久しぶりの街。
サンジは食料の買い出しをせっせとしていた。
ええと・・・あと、缶詰めもいるし。
今日はめずらしくゾロが荷物持ちだ。
いつも知らんふりなのに何故かついてきた。
てっきりルフィとでもどこか行くかと思ったのに。
「オイ、まだ買うのか?」
ゾロはうんざりしながらサンジの買うものを片っ端から持っていく。
「あっ、あれ、めずらしい!!」
サンジは変わった食材を見つけるとそこに突っ走っていく。
夢中で食材を手にしている。
・・・。
全く何が面白いんだか。
まあ、サンジが楽しそうなのはいいが・・・。
あのオヤジ、えらく側に寄りやがって。
ひっつきすぎなんだよ。
サンジもサンジだ。
感じろよって・・・。
接近しすぎてるだろ、そいつがよ。
ゾロは段々イライラしてきた。
面白くねえ。
少し離れたところで待っていたが、辛抱できなくなる。
「オイ、さっさと買え!!」
「あァ? まだ選んでんだよ」
そう言うとまたオヤジと再び急接近するサンジ。
ムカツク。
ムカツク。
ブチッ。
どこかの血管が切れた。
ゾロはサンジを抱き込む様にして歩き出した。
「オイ・・・てめ・・・何しやが・・・」
サンジの抗議を無視してどんどん歩く。
感情のままにやみくもに歩く。
気づくとかなり街のはずれまで来ているようだ。
何だ・・・ドコだ。
ここは。
・・・・・・迷った・・・。
「てめ・・・ココどこだよ!!」
腕の中のサンジが暴れる。
「うるせーな。買ったもんが持てねえだろが!」
そう言うとサンジは大人しくなった。
だが頬は不満そうにふくらましたままだ。
可愛いじゃねえか。
「なあ、テメエに何か買ってやるよ」
ゾロがそう言うとサンジは疑り深そうな顔をした。
ゾロのヤツ、何言い出してんのか・・・?
どういう風の吹き回し・・・?
って本当に雨でも降りそうな天気になってきたけど。
「なら、さっきのやつ買ってくれ」
返事をするサンジ。
ゾロの表情が固まる。
???
サンジには訳がわからない。
「なら、酒!!酒にするか?てめーも飲めるし」
「・・・」
「んじゃ、新鮮な果物は?」
ゾロは食べ物を連発するサンジにとまどう。
そういうのじゃ、なくって。
ふと見上げると近くに貴金属の店を見つけた。
サンジを引きずるようにして店に入る。
「いらっしゃいませ・・・何に・・・」
店員がいいおわらない内に、ゾロが言う。
「コイツに合うの一つくれ」
「は?」
サンジは急な展開に驚く。
何・・・。
コレ。
どういうことだ?
店員が指輪だのブレスレットだのネックレスだのを持ってくる。
「お客さまには金がお似合いで。宝石なら青いものが・・・」
無理矢理首や手首に巻かれる。
サンジは状況が飲み込めずされるがままになっているうちにゾロが一つ金の鎖を買った。
そんなに派手ではないが、安くもない。
「毎度・・・」
店を出た時は曇り空からぽつりぽつりと雨が落ちはじめていた。
金の鎖はサンジの手首に巻かれたまま。
何だよ。
コレ。
どういうこと?
サンジが訳がわからずにいるとゾロが背中を向けたままで言った。
「オレには、テメエの欲しいものが分からねえから、それやる」
サンジは大きく目を開く。
刀一本買える値段の鎖。
これって・・・。
自惚れてもいいのか?
「ゾロ・・・てめえ、オレのこと好き?」
ずっと聞きたくて聞けなかったこと。
いつも不安で。
ゾロが振り返る。
呆れたような顔をして。
「オレは遊びで誰かを抱いたりしねえ!!アホか!!」
アホ呼ばわりされてサンジはムッとする。
「アホじゃねえ!!てめえ、いつもルフィといい感じだろ!!」
「それを言うなら、サンジ、テメエこそ!!」
「アホか!!オレはルフィとエロい事なんかしねえぞ!!」
「オレもだ!!オレはテメエだけだ!!」
大声で言うゾロにサンジの顔が赤くなる。
オレ達、何・・・言ってンだ?
ええと・・・。
ゾロ、今、何て?
サンジの様子が変わったのを見てゾロも我に返る。
クソ、なんでコイツはアホなんだ。
「とにかく、テメエにそれやる!!!!!」
そう言った後で、ちょっと不安になる。
「いらねえのか?」
サンジは泣きそうな顔をしている。
「しょうがねえだろ。オレは人に物なんてやったことねえんだ!!」
ゾロのアホ。
何でこんなもんよこす。
金の鎖。
コレはオレの本当に欲しいものじゃねえ。
だけど。
オレにくれた。
オレだけに。
嬉しい・・・。
嬉しい・・・。
「・・・ありがとよ・・・」
小声で礼を言う。
なんかすっげえ嬉しくて、恥ずかしい。
「オイ・・・泣いてんのか?」
「うるせえ。雨だよ、雨」
サンジの言葉にゾロは笑った。
まったく可愛げがねえことで。
でもそこが可愛いんだけど。
「帰るぞ」
そう言ってサンジを抱きしめる。
「ああ、オレはお返しなんていらねえぞ。その代わりテメエを好きに抱かせてもらう」
ゾロの言葉にサンジは赤面する。
・・なに、コイツ、エロオヤジみたいなことを・・・。
恥ずかしいじゃねえか。
コイツに振り向いて欲しくて、ぐるぐるしてたオレってアホかも・・・。
雨の中ゴーイングメリー号に向かう。
冷てえ。
だけど、濡れてもかまわねえ。
ゾロに暖めてもらうから。
表に置いてもいいくらいの話です。
なんか、激しく甘甘で終わる・・・。