表紙
冒頭部分
ジェルマ66。別名「戦争屋」。
大昔、北の海を武力で制した一族は絵物語として語り継がれた。
その物語は空想ではなかった。ジェルマ66は本当に存在していた。
ヴィンスモーク家は悪の代名詞だ。無敵で冷酷な悪の部隊。ジェルマは科学の力を最大限に活用した戦闘部隊だ。
その力にビッグマムは目をつけた。
サンジの政略結婚という甘いお菓子は見事に功を奏した。ジェルマ王国のすべてがビッグマムのもとにやってきた。
政略結婚という名の皆殺し作戦は、式の途中でヴィンスモーク家の6人を蜂の巣にするというものだった。
ジェルマのすべてがおれのものになるのさ‼
ビッグマムの作戦は完璧で、ほぼ成功したかに思われた。
しかし、ビッグマムの作戦は失敗した。結婚式の途中で問題が起きた。
麦わらの一味とその協力者たちが反乱を起こしたのだ。彼らはビッグマムの怒りから逃れ、島から生き延びた。
ヴィンスモーク家の一族も、全員が生き延びた。
無事に逃げ切ったルフィやサンジは、ワノ国でゾロたちに再会し、サウザンドサニー号に戻ってきた。
「ししし、待たせたな、みんな‼」
ルフィは散歩にでも行っていたような調子だった。
「ロビンちゃーーーーん、おまたせしました‼ あなたのサンジが帰ってきましたーーーー♡」
サンジはくるくると回り、ロビンの前でひざまづいた。
「ふふふ。お帰りなさい」
ロビンのほほえみに、サンジはメロメロになっていた。
「アウ‼ みんな無事でよかった‼」
フランキーがいつものポーズを決めた。
ウソップも満足げにうなずいていた。ウソップも一度は一味を抜ける覚悟をしたのことがあるので、サンジの喜びはよくわかった。
ルフィたちの元から離れた時に、サンジはもう覚悟を決めていたはずだ。
でも、帰ってきた。
ばかばかしいリアクションを久しぶりに見た。いつものサンジだ。
そこはどうでもいいんだが、サンジ不在の間の料理はひどいものだった。
やっぱりこの船にはサンジがいないとな。みんなそう思っている。
ひねくれ者のこの男でさえ。
ウソップは船の片隅から動かないゾロをちらりと見た。
気になっているのは間違いないのに。意地でも動こうとしない。
このキャプテンウソップの目をごまかそうとしても通じない‼
ゾロ君が、ワノ国で妙にいらついていたのは明白だ。なのに、なんて素直でないんだ‼
ゾロは全く気にしてないわけではなかった。ロビンに対する態度など、まったく変わりがないサンジを見て、安心していた。
何も問題ねえ。
今までと、変わりはねえ。
だから、つい、今までのように言ってしまった。
「ふん。帰ってきやがったか」
ゾロは小声でつぶやいた。小声だったのに、サンジにははっきり聞こえた。
「なんだと、コラぁ‼」
サンジはゾロのほうに振り向いた。
ゾロはいつでもこんな調子だ。
今までなら、憎まれ口をたたいて詰めよって、蹴りをお見舞いするところなのだが、声が出なかった。動けなかった。
久しぶりに見るゾロは、何も変わっていない。
相も変わらず不愛想で無表情。やさしさの欠片すら感じられない。
それなのに、その姿が見れてうれしい。
もう、会うことはないと思っていた。麦わらの一味には戻れないと思っていた。
ゾロもいつもと同じように返そうと思っていた。
しかし、サンジの様子がいつもとは違うことは、何も聞かなくても分かった。
サンジの目には涙が浮かんでいた。
事情は知らねえが、大変なものを乗り越えてきたことは、なんとなく分かった。
二人は無言で見つめあった。
(続く)
無事に再会したあとの話