HAPPY
HAPPY
VALENTINE
2
 

ruffy☆sanji
 
 
 

2月14日。
サンジはいつものように早起きをする。
コックの朝は早い。

夕べは遅くまでチョコを作っちまった。
最初はハート型の基本的なやつから、
凝った形のものまで。
調子に乗って、
冷蔵庫いっぱい作っちまった。
まあ、一部はデザートにして出してもいいし。

もうちょうどいいくらいに冷えているだろう。
そう思って冷蔵庫を開けた。

・・・。
ねえ。
からっぽの冷蔵庫には何も入っていない。

・・・誰だ・・・。
こんなことする奴は・・・。

一番に浮かんだ顔は・・・。
麦わらの船長。

・・・クソゴムか・・・?

サンジは男部屋のドアを蹴って、
荒々しく部屋に乗り込んだ。

何ごとかと跳ね起きるウソップとチョッパー。
ゾロはそれでもよく寝ている。

・・・いねえ。
ルフィがいねえ。
どこだ?

サンジは犯人を確信しつつルフィを探した。
あいつの行きそうなところは・・・。

いた・・・。
ナミのみかん畑の間でルフィは寝ていた。
口の周りにはチョコレートがいっぱいついている。
ルフィの腹は物凄くふくれている。
あんなに大量にあったチョコをひとりで食ったのか・・・。
手には食べ残しの汚いチョコレートを握りしめている。
体温で溶けてかなりどろどろしているようだ。

今までにも食材が「減る」ということはよくあった。
だが、今度は「全部」食ったのだ。

・・・許せん。
いくら何でもこれは・・・。

「この、クソゴム!!!!」
寝ているがお構いなしに、蹴る。

「いてぇ」
ルフィは起きると同時に壁にたたきつけられていた。

「てめえは、メシ抜きだ!!!!」

サンジはそう言って、キッチンに戻った。
もうチョコは全部使いきってしまった。
もう、ナミさんやビビちゃんに渡せねえし、
見せられねえ・・・。
がくりとして、ため息をついた。

あーあ。

ナミやビビはいつも通りだ。
「ナミさーーーん。
バレンタインですよね。今日。
それがチョコをクソゴムが食っちまいまして・・・」

ナミはちょっと驚いたような顔をしてから、にっこりと微笑んだ。
「いいのよ、サンジ君。
最初からアナタにあげる気ないから」

どーーーーーん。
あっ、
今、めまいが・・・。
ナミさん・・・、今、なんて・・・。
・・・幻聴だ。
そうだ、強がって言っているに違いねえ。

急にテンションの落ちたサンジをウソップが気の毒そうに見ていた。
 
 
 
 

結局、ルフィはその日一日メシ抜きにされていた。
おまけに倉庫に閉じ込められている。
閉じ込めたのは勿論サンジだ。
倉庫は薄暗く時間もよく分からない。
絶対に10日ぐらいたってる。
ルフィはそう思っていた。
実際にはまだその日の夜なのだが。

「ちぇーーーー。
メシ食いたいなあ」
ルフィは小声で呟いた。
腹がへっている。
とてつもなく。
グーグーいってるし。
もう、その辺の木でも食えそうな気がする。
紙もうまいかも。
噛むだけでも噛むか。

「ハラへったーーーー。
ハラへったーーー。
ハラへったーーー。
ハラへりすぎて死ぬ」
呪文のように言いつづけるルフィ。
サンジは部屋の外に漏れつづける声に我慢ができなくなった。

「うるせえぞ!!しずかにしろ!!」
中のルフィを見ると、だらりと床に転がっている。

・・・う。
しょうがねえだろ。
つまみ食いするてめえが悪いんだ。

いつになく力のないルフィの様子に少し驚く。
それから、ルフィがあのどろどろのチョコをまだ持っていることに気付いた。
・・・・?

「・・・なんで食わねえんだよ、ソレ」
腹が減ってるはずだ。
なのに・・・なんで、持ってるんだ。

「サンジ・・・もう怒ってねえ?」
ルフィの言葉にしばし考える。
まあ・・・かなり・・・お灸をすえたし・・・。
なんかオレこいつに甘いんだよな。
でも、おかしい・・・。
ルフィが腹へってんのに食わねえだなんて。

「怒ってねえなら・・・サンジ、これやる!!」
ルフィは嬉しそうにそのどろどろのチョコを差し出した。

・・・は?

「今日は好きな相手にチョコやる日だってナミが言ってたからな」

・・・え?

「サンジ、誰かにいっぱい作ってたろ。
だからオレ全部食った。
そんでオレ、これ作ったから、
お前に、やる!!!」

ニコニコしながら汚いチョコを差し出すルフィ。
朝から・・・ずっと。
ずっと・・・持ってた?

「てめ・・・ずっと・・・それ・・・」
驚き。

オレノタメニ、モッテタ?
オレノタメニ、クワナカッタ?
込み上げてくる何だか分からない感情。
言葉にならない。

「他の食ってすぐからなくさないように持ってた」

そうだ。
寝てる時も・・・。
寝てる時も、持ってた。
どろどろの汚いチョコレート。
多分・・・もうほこりや汗がついてる。
ふつうなら、
捨ててしまうようなもの。

「・・・なん・・・で?」
どうしてだ。
オレはお前にチョコつくらなかったのに。
ナミさんと、ビビちゃんのことしか・・・。

「しししし。
他の食い物は他のやつが食ってもガマンする。
でも、それ特別なもんだろ。
だから、サンジが他の奴にやるまえに食った。
これ、オレが作った。
手でこねて」

汚いチョコ。
手わたされたものは、
どろどろの、べとべと。
だけど・・・。
この中にはルフィの気持ちがぎゅっと詰まってる。

ルフィの我慢が。
ルフィの努力が。
ルフィの愛情が。
もったいないくらいに、詰まってる。

サンジは無言でそのチョコを受け取った。
食材の新鮮さ、最低。
純度、最悪。
だけど、捨てられない。
絶対に、捨てられない。
 
 

「こいよ、ルフィ」
サンジはキッチンに向かった。
目を輝かせ、椅子に座って待つルフィ。
サンジはもう怒ってねえ。
何か作ってくれるんだ。
ししし。

でも、何も作ってくれなくても、
オレはサンジが好きだ。
それはもう決まってるんだ。
 
 
 
 

「食え」
「サンジ!! これくれんのか!!」
ルフィは目の前のハート型のチョコレートを見て目を輝かした。
自分のチョコをつくり変えてくれたサンジ。
小さな、チョコだ。
ルフィが冷蔵庫から食った100分の1くらいしかなか。
でも、大事なのは大きさなんかじゃない。

これって、愛だよな!!
このチョコにサンジの「愛」が入ってる。
いっぱい、いっぱい、入ってる。
ししし。

サンジからも「愛」をいっぱいもらった。
はずかしそうにして、オレの方を見ようとしないサンジ。
かまってほしいくせに素直じゃない。
でも、そんなサンジって可愛いんだ。
サンジのためなら、オレ時々は我慢できると思う。

ルフィは一口でチョコを食った。
「うまい!!!」
最高にうまい!!
だってそうだろ。
世の中にこんなにうまいものはない。
「好き」な気持ちが食えるんだから。
それも、いつも怒ってばっかりのサンジの「好き」

だから、他の奴には食わせてやらない。
だってサンジはオレのもんだから。
オレだけが「好き」でいいんだ。

それからチョコより甘いキスをしよう。
どんな甘い菓子より甘いキスを。

今日はバレンタイン・デイなんだから。
「好き」を見えるようにしたいんだ。

だって、本当に「好き」なんだから。
「好き」がいっぱいわかる日。

今日はいい日だ。
 
 
 
 
 
 
 

HAPPY   HAPPY  VALENTINE
 
 
 
 
 



ルサンのバレンタインです。
やっぱラブラブですよね。
 
 
 

クソショウセツ
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