再び出会えぬ愛しき君に
 
 
 

シャンクス・サンジ
 
 
 
 
 

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シャンクスの目にはおさなかった子供の姿が蘇る。
背こそ伸びたものの、
顔つきはあまり変わっていない。
男はサンジのアゴに手をかけた。
「・・・何・・・すりゃいいんだよ」
サンジは吐きすてるように言った。

・・・オイ、
またえらいとこにきちまったな。
シャンクスは眉をひそめた。
さあ・・・どうしたもんか。
思案していると、
店の方から足音が聞こえてきた。
「こら、クソサンジ!!!
いつまでさぼってやがる!!!」
恐らくコック仲間なのだろう。
いかつい影が木の床に映る。

「・・・あっ、オイ・・・」
一瞬の隙をついて、
サンジはその場から駆け出した。
走り去っていく後ろ姿は、
まだ大人でもなく、
もう子供でもない。

シャンクスはじっとその後ろ姿を見つめていたが、
やがてバラティエの入り口に向かって歩き始めた。
 
 
 
 
 

店の方で何かざわめく気配がした。
サンジはフライパンを揺する手を止め、
ちらりとそちらに目をやった。
「オイ、赤髪のシャンクスだとよ!!!」
「海賊団の一味がいきなり店を占領しやがって、
ヒビったぜ!!」
「さすが、オーナーゼフ。
客も大物だ」

・・・シャンクス。

忘れるはずはない。
忘れられるはずもない。
夢を・・・。
アイツは・・・。
夢を思いださせる。

サンジは黙々と料理をした。
いつものように美女を探しに店にも出ず、
厨房でへらず口をたたくこともない。

夢が。
忘れていた夢が。
忘れようとしていた夢が。
あの男は蘇らせる。

だが、
オレにはやることがある。
このバラティエで。
ここですべきことがある。

だから、
夢なんか惜しくねえ。
どってことねえんだ。
 
 
 
 
 
 

シャンクスは厨房の出口に腰を下ろして酒を飲んでいた。
・・・あーーー、おせえな。
もうほとんど帰ったろ、コックは。

待ちくたびれた頃、
やっと目当ての相手があらわれた。

「待ちくたびれたぜ」
サンジは以前と少しも変わらぬシャンクスの姿を見た。
夢の国からきたような海賊。
なぜ、夢見て無い今も同じように目にうつるのか。

「べつにオレは待ってねえ」
相変わらずのひねくれた台詞だ。
シャンクスはおかしくなって笑った。
細い体にすっきりした黒いスーツ。
ガキのくせにくわえタバコ。
きつい瞳。

まあ、悪かねえ。
 
 
 
 
 
 

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厨房裏