表紙
新世界編
2年後ゾロサン
冒頭部分
新世界は謎に満ちている。誰も知ることのない不思議な世界や危険な世界がそこには待っている。
知らない海に乗り出した血気さかんな海賊たちはさまざまな試練に遭い、身の程を知り新世界から逃げ出していく。
かつていた場所に帰れるものはよほど運のいいものだけだ。
命だけはとりとめても、恐怖のあまり廃人のようになり、人として死んでしまうものも多い。
それでも海賊たちは未知の世界に向かう。新世界は冒険と夢の象徴だから。
魚人島での戦いを終えた麦わらの一味は激しい嵐に遭い、
一味は海に投げ出された。
それはめずらしいことではなかった。これまでも見知らぬ島に流れついたことは幾度となくあった。
しかし、百戦錬磨の漂流王でもあるゾロが見ても奇妙な景色が広がっていた。
そこはどこかの部屋のようだったが、部屋じゅうに特徴的な模様が描かれていた。
大小さまざまな大きさのそれは、麦わらの一味なら見なれたものだった。
・・・ぐるぐる?
なんだこりゃあ?
ゾロは眉をひそめた。
突然ドアらしきものが開き、奇妙な男が入って来た。
「クソ野郎、ぐる眉パラダイスにようこそ」
そいつは金髪でたてロールで無気味な化粧をしていて、ピンクのドレスを着ていた。
すね毛が生えた足にはハイヒールをはいている。
妙なぐるぐる巻きの眉と、あごに生やしたひげを見ても、どうみても見なれた男にしか見えなかった。
「・・・」
そういえばシャボンディでサンジを尋ねて来た「友達」もこんな風体であった気はする。
とにかく妙すぎて、言葉すら出てこない。
「どうして、てめえみてえなむさ苦しい男がここに来るんだ? ここにはレディしか来てはいけねえんだ!!
しかし、掟に従い、てめえにチャンスを与えてやる!!」
そいつは見れば見るほど、すこし前まで一緒に航海していたコックにしか見えない。
「てめえの運命の相手はたった一人だ!!
このパラダイスには7人のナイスガイがいる。てめえが救えるのはそのうちの一人だけだ。
失敗したら、そいつもてめえも、もとの世界には戻れねえ」
妙な男はタバコをふかしながらべらべらと喋り続けた。
「どういうことだ?」
茶番にしては度が過ぎている。
「新世界は力技だけでは渡る事はできねえ。やみくもに進んでも、前には進まねえ。覚悟を決めて、パラダイスを楽しみやがれ」
その奇妙な風体の男はそう言い捨てると、どこかに行ってしまった。
・・・なんだありゃあ?
海に投げ出されたあと、記憶がねえが、あいつも同じ島に流れ着いていたということか?
しかしあの妙なナリはなんだ?
頭でも打ったのか?
前からおかしな奴だったが、何やら妙だ。
ゾロはサンジが出て行ったドアらしきものを探し、扉を開けた。
扉を開けると、海のにおいがした。
船の上か?
さんさんと陽の差す甲板にはまったく見覚えがなかった。海賊線のようではなく、まっとうな船のようだった。
平和そうな家族連れが甲板にいて、ゾロを見ると怯えたように逃げ出して言った。
「船員さん、すごく悪そうな刀を差した男が甲板に!!」
「恐ろしそうな男がこの船に!!」
「あの目の傷はかたぎじゃない!! この船は安全だと聞いていたのにどういうことだね!!」
客たちが騒ぎ始めた。
あまりにも弱そうな連中で話にもなりそうになかった。
ゾロはしょうがなく、人の気配のなさそうなところに移動した。
そこは厨房の裏のようで、食い物のにおいが流れてくる。
そういえば、腹が減っていた。
ゾロなんとなく、厨房の方を見た。
「残りもんなんか!!」
コック服を着た、えらく小さいガキがいて、そいつが仲間らしきコックに抗議していた。
・・・ぐるぐる眉だ。
だが、えらく小さい。
「このオービット号は大丈夫だ!! そんなことがあるはずがない!!」
金髪の子どもは自身満々に言うのだが、大人たちは肩をすくめただけでそれ以上話をする気もないようだった。
ふくれ面をして駆け出してきた子どもはゾロにまともにぶつかった。
ゾロはそいつの首根っこを掴まえてぶら下げた。
「なんだお前!! 何しやがる!!」
金髪で巻眉の子どもはわめいて手足をばたばたさせた。
(続く)
この話は年齢制限はありません。
本文は15ページです。うすいのでコピー本です。