いがみ愛
h a p
p y b
i r t h d a
y S A
N J I
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「あァ、やんのか、コラ!!!
このまりもヘッド!!!」
「なんだとこの素敵まゆげが!!!」
「かーーーー、
今日という今日は三枚にオロしてやる!!!」
「上等だ!!!
表へ出ろ、コラァ!!!!」
チョッパーはいつもよりにぎやかな騒ぎに、
汗を流していた。
夕食が終わってしばらくは静かだった。
医学書を読み、
そろそろ寝ようとしていた時に、
二人が騒ぎ出した。
時計を見ると既に11時を回っている。
騒がしいのに、
ルフィとウソップは良い調子で眠りこけている。
「われこそは、キャプテンウソップ・・・。」
「肉・・・肉がぁぁ・・・・」
夢を見ているらしい。
二人ともうるさいくらいだ。
・・・なんで、こんなにうるさいのに眠れるんだよ。
チョッパーはため息をついた。
・・・また、ゾロとサンジがケンカしてる。
毎日、毎日、よるとさわるとケンカ・・・。
なんて恐くて乱暴なヤツらだ。
ゾロも、サンジもオレには親切なのに・・。
なんでかな・・・、
いつもケンカばっかりして、
ののしりあって、
いがみあってる。
なんであんなに仲が悪いんだろ。
仲間なのに・・・。
外ではバキバキという音がしている。
何かが壊れている。確実に・・・。
明日、修理するのは自分たちなのに。
後でナミに怒られるのに・・・。
おそるおそるキッチンの様子を伺うと、
平然とした顔でナミが酒を飲んでいた。
「あら、あんた、眠れないの?
あいつら、うるさいわね。
まあ、いつもなら殴るところだけど、
今日はちょっと二人にサービスよ。」
「なんで?」
チョッパーの問いにナミは笑って言った。
「今日はサンジ君の誕生日だもの。」
え、知らなかった。
サンジはオレの誕生日にお祝いしてくれた。
ケーキを焼いて、
ごちそうを作ってくれた。
それなのに・・・。
自分の時には何もせずに、
何も言わないなんて。
オレだって何かしたかったのに。
「それにしても何てコミュニケーションの下手なヤツらかしら。
呆れるわね。
・・・ああ、静かになったみたい。」
「コミュニケーション?
あれが・・・?
ケンカにしか見えないどつき合いが?
仲・・・悪いんじゃないのか??
「おかしな事だけど、
サンジ君の本当に欲しいものはゾロが持っているのよ。
あんたには分からないわよねえ。
まったく、あいつらの"いがみ愛"にはいい迷惑だわ」
そう言って、ナミは笑った。
言葉とは裏腹の優しい笑顔だった。
チョッパーはナミの言葉は良く分からなかったが、
静かになったので、キッチンを出た。
そこで見たものは・・・、
あ・・・。
嘘・・・だろ。
ゾロとサンジはオスだよな・・・。
だけど・・・、つがいなのか???!!!
オレには分からない二人だけの世界。
・・・・分からないけど・・・。
サンジは沢山の祝福よりも、
ゾロの言葉だけが欲しいんだ。
オトナの世界はよく分からない・・・。
くやしいけれど、
サンジへの「ハッピー・バースディ」は全部ゾロに持ってかれたってことらしい。
「いがみ愛」って奥が深すぎて、
オレにはよく分からないよ。
「ハッピー・バースデイ・サンジ」
小声でささやく。
もちろん二人には声はとどかないけれど。
いつものお礼をこめて。
優しいサンジに。
優しいゾロに。
オレのかけがいのない仲間に、
ハッピー・バースディ。