*4*
おそらくこの船には誰もいないのだ。
人の気配はいつもまったくない。
気配を感じた時は、ギンが来る。
オレにはただ待っている。
いつからか、抵抗を止めた。
抵抗を止めたら、カラダの痛みは減っていく。
オレはぼんやりと待つ。
ドアが開いてギンが入ってくる。
恐怖。
だけどオレはこいつを待っていた。
安堵。
カラダはこいつを知っている。
「サンジさん。いいコになったな」
従順なサンジの顎をとり、ギンはまじまじと眺めた。
オレのものに、なった。
この人はオレのものに、なった。
コレハサンジサンナノカ?
男娼のような仕種。
無意識の媚び。
また凶悪な気分になる。
「サンジさん、アンタの仲間たちがアンタを探してるらしいぜ」
微かに反応をしめす視線。
「そろそろ、ここを出たいらしいぜ」
置いていかれる・・・
サンジのカラダが強ばる。
「はははは」
ギンは狂ったように笑い出した。
「オレは知ってる。あんたは、いつもあの剣士を見てた」
言葉も返せないサンジを見ていると、さらに残酷な気分になる。
「あいつをココに連れてこようか?」
違う。
オレはゾロとはそんなんじゃない。
あいつは「夢」を持ってるから。
あいつは「夢」に向かって生きているから。
だから、オレはあいつを見てしまう。
あいつの生きざまを。
ギン、違う。
サンジのココロの声は、ギンには届かない。
嫉妬。
憎悪。
ギンのカラダを占める感情。
「本当のことをいいなよ、あんたの好きなのは誰だ?」
サンジは返事をしない。
「誰だ?」
もう一度尋ねられ、身が竦む。
「可愛いな、サンジさん。震えてんのか」
「ギン、いいコにするから・・・」
言い終わらない内に、頬を張られてサンジは床に倒れた。
ココロよりも、カラダは従順だ。
簡単にギンに貫かれ、サンジは喘いだ。
ギンの、機嫌が悪い時は・・・嫌だ。
憎しみまで自分の中に染み込んでくる様で。
ギンは苦しみを吐きだしたがってる。
オレの中に。
ギンの憎しみで一杯になる。
愛情より、快楽より、憎悪に満ちたセックス。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
助けてくれ、オレを。
助けてくれ、ギンを。
サンジさん、オレが悪かった。
オレは間違ったことをしてる。
サンジさんの涙。
あんたを泣かせるなんて。
でも、オレは引き返せねえ。
どのツラ下げて、元通りにできる?
あんたを失ったら、オレは生きていけねえ。
オレはアンタから笑顔を奪った。
表情を奪った。
アンタのカラダの代償。
なんて、たけえ代償。
太陽みたいだったアンタの笑顔。
思い出しても、ココロが暖かくなる。
オレが変えた。
月の光のように、冷たい魔性のカラダに。
オレはこのカラダに夢中だ。
仕事がなければ、この部屋から一歩も外へ出たく無い。
ずっと、手にしていたい。
一つになってしまえたら、この苦しみもなくなる。
だけど、いくらアンタの中に入れても、入れても、足りねえ。
手にしてる瞬間だけは、この上なく、キモチいい。
カラダが離れた瞬間からオレの苦しみが始まる。
助けてくれ。
どうして、こうなった。
サンジさん、アンタを鎖でつないでしまえば、オレのものになると思ったのに。
アンタはオレのものにはならねえ。
前のアンタはここには、いねえ。
オレが、壊した。
怯えて、聞き分けのよい猫のようになってる。
素直に舌を出し、尻を出す。
哀れさを感じるくらい一生懸命オレのことを我慢して耐えてる。
アンタには悪気はない。
だが、前よりもっとオレを狂わす。
その肢体で。
その目で。
可哀相なサンジさん。
愛しいサンジさん。
オレはいつかアンタを殺してしまう。
確信に近い思い。
アンタは、頑張ってる。
だが、少しずつ痩せ、少しずつ気力が衰えている。
アンタを解放してやりたい。
笑わせてやりたい。
オレもあんたも不幸だ。
オレは幸せになりたかっただけなのに。
アンタがそばにいれば、幸福になれるとおもった。
なぜなれない。
前よりも不幸なのは何故だ。
オレに残された道は、何だ。
「ゾロ」に嫉妬するギンてとこで。
暇で根性のある人だけ5に進みましょう。
5で終わりです。