tabaco

ジェニー★様


 
 

 

ふう…。
 
 

何やってやがるんだ。あいつは。
もう寝ちまえよ…ったらまだ、楽だろうが…。

 

 

「うっせぇんだよ」

「…何も言ってねぇだろが」

「今、ため息ついたろうがっ! 耳障りなんだよ!!」

 

…機嫌が悪い。何話しかけても、何やっても、けんか腰だ。
ナミが話しかけても、…口調こそ丁寧だが、イライラした空気がピリピリと伝わってくる。

誰もいない、部屋。
触らぬ神にたたり無し。とばかりに、今日は、てんでバラバラに各自が寝る場所を確保している。
めんどくさい。という理由で残ったが、失敗だったかもしれない…。

 

理由。――――煙草がない。

 

 

 

朝食の準備中。
いつものように慌しく…、料理をねだる連中をかわしつつ、順調に作っていた。
酒……料理に使おう。と思って、持っていたのだろうか?
忙しさも手伝って、料理をねだっていた奴に、不意にぶつかる。

…その衝撃で、手元から離れる酒瓶。
硝子の割れる音。――――…あいつの叫び声。

飛んだ酒瓶の行き先は、サンジが蓄えてあった煙草の上。
硝子まじりで、酒びたしの…煙草。
 

…あいにく、近くに島がみあたらない。煙草を買うことも出来ない…。

 

 

 

煙草を抜いて、はや18時間弱。
どうしようもない、しょうがない。そう思ってはいるようだが、どうにもならないらしい。

…煙草を吸わない俺には、さっぱりわからないが。

 

 

 

「…お前、いい加減にしとけ。…寝ろ」

「はっ。お前みたいにいつでも寝れるような奴と、一緒にすんじゃねぇよ」

絡まる視線が、痛いほど鋭い。飢えた野獣のような、澄んだ蒼。
その野生に忠実な視線は、静かに

…忘れていた本能を呼び覚ます。
 

力任せに手首を引っ張り、甲に唇を落とす。

「ぐっすり眠れるようにしてやろうか?姫さま?」
びくっと、手を引っ込めようとするのを遮って、意地悪く囁く。

「…てめぇじゃ、役不足だ」
「役不足かどうか、てめぇで確かめな」
 

体重を預けて、ソファーに向かって、派手に音を立てて軋ませながら、サンジを押し倒す。
そして、あいつの素肌に、指先を這わせる。

「そんな気分じゃねぇんだよっ!!」
暴れる腕を押さえつけ、足を挟み込む。

しかし、押さえそこなった腕が、顔面にぶつかる。

「つっ…!!」
「あっ…、わり……」

さほど痛くはない。
こいつの腕力なんて知れている。
 

しかし、初めてかもしれない。
いくら、抵抗しようとも、分は弁えていた。
――――俺を、力任せに押し返すことはあっても…。
――――日常、けんかしようとも…。

……相手を慮れない事など、一度もなかったのに。

何かが音を立てて壊れていくのを感じた。

 

「抵抗するなら、しろよ。…その方が燃える――」

「なに…言って……?」

サンジの黒いズボンのジッパーを、勢いよく引き下ろす。
「おいっ…!?」
サンジ自身を口に含み、口腔を唾液で満たし、舌先を激しく這わせながら、吸い上げる。
わざと、濡れた音を響かせながら。

「…うっ……ぅあ……」
その綺麗な蒼い瞳をきつく閉じて、震える唇から、甘い声が漏れる。

「抵抗は、しないのか?」

「ああっ……っ!」
サンジを口に含んだまま話すと、舌先の動きがさらに淫らになる。
それが、更なる快感を呼び起こす。

…全て承知の上の、行為。

サンジが震える身体もそのままに、腰を浮かせて、身を捩り始める。
浮いた腰を掴んで、人さし指を1本差し込んで、身体を開いてやる。

「うっ…、あっ…っ!!」
「力抜けよ。…きつい」

「無、…理に、決ま…って……っ!」
「…まだ、口きけるんだな…」
息も絶え絶えなサンジの中に、指を容赦なく攻め入らせる。
指の数を増やして、何度も貫く。

淫らに、

不規則に

蠢かせて…。

「や、……めっ……」
「やめて欲しいんなら、抵抗すればいい…さっきみたいにな」

もう片方の手で、今にも絶頂を迎えそうなそれを、根元できつく締め付けながら、
くびれのあたりに舌を這わせる。

「どうする?」
サンジの一番感じる所を、指で刺激する。
「あ――…ぅっ…!!」

「どうして欲しい??」

堅く瞳は閉ざされ、ただ、首を横に振るばかり。
時折、薄っすらと瞳を開いて…何か、訴えたそうな表情はするが、溢れ出る快感に、
いとも簡単にかき消される。

ふと、今までソファーの端を、力の限り掴んでいたサンジの腕が、宙を舞う。
俺の服と素肌の間に分け入って、強く、引き寄せられた。

合図―――…。
 

「んああっ―――っ……」

身体を深く沈める。

気を抜けば、こちらが力が抜けて、何もかもから、落ちてしまうような錯覚に陥る。
甘い声が漏れるたびに、そこの締め付けは激しく、
小刻みに震えるたびに、微妙な疼きをもたらす。

 

 

「なあ、…今、…何考えて…る…?」

柔らかな髪を、額に貼り付けて、白く透けてしまいそうな喉元を、仰け反らしている。
背中に廻された指先は、爪が白くなるほど、きつくしがみつく。

俺の問いに返された答えは、
響く熱い吐息と、
掠れた甘い声。

「煙草…、だけじゃ…ない…んだぜ…?」
……お前を、こんなに乱すことができるのは

煙草に振り回されるお前。

…俺より、煙草に振り回されるお前―――…。

そんなものにあたるのか?…と人は笑うかもしれない。

だが、そんな物だからこそ、譲れない。
そんな物の為に、俺が差し置かれるのは、許せない。

こいつはどんな時も、俺で、溺れていなければ、気が済まない。
――――…俺が、こいつに……。

 

「ふぁっ――あああっ…!!」
「くっ―――…!」

目の前が白く弾ける。
頭の芯が痺れる。

背中にしがみついていた、サンジの指先から、力が抜け、
重力に引かれて、だらしなく…しな垂れ落ちる。

何も、考える余裕などなくなって、
そのまま、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――つっ!!」

身体を捩った瞬間、鋭い痛みが全身を駆け抜けたので、目が覚めた。

身体中、見える範囲で見渡したが、いっこうに傷などない。
縫い合わせた、戦いの痛手は…腐るほど見つけられても。
 

…背中だ。
 

今は、隣でまだ意識を手離している奴が、
先程まで、必死で掴んでいた事を思い出す。
 

…小さな抵抗の痕。

不意に口元が笑ほころびはじめる。

 

『…背中の傷は剣士の―――――…。』

 

 

お前だけだがな。
俺に…こんな事できるのは……。

俺が、背中に傷をつけられても気が付かないほどに、
…いつでも付き纏う、『剣豪』という殻を引き剥がすほどに、
俺の意識を支配できる奴は…。

 

「……俺の方が、ヤバイかもな…」
 
 
 

『眠れない』 と、のたまわっていた奴は、安らかな寝息を立てている。

……煙草の事など、なかったかのような、穏やかな表情で安らかに眠っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌、早朝。
 

島発見の第一報が、ゴーイングメリー号の中を、けたたましく駆け巡る。
 

 

 

そしてまた…、新たな1日が始まる――――…。

 

 

END

 
 
 

2000.10・30UP 
QUARTER DOLL ジェニー★


1111をふんでいただきました。
1111(ゾロ番)ふめただけで調子に乗った私。
リクは「魔獣ゾロ」
書きにくいリクで申し訳ありませんでした。

魔獣だけどサンジには甘くてやさしいゾロ。
もう惚れるしかない。
ゾロもうサンジに骨抜き。
ニヤケた顔がもう戻りません。
(>_<)
 
 

ura-top