再び出会えぬ愛しき君に
シャンクス・サンジ
2
シャンクスの目にはおさなかった子供の姿が蘇る。
背こそ伸びたものの、
顔つきはあまり変わっていない。
男はサンジのアゴに手をかけた。
「・・・何・・・すりゃいいんだよ」
サンジは吐きすてるように言った。
・・・オイ、
またえらいとこにきちまったな。
シャンクスは眉をひそめた。
さあ・・・どうしたもんか。
思案していると、
店の方から足音が聞こえてきた。
「こら、クソサンジ!!!
いつまでさぼってやがる!!!」
恐らくコック仲間なのだろう。
いかつい影が木の床に映る。
「・・・あっ、オイ・・・」
一瞬の隙をついて、
サンジはその場から駆け出した。
走り去っていく後ろ姿は、
まだ大人でもなく、
もう子供でもない。
シャンクスはじっとその後ろ姿を見つめていたが、
やがてバラティエの入り口に向かって歩き始めた。
店の方で何かざわめく気配がした。
サンジはフライパンを揺する手を止め、
ちらりとそちらに目をやった。
「オイ、赤髪のシャンクスだとよ!!!」
「海賊団の一味がいきなり店を占領しやがって、
ヒビったぜ!!」
「さすが、オーナーゼフ。
客も大物だ」
・・・シャンクス。
忘れるはずはない。
忘れられるはずもない。
夢を・・・。
アイツは・・・。
夢を思いださせる。
サンジは黙々と料理をした。
いつものように美女を探しに店にも出ず、
厨房でへらず口をたたくこともない。
夢が。
忘れていた夢が。
忘れようとしていた夢が。
あの男は蘇らせる。
だが、
オレにはやることがある。
このバラティエで。
ここですべきことがある。
だから、
夢なんか惜しくねえ。
どってことねえんだ。
シャンクスは厨房の出口に腰を下ろして酒を飲んでいた。
・・・あーーー、おせえな。
もうほとんど帰ったろ、コックは。
待ちくたびれた頃、
やっと目当ての相手があらわれた。
「待ちくたびれたぜ」
サンジは以前と少しも変わらぬシャンクスの姿を見た。
夢の国からきたような海賊。
なぜ、夢見て無い今も同じように目にうつるのか。
「べつにオレは待ってねえ」
相変わらずのひねくれた台詞だ。
シャンクスはおかしくなって笑った。
細い体にすっきりした黒いスーツ。
ガキのくせにくわえタバコ。
きつい瞳。
まあ、悪かねえ。