20151229

生け捕りのみ1億7700万ベリー

 
 ゾロサン


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 表紙


冒頭部分

  麦わらの一味「黒足のサンジ」の手配書はドレスローザで戦った後で変わり、
賞金は突然一億ベリーふえて一億七七〇〇万ベリーになった。
「生け捕りのみ」という条件つきで。
それまでのいたずら描きのような絵ではなく、ちゃんと写真になっていたが、
ハート目で鼻の穴をふくらませた相変わらず誰だか分からないものだった。
ドフラミンゴと戦うほどの実力を持ち、その力は仲間たちに認められ信頼されていたが、
はっきりした活躍もないのに一億ベリーも増えるのはおかしなことだった。
何よりもなぜ生け捕りなのか?
「麦わらのルフィ」は五億ベリーになり、「海賊狩りのゾロ」は一億二〇〇〇万ベリーから三億二〇〇〇万ベリーになった。
それについては誰もが納得した。
ルフィもゾロもますます強くなり、向かう所敵なしと思われていた。
それらの賞金首は生死にかかわらずつけられたものであり、海軍の敵としての金額だった。
ゴッドウソップと呼ばれるようになったウソップも二億ベリーになったが、
ドフラミンゴに一番の額をつけられたほどの存在であったことを考えると納得できた。
だが、サンジの手配書だけ違う。
なぜ、突然、「生け捕りのみ」になったのか。
 
どういうことだ?
バカバカしいいつものハート目の写真を見て、ゾロは胸騒ぎがした。
そういえば、時々、あのアホコックは、ゾロに「おれは本当はプリンスなんだ」とか、
「てめえとは生まれが違うんだ」
とか言っていた。
しかし、さっぱり相手にしていなかった。
アホのたわごとだとしか思ってなかった。
ドレスローザでの戦いの中で、ナミとブルックとチョッパーとモモとサンジは別行動となった。
やつがナミたちを守るはずだ。
大丈夫だ。
マユゲはちゃんといる。
ぐる眉がいるから、大丈夫だ。やつらが殺されるようなヘマはしねェ。

「ゾウ」の背中には喋る動物がいて、都市はほとんど滅んでいた。
ここは動物たちの国だった。ミンク族がルフィたちを案内してくれ、心配した仲間たちは無事だったが、
そこに着いた時、サンジは姿を消していた。
ナミによると、とんでもなく深刻な雰囲気だったという。
ナミが泣くほどだったし、やつが理由もなく仲間を置いていくとは考えられねえ。
「急用ができた。しばらく出かけるけど、ナミさん待っていてね」
というような手紙があったらしい。
何とかなるんじゃねェかと考えるしかない。
ルフィのいう通り、さらわれたわけでもねェし。
でも、何か胸騒ぎがした。
あいつの手配書も「生死にかかわらず」でいいじゃねェか。
それであのぐらいの金額でもいいと思う。
何でだ?
だれがさらうっていうんだ?
 ゾロは眉間にしわをよせて考えこんだ。
・・・納得できねえ。
 
ニコ・ロビンはこの島で配られた雑誌や新聞の記事をていねいに調べていった。
サンジがこの島に来てからいなくなったまでに出たものだけを集めてある。
ナミは誰かと話をしているようだったと言っていたけれど、
サンジならちゃんと確かめてから動いているはずだから、必ず手かがりは残っているはず。
サンジだけ生け捕りになったのには必ずわけがある。
今回の失踪と必ず関係があるはず。
昼の王イヌアラシ侯爵の記事、夜の王ネコマムシの旦那の記事、その他にもいろいろな動物たちの記事がたくさん書かれていた。
その中には王がめずらしいものを買ったとか、見つけたとかいう記事もたくさん出ていた。
「めずらしいメロメロ王国の人間が見つかる」
ロビンさえ見たことのない王国の名前が出ていた。
何かしら、これ?
ハート目でおもしろい顔になる人間?
絶滅したと思われていたが、このたびネコマムシの旦那の部下がノースブルーで見つけ、客人としてこの国に招いた。
悪魔の実を食べてもいないのに、目がハートになるのはおもしろい。
しかし、一見普通の人間である。
本人によると王国の血が薄いため、たまにしか変わらないので普通の人間といって差し支えないらしい。
ロビンはゾロにその記事を見せた。

「・・・・・」
メロメロ王国?
なんだそりゃあ。
「調べたら、ノースブルーの伝説にあるハート目の王国で、王国の男子に、より顕著にその兆候が出るの。
その王国の血を利用したら、男たちに同じ症状を作りだせるという仮説があるようなの」
みんな記事のところに集まってきた。
確認しなくても、サンジがその「王国」の出であるのは間違いなさそうだった。
「えっ、みんなサンジ君と同じようになるの? それはいいわね。お金をもらい放題だわ‼」
ナミは目を輝かせた。
「あれは病気じゃなかったのか・・・」
チョッパーは涙目になっていた。たしかに珍しい血だとは思ったが。
「あれは生まれつきで、しかも移せるのか・・・。ある意味すげえ・・・」
フランキーはしみじみと言った。
「ヨホホホホ、王国の血ですか」
「たぶん。でも、他に何の役にも立たないわ。
賞金をかけた者は、実験したいんだと思うわ。
どのくらいの血を投入すれば、効果があるのか、とか。少しの血でずっとあんな症状なのか、とか。
血でなくても、どこか切り刻んで使っても大丈夫なのかしら。
確かに、ちょっと興味深いわね」
ロビンの目がきらりと光った。
こえー。ロビン、こえー。
チョッパーとウソップはおびえた。
世の中がサンジだらけになったら、女の天下だ。男たちは終わりだ。
「ししし、関係ねェ‼」
ルフィはいつもと変わらなかった。
とにかく、早くサンジが帰って来ないと、メシが困る。
ナミはため息をついた。
今のところ、緊急の事態ではない。誰かがサンジを迎えにいってもいいはずだ。
 



(続く)

姿を消したサンジをゾロが探しにいく話です。


サンジの「生け捕りのみ」手配書から。

(注・本当はぜったいにこんな話ではありません)




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