20140816

恋はいつでもハリケーン

 
 ゾロサン


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 表紙
 




冒頭部分

サンジは新しく着いた島をうきうきと歩いていた。
 麦わらの一味はトラブルだらけで、何も問題なく過ごせることはめったにない。
命がけの戦いも幾度となく切り抜けてきたし、大変な運命の中で生き抜いている人たちにもたくさん出会った。
 海賊である以上、誰にいつ狙われるかも分からないが、
サンジの姿は手配書では妙な顔になっているため、誰にも警戒されずに歩くことができた。
 ここハリケーン島は、このあたりの海域で一番嵐がよく来るという島で、
嵐が近づいてくるとこの海域にいる船がすべて集まるため、嵐の時期が一番にぎわう島だった。
麦わらの一味も、ナミの予測でこの島で今晩来るはずの嵐が過ぎ去るまで過ごすことになっていた。   
どんな船も嵐には勝てない。
この島には海軍もたくさんいて、海賊を捕まえようとしていたし、海賊狩りもたくさんいたし、
逆に大金をもらって海賊の手助けをして稼いでいるものもたくさんいた。
町は迷路のように入り組み、秘密の通路だの秘密の家だのもいくらでもあり、
地元の者でさえ、目標の場所にいけないことがあり、エリアごとに案内人がいるような場所だった。
サンジは市場を歩きながら次々と食材を注文し、船がある場所に運ぶように頼んでいった。
船番としてゾロが残っている。
寝ていたので置いてきたのだ。
荷物のひきとりはゾロがすればいいが、場所を指定してあるので寝ていても大丈夫だ。
ナミの命令で、ゾロがサニー号を離れる時はサンジがついて行くことになっていた。
ゾロが複雑に入り組んだこの島の道を無事に歩けるとは誰も思っていなかった。
嵐で閉じ込められた島の中をゾロが歩きまわったら目立つことこの上ない。
ルフィには不本意ながらナミがつくことにして、この島でのゾロの面倒はサンジに任せられていた。
さっさと買い物をすませ、船で待機しているゾロのもとに戻らないといけない。
ナミさんは、おれとゾロのために宿代までくれた。
すべて分かっているという笑顔を浮かべて。
な、何が分かっているのか?
サンジはすこしどきどきした。
ナミさんは、最高に美人でかわいいのだ。
この島のレディたちも、かわいいレディだらけで、ここでは恋のハリケーンがすでに吹き荒れているのだ。
どの店の店員もすごくかわいい。
「もうすぐ嵐が来るけど、おれの心にはもう恋のハリケーンが吹き荒れているのさーーーー♡」
サンジがくるくる回り、ハートをとばしまくると、店の女たちはくすくす笑った。
「なんか、おもしろいお客さんね」
海軍もそのへんにいたが、ハートをとばす変な男をちらりと見ただけで気にもとめなかった。
「おれは、コックなんだよーーー♡ 
時間があったら、君たちにおれの料理を食べてもらいたいなーーー♡」
「じゃあ、これも買ってね。安くしとくから」
「買う♡」
相場の倍の値段をふっかけられても、ハートを飛ばし、
金を払っている金髪の男はどうみても取り締まるような相手ではない。
「じゃあ、私の店のこれも買ってくれないかしら? 
いたみかけて困っているの。買ってくれたらお客さんのこと好きになってしまうかも」
「買います♡」
サンジはくるくる回ってからひざまずくと女店員の手をとった。
「ああ、今日という日の出会いを忘れません。
恋の嵐がひとあし先にやってきたのです。
貴女に出会えた幸せをおれは噛みしめています」
 サンジに手をとられて笑っていた女店員の顔が突然青ざめた。
「おい、エロコック、その腐りかけを誰に食わす気だ?」
緑の髪に、腰にさした三本の刀。
手配書と違い目は隻眼だが、その迫力でただ者でないとすぐに分かった。
「あ・・・やっぱり・・・いいです」
扱いやすい客をだまそうとしていた女店員はおびえて逃げて行った。
「あっ・・・おじょうさーーーん、傷んだ食材はこいつらが食うから大丈夫さあーーー‼」
サンジはあわてて声をかけた。
逃げた店員はもちろんどこにも見当たらず、サンジをカモろうとしていた女たちもすべて消えていた。
 そこに残っているのは、こわもての剣士がいても食い物を気にせずに売れるむさくるしい男ばかりだった。
「いやあ、あんた、その金髪コックの仲間かい? 
その兄さん、女たちのいいカモだったよ。
相場の倍で買ってやったりしてな」
「兄ちゃん、強そうだな。おかげでバカな女たちは逃げていったな」
地面に突っ伏して、がっくりしているサンジを誰もが気の毒なものを見る目で見ていた。
「レディがいなくなった・・・」
サンジはぶつぶつつぶやいていた。
「おい・・・てめえ・・・なんで・・・邪魔しやがった。
レディの望みを叶えるのが、男の役目だというのに・・・」
「あァ? ふざけるな。
てめえが騙されてたから、親切に助けてやったんじゃねえか。
それに、傷んだ食い物を食わされるのはおれたちだろうが」
お互いににらみ合いながら、おでこがくっつかんばかりに近寄る二人を見ていた男たちはざわめきはじめた。
「おい、あれは、魔獣ゾロじゃねえか? 
麦わらの一味で一億二千万ベリーの・・・」
「ゾロだ・・・」
「麦わらの一味だ・・・」
金髪の男にはノーマークだった海軍たちは、ざわざわする様子にあわてて近寄った。
「ロロノア・ゾロだ‼」
「逮捕する‼」
雑魚のかたまりだと見てとったゾロは、刀を一振りしようとした。
「騒ぎを起こすんじゃねえ、クソまりも‼」
サンジはゾロの腕を掴むと、せまい路地裏に走りこんだ。
 追いかけてくる海軍を巻きながら、できるだけものを壊さないようにして逃げた。
 しばらくどこがどこだか分からな場所を走り続けた。

 
(続く)






ゾロは最近貫禄が出てきてすでに熟年夫婦っぽくなっているような。
ゾロサンはきっとずっとこんな調子かなあと思ってます。





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