未来から来た記憶
R18
ザンスク
A5コピー本 P16 100円
(SAMPLE・冒頭抜粋)
...............................................................................................................
ボンゴレ十代目の継承式は日本で執り行われることとなり、名のあるマフィアたちは継承式の会場に集結した。
そうそうたる顔ぶれが揃った中、家宝である「ホンゴレの罪」が奪われ、継承式は中止となった。
敵であるシモンファミリーと戦うために、沢田綱吉とその守護者たちは、島に向かった。
残されたのは、ボンゴレ九代目とその守護者たち。まだ九代目直属の暗殺部隊であるヴァリアーも、そのまま待機を余儀無くされていた。
といっても、敵がいるわけでもなく、退屈な日々が続いていた。
「ししし、ここの寿司はやっぱりうまい。王子、毎日来ようかな」
私服のベルフェゴールが、出された寿司をつまんだ。
「そうだね。竹寿司が一番だね」
マーモンもちょこんと椅子に腰かけて、もみじのような手で寿司をつまんだ。
「ありがとよ。坊主たち」
おやじはいつものようにふるまっているが、元気がない。
山本武が何者かに倒されてからもう一週間がたつ。
それから意識不明の重体のまま昏睡状態が続いている。運良く命をとりとめても、以前のような生活はもう無理と診断されている。
マーモンは、黙って寿司を握り続けるおやじをちらりと見た。
ベルは肩をすくめた。
よりによってやられたのが山本武だとは。
スクアーロは今日も病院に様子を見に行ってるはずだ。
「病院には跳ね馬も行ってるはずだよ」
マーモンが山本のおやじには聞こえないように小声でささやいた。
「・・・それって、スクアーロがいるからだろ」
ベルは返事をしてから、寿司屋の入り口に立つ黒い影を見て固まった。
黒い髪、赤い目、いつもの飾りのエクステ・・・。
まじ、ボス?
我慢できなくなって来たわけ?
てか、ちょー不機嫌じゃん。
・・・王子、知らね。
「ししし。ボス、久しぶり。寿司食いなよ」
ベルは知らぬ存ぜぬで行くと決めて、ザンザスに寿司を進めた。
ザンザスは寿司屋の中の様子をじろりと見ただけで、無言のままだ。
「ルッスーリアは買い物、レヴィはボスへの土産さがし、スクアーロは、多分山本武の病院だよ」
マーモンはふわりと浮かんだ。
「ちょうど寿司も食べたところだし、ボスだから特別に案内してあげていいよ」
むっつりしたままでマーモンについていくザンザスを見て、ベルもあわてて立ち上がった。
ししし。やっぱり、スクアーロか。
おもしろそうだから、王子も見に行ったほうがよくね?
「報告しろ」
ザンザスはそれだけを言うと、むっつりして押し黙ったままだった。
「シモンファミリーと沢田綱吉たちの戦いの詳細は分からない。ただの逆恨みではなく、何か裏がありそうだよ」
マーモンは、間を置いてから、細かい説明を始めた。
「九代目は、都心のホテルにこもったままで、スクアーロが時々連絡に行っている。ボクも一度ついて行ったけど、お茶菓子の一つも出ないし、まったく金にもならないね」
「ししし。ボス、次はやっぱり、守護者もみな殺しの方向で行こう」
「ベル、君の快楽にはつき合ってられないね」
ベルが口をはさんでも、ザンザスは何も言わなかった。マーモンはため息をついた。
「スクアーロは毎日、山本武の病室を見に行って、大声で怒鳴って、病院を追い出されている。病室には、跳ね馬もたまに来ているみたいだよ」
ベルはマーモンをちらりと見た。
跳ね馬ディーノは、山本武の病院に足繁く通い、うるさいので追い出されるスクアーロとともに病院を出る。
どうみても待ち伏せなのに、スクアーロはさっぱり気づいていない。
ベルとマーモンは黙認する変わりに、ごちそうを食べさせてもらう。
ディーノは、ベルに手頃な殺し屋情報をくれるし、マーモンには金儲けのネタを教えてくれる。だから、スクアーロに接近しても黙認してやっているのだ。
しかし、ボスが来てしまった以上、そうもいかない。
大嫌いな九代目のために来たのではなく、どうみてもヴァリアーのアジトで一人でいるのが嫌になったので来たのだ。
マーモンはいつものように宙をさまよいながら考えた。
ボスはスクアーロの様子が気になって来たんだろうけど、そんなことを言うと、かっ消されるだろうから、黙っておくことにするよ。
ボスにはこれからもたくさん金をもらわないといけないからね。
...........................................................................................................
仮タイトルは十年後の十年前でした。
継承式編設定のボス24とスク22の話。