giocata
(ジョカータ・勝負)
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標的306 眼 ・人気投票カラー扉絵より
耳当てもふもふ話その3

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スクアーロは風の吹き荒れる荒野を馬で駆けていた。
剣帝をめざしての三十一番目の勝負に向かっていた。
はるか後ろから記録係のルッスーリアがついてくるが、今はそれどころではない。
ここはロシアに近いエストニアの国境付近だ。
普段は誰も近寄らない何もない土地だ。
荒涼とした大地のどこかに、勝負を挑むはずの剣士がいるはずだった。
その男リフジャルスィはその名のように「隠遁者」と呼ばれ、
めったに人前に姿をあらわすこともなく、一人きりで精神を統一し、修行に励んでいるらしい。
「どこだあ。たたっ斬ってやるぞお!!」
スクアーロは馬上から人影を探したが、なかなか見つからず、徐々に日が暮れかけていた。
日が沈みかけた時、はるか遠くに焚き火のようなものが見えた。
スクアーロは迷わずそこに向かった。
そこには、川魚を串焼きにしながら、座禅を組んでいるひげだらけのがっちりした男の姿があった。
男の横には、ゆうに1メートルはあろうかという長い剣が置かれていた。
その男は、スクアーロが馬に乗ったまま近づくと、かすかに瞼を空けた。
「お前が、隠遁者とよばれる剣士、リフジャルスィだなあ。
勝負しろお!!!!」
スクアーロの言葉に、その男は動じる様子もなく、表情も変えなかった。
「はてな。こんなところまで来るということは、尋常な者ではあるまいに・・・」
その男は、まじまじとスクアーロを見た。
この荒野をさまよい修行を始めてから半年近くになる。
その間には、迷いこんできた漁師と農民に何度か会った事があるだけだ。
「どおしたあ!! 耳が聞こえないのかあ?」
頭の悪そうなしゃべり方をするが、突然の闖入者の容姿は実に美しかった。
さらさらとした長い銀髪が風になびき、黒い耳当てがよく似合っていた。
手にももふもふしたものをつけ、ジーンズの上から、股間と尻の部分が開いている皮製のオーバーズボンをはいていた。
左手に物騒な長剣をつけていたが、それもこの銀髪の美しさをひきたてる飾りにしか見えなかった。
「剣の妖精?」
リフジャルスィは思わずつぶやいた。
「はあ? 妖精だぁ? どこにいるんだあ?」
スクアーロはきょろきょろ周りを見回したが、はるか遠くの方からルッスーリアが後をたどってやってくるのが見えただけだった。
「・・・耳も手も、もふもふしておる」
「はあ?意味わからねーぞぉ。
お前がこんなへんぴで寒いところにいるせいだぁ!! 
オレの名はスクアーロ。
スペルビ・スクアーロだあ!! 」
「スクアーロ・・・。名は聞いたことがある。
高名な剣帝テュールを倒したという、ボンゴレの超精鋭の剣士だな。
しかし、イタリアのマフィア、ヴァリアーのスクアーロなら隊服を着ているはずだ。
そんなかわいらしげな服ではなく・・・」
「知るかあ!!
とにかく戦え!!
ボスに約束したんだあ!! 
さっさとカタつけて帰るぜえ!!」
スクアーロは剣を振りかざした。
「まあ、座りなさい。
ちょうど今日は大漁でな。
マスがたくさんとれたから、多めに焼いていたところだ」
「・・・マスっていうのかあ。
川の魚かあ?」
ころあいよく焼けた魚を見たスクアーロの表情が動いた。
「とれたてだ。うまいぞ。
戦うのはその後でもできるだろう」
リフジャルスィは笑みを浮かべた。
本物のスクアーロは獰猛な鮫のような男だと聞いたことがある。
こんなかわいらしい剣士であるはずはない。
焼き魚が好きらしく、もう勝負のことを忘れかけている。
「・・・ひとつ、食ってもいいかあ?」
スクアーロは、ルッスーリアがまだしばらく来そうにないことを確認すると、男の向かいに腰を下ろした。
「おお、確かに、うまいぞお!!」
バリバリと骨を噛み砕き、見かけとは違い乱暴にどんどん食べていくその様子を、リフジャルスィは目を細めて見た。
何か勘違いしてここまでやって来たらしいので、勝負のまねごとぐらいしてやってもよいだろう。
我が秘剣、雲隠れの術を使うような相手にはとても見えない。
リフジャルスィが、スクアーロをまじまじと見ていると、今度は派手で奇妙な男が現われた。
「もう、スクアーロったら、一人だけ先に行っちゃって!! 
追いかけるの大変だったんだから!! 
こんな寒いところで長いこといたら、お肌が荒れちゃうわあ」
くねくねしながら喋る派手な頭の奇天烈な男を、リフジャルスィはあぜんとしてながめた。
「おつむの弱い剣の妖精の次は、奇妙な人外の魔物か・・・? 
とうとう私には別の世界が開けたのか・・・?」
「ちょっと、あなた、聞き捨てならないわね!! 
どうしてスクが妖精で、わたしが魔物なのよ!! 
逆にしなさいよ!!」
ルッスーリアは録画装置を片手に詰め寄った。
スクアーロは、それを見て、串を投げ捨てると、剣を構えた。
「戦ええ!!」
リフジャルスィはしぶしぶと剣を構えた。
なぜ、不気味なオカマが戦いを記録しようとしているのかもよく分からない。
ただ、このスペルビ・スクアーロとやらは、必死でちょっとかわいいので相手してやってもいい。お遊びにつきあってやってもいい。
向かい合うと、スクアーロは剣を構えた。
お遊びだと思って完全に油断していたリフジャルスィは、いつ斬られたのかすら分からなかった。
「弱いぜえ!!」
スクアーロは一太刀で相手を倒すと、カメラに向かって話しかけた。
「油断してると負けるんだあ!!」
地面に倒れ伏したリフジャルスィは、見くびっていた剣士は本物の実力者だということに気づいた。
しかし、もうすでに遅かった。
「スクと戦うのに、油断するなんて、バカな男ねえ!! 
こんな乱暴な妖精なんているわけないじゃない!! 
でも、この男の身体、ちょっと好みかもしれないわあ」
ルッスーリアの目がきらりと光った。
「ゔぉおおおい、何か言ったかあ?」
「なんでもないわあ。
それより、スク、早く帰らないといけないんじゃない? 
もう夜になったわよ。
先に帰るといいわ。
後始末はま・か・せ・て」
スクアーロは、倒れたままの気の毒な「隠遁者」をちらりと見た。
この男は、運が悪かったのだ。
「まかせたぜえ」
馬に乗ると、全速力で荒野を駆け抜けた。
どうすれば、少しでも早くヴァリアーのアジトに帰れるかを考えた。
あらゆる乗り物を使い、ヴァリアーのアジトに着いたのは、日付が変わる直前だった。
今日のうちに帰って来いと言ったザンザスはもう執務室にはおらず、寝てしまっているようだから、行く必要がない。
そう判断したスクアーロは、自分の部屋に戻った。
部屋に入ると、荷物がぐちゃぐちゃになっており、足の踏み場もないほど衣類が散乱していた。
ベッドには偉そうに座るザンザスがいた。
「ゔぉおおおおおい、ボス、何だこりゃあ!!!!!!!」
「遅い!!」
ザンザスは待ちくたびれて来たものの、することがなく、
スクアーロの持っている服を見たものの、どれもこれもピンと来ず、いらいらしていた。
勝負から帰ってきたばかりのスクアーロは、あちこち汚れていたが、出かけた時と同じ服装をしていた。
ザンザスはそれをじっと見た。
やはり、いくら見ても見飽きない。
「・・・もふもふだ。
やっぱりもふもふだな」
馬子にも衣装、カスザメにもふもふ・・・。
これからの隊服にも、もふもふは外せねえ。
「・・・ボスう、どうしたあ? 
何かへんだぞお?」
スクアーロが首をかしげた。
ザンザスは眉間のしわを深くした。
バカな。
カスザメがかわいく見えるなど!!
ありえねえ!!
もふもふのせいだ!! 
ただ、もふもふをしているだけだ!!!!
動揺するザンザスは気づかなかった。
隊服のもふもふはレヴィですらしていることを。
しているのに、レヴィのもふもふは視界にすら入らないことを。
スクアーロのもふもふを見るときだけ、落ち着かなくなりいたたまれない感じになることを。
「おお、ボスさんはもふもふが好きなんだなあ。
エクステもちょっともふもふしているよなあ!!」
スクアーロは気づかなかった。
ザンザスはスクアーロのもふもふだけを気に入っていることを。


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もふもふ万歳!!!!

20101010XSプチオンリーペーパー文



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