新入り幹部の憂鬱    3
(Vジャンプより)



ミーの名はフラン。
ヴァリアーの幹部です。
部下たちには若くして選ばれた幹部ということで、いつも崇拝の目でみられています。
部下たちは、ヴァリアー幹部に心酔していて、怯えながらも一生懸命やっています。
幹部に逆らうと命がないことを知っているので、面倒見がよく治癒能力をもつルッスーリアのことを「姉さん」と読んで、慕っています。
疑問を持ったらここでは生きていけませんから。
まあ、そんなことはいいんです。
今日は、明日の襲撃目標についての作戦をたてるはずでした。
作戦室にはスクアーロ作戦隊長、レヴィ雷男、ルッスーリアとベル先輩もいました。



★★★★★
「ゔぉおおおい、ボスはまだかぁ!! そこのお前、会議を始めるので召集だって言ってこい!!」
スクアーロが、控えていた部下を睨むと、命令を下した。
言われた大柄で厳つい顔の部下は、青ざめた。
ザンザス様には、できるだけ近寄りたくないのだ。
強くてかっこいいのだが、とにかく恐ろしいのだ。
「とっとと行けえ!!」
スクアーロが怒鳴り、部下はおそるおそるザンザスを探しに行った。
スクアーロ作戦隊長は黙っていれば人形のように美しいのだが、中味はボスと同じく怒りっぽくて乱暴だ。
気にいらないと容赦なく、技を放ってくる。
「ザンザス様ーーー!! ザンザス様ーーーー!!」
部下は姿の見えないザンザスの名を叫びながらあちこち歩いた。
ヴァリアー内部は迷宮のようになっており、内部のものですら、部屋を探すのはむずかしい。
でも、早く探さないとスクアーロ隊長の機嫌がどんどん悪くなるのは間違いない。
「・・・るせぇっ」
ヴァリアー内部には、通称、拷問室とよばれる密室があり、そこで何が起きていても誰も知る事はない。
「拷問室? ここで何を…わあッ天空嵐ライガー!!」
恐る恐る内部を覗いた部下は、ザンザスと匣兵器ライガーの姿を見つけ、腰を抜かしそうになった。
ザンザスも恐いが、この匣兵器も恐い。
見ただけで、気絶してしまいそうだったが、ヴァリアー隊員としての責任と誇りで思いとどまった。
ガウウウウウ!!
ライガーは部下を見つけると牙をむいた。
「用件を言え」
「はっ、スクアーロ作戦隊長が会議を始めるそうで召集をと…」
部下は震えながらも、なんとか用件を言った。
前門のライガー、後門の鮫である。
どちらにしても、ちゃんと用件を伝えないと、カッ消されるのには違いない。
「カス鮫1人でここに来いと伝えろ。試してぇ技がある」
「はっ!!」
部下は一刻も早くその場から離れたくて、急ぎ足でもとの会議室に戻った。
またいびりが始まるのか・・・。
ボスはどうやら、スクアーロ隊長をいびるのが趣味なのだ。
下っ端の部下には詳しいことは分からないのだが、スクアーロ隊長だけを呼びつけていろいろするのはしょっちゅうらしい。
「遅いぞぉ!! なんでボスが来ないんだぁ!!」
会議室では、怒り心頭に達している隊長が待っていた。
「あの・・・ザンザス様が、スクアーロ隊長一人で拷問室に来いと・・・。試したい技があるそう・・・ぐげっ!!」
言い終わらないうちに、スクアーロにたたきのめされ、部下は倒れた。
「あのクソボスがぁ!! この忙しい時になんなんだぁ!!」
スクアーロは怒鳴ると、足音も荒く会議室を出て行った。
「うわあ。ボス、白昼堂々、部下を使って誘うのか。ししし」
ベルは楽しそうだ。
ルッスーリアは頬を染めた。
「拷問室なのね。素敵だわあ。私も拷問は大好きよ!! ボスだから勝手に使っても許せるわぁ」
「おのれ、スクアーロ!! すぐにボスをお連れすることができなければ、このオレが変わって作戦をたてるぞ!!」
レヴィが息まいている。



★★★★★
フランはため息をついた。
ミーには関係ありません。
このヒゲ雷男がますますいらいらしはじめるのは分かっているけれど、ボスとスクアーロ隊長がすぐにやって来るとは思えません。
試したい技というのが何なのかも考えたくありません。
忠実な部下や純粋な青少年の考えていいことではありません。
明日の作戦はいったいどうなるのか・・・。
まあ、ミーにとってはどうでもいいことですけど。
相変わらずボスと作戦隊長はただならぬ関係のようですが、ミーだけはかかわりになりたくありません。
しかし、作戦は明日遂行されなければならないはずで、スクアーロ隊長が使い物にならなくなったら、ミーたちの負担が増えるのは確実です。
自分のせいでミーたちの負担が増えても、隊長はやつあたりのごとく怒りまくります。
ボスに文句を言えばいいのに、それはできないらしいのです。
ミーには理解できませんし、理解したくもありません。
もの凄く理解しているルッスーリアや、何かを狙っているようなベル先輩や、全く理解していないレヴィ雷撃隊長のことも理解できません。
ミーは憂鬱です。
才能がありすぎたためにこんなことになってしまいました。
まったくもって、憂鬱です。
こんな大人たちにだけはなりたくありません。





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