裁を下されるのも嫌です。
ミーは憂鬱です。
いつの間にかこんなへんな連中の仲間にされてしまったなんて。






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