再び出会えぬ愛しき君に
 
 
 

シャンクス・サンジ
 
 
 
 
 

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窓の外には激しい雨が降っている。
嵐になるな。
シャンクスはベッドに仰向けに寝て、
タバコに火をつけた。
上等のタバコは少ししめっている。
・・・うまいもんじゃねえな。
ガキには向かねえ。

・・・来るかな。

シャンクスはサンジの表情を思い浮かべる。
そんなに大人になりたいのか。
自分の身を削ってまでも。

あの金持ちの男の事は一言も言わなかったサンジ。
バカだな。
大人ってのはキタナイもんなんだ。
自分の欲望のためにはどんな詭弁もいとわない。
平気で嘘をつき、
それが嘘だということにすら、
いつか気付かなくなり、
なにも考えずに、
ただ生きる。

ただ生きることを大事にするあまり、
大切なものを無くしても気付かない。
そのうちに大切なものが何かも分からなくなって、
日々の生にしがみつき、
それが全てとなる。
つまんねえなあ、
そんな生き方。

もうすぐ嵐が来る。
ほとんどの奴は波にのまれて流されちまう。
流されていくうちに、
輝きは消えちまう。
心の輝きが。

心が光ってるヤツは少ない。
オレはそういうヤツが好きだ。
それは大人だとか、
子供だとか、
男だとか、
女だとか、
そんなものは何一つ関係がない。
ただ生きざま一つだ。

ルフィもそうだった。
砂浜に置いてきた子供。
あいつは大丈夫だ。
どんなに離れても、
ちゃんと自分の足で歩いていけるヤツだから。
 
 

遠くの方で風の音がしている。
軋むドアの音が聞こえる。
・・・ああ、来たのか。

ゆっくりとドアが開かれ、
ずぶ濡れのサンジが立っているのが見えた。
濡れた前髪で表情は見えない。

サンジにも分かっているはずだ。
ここに来ることの意味くらい。

・・・バカだな。
本当に・・・。
バカな子だ。

「オトナ」にそんなになりたいなんて。
「コドモ」でそんなにいたくないなんて。
 
 
 
 
 
 

「来いよ。
それとも、恐いのか?」
 
 
 
 

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厨房裏