ボンゴレ本部の憂鬱
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(標的244より)



ボンゴレと真6弔花との戦いがはじまった。
スクアーロは、隠れてバトル会場に潜入したものの、桔梗と白蘭に見抜かれ、観戦席に移動した。
もちろん、機会があれば一暴れするつもりではあるが、勝手に来たわけではない。
ヴァリアーに様子を中継するという任務で来ているのだ。
ジャンニーニに言って、バトル画像はイタリアのボンゴレ本部に転送してもらうようにしてあるし、
コメントは回線を通じて、本部にも伝わるようにもなっているはずだ。
トリカブトという術士は、モニター機器をも翻弄し、幻術と匣兵器を併用した技を使っていた。
「相当できる術士だ」
スクアーロが本部にコメントを送ると、本部で通信を待ち構えていたヴァリアーの幹部たちは騒ぎ始めた。
「なによ!!音だけ?映像が来てないじゃない!!」
ルッスーリアがハンカチを噛み締め、くやしがっていた。
「ししし、スク先輩やっぱり使えねー」
「ミーにも見せてください・・・。ミーにも・・・」
レヴィとベルのすぐ後ろに立たされているフランがそわそわしているが、誰も相手にする者などいない。
「ちっ、どうなっているのだ!! だから、スクアーロなどをやらなくても・・・」
レヴィが舌打ちをした。
「・・・ドカスが・・・」
ザンザスはいらいらしていた。
爆音と建物が破壊されるような音だけがひっきりなしに続いているが、戦場がどういう状態なのか見ることができないのだ。
「ガオ」
小さなうなり声がし、しばらくするとスクアーロの解説が入った。
「沢田綱吉の匣兵器だ。ボスと同じ、大空属性のライオンだ。だが、細部の形状が異なるぞぉ」
ザンザスはかすかに眉をひそめた。
このオレと同じ大空属性のライオンだと。
どんな代物かは知らないが、ベスターが劣るはずはねえ!!
「ボスと同じだと!!生意気な!!天空嵐ライガーを越えるものなど・・・」
レヴィが鼻息も荒く言いかけた時、やっと映像がつながった。
そこには、サンバイザーのようなものをした愛くるしいライオンのような生き物が映っていた。
幹部たちは一瞬言葉を失った。
あぜんとして、その大空ライオンをながめていた。
「・・・キュートだわあ」
ルッスーリアは言ってしまってから、はっとしてあたりを見回した。
フランは阿呆のように口を開けたままで、ベルまでが固まっている。
「・・・ありえなくね。ボスのとは全然違うし・・・」
「おのれ、スクアーロ!!全然似ておらんではないか!!
あんな愛玩動物のような代物とボスの天空嵐ライガーを同列に考えるとは!! 何の迫力もないではないか!!
異なるのは細部ではないではないか!!」
レヴィが激しく悪態をつき始めたが、あまりに真実だったので、誰も止めるものはいなかった。
ルッスーリアはおそるおそるザンザスの方を見た。
スクアーロは明らかに「本気」で言っていた。
本気でボスのベスターとあの小動物的な大空ライオンとが同じレベルに見えるとしか思えない。
空気を読めなくてとんちんかんなところはもう矯正のしようがない。
機嫌の悪いザンザスの目に憤怒の炎がともるのを見て、ルッスーリアはそっと立ち上がった。
「・・・ドカスが!!」
ザンザスの手から怒りの炎が巻き上がり、スクリーンは一瞬にして焼き切れた。
「・・・何事ですか、ザンザス様!!」
下っ端の部下があわてて飛んで来た。
「何でもないわぁ。新しいスクリーンをお願いね」
ルッスーリアが素早く命令し、下っ端はあわてて駆け出して行った。
「ししし。またボスのいびりのネタができたよ。先輩って、どうしてあんなにバカなのかな」
「ミーもそう思います。いびられてもしょうがありませんよね」
新入りのフランまでが、ため息をついた。
ルッスーリアは素早く場繋ぎのコーヒーを入れながら、そっと額を押さえた。
まったく、スクってろくなことを言わないんだから。
どうすればああいうレポートができるのか理解できないわ。
ボスの気持ちを逆撫でするようなことばかり。
先が思いやられるわあ。
怒りのあまりボスが会場に乱入しなければいいけど・・・。
ルッスーリアはため息をついた。

ヴァリアー本部に通信を送っていたジャンニーニは突然通信が途切れたことに気づいた。
「へんですね。あちらはもうヴァリアーが押さえているはずだから、今ごろ事件なんてないはずですけど・・・」
ディーノが計器を見て言った。
「こちら側には問題がない。ヴァリアー側で何かトラブルがあったのかもしれねーぞ」
「ゔぉお゛お゛い、どうしたっていうんだぁ!! 聞こえるかぁ!! ボス!!」
スクアーロが怒鳴り、そこにいた者はあわてて耳を押さえた。
「・・・殴れないから、壊したんじゃねーか?」
リボーンが冷静に言った。
ジャンニーニは汗を流した。
・・・だから、私はいやだったんです。
ヴァリアーの連中ときたら乱暴でやかましくて過激ですから。
大人げないから、ボンゴレ穏健派の連中は誰もかかわりたくないはずです。
でも、彼らの力は今のボンゴレに必要なのも事実です。
この人たちのヘンな関係にもかかわりたくはないのです。
関係ないです。
今は、バトル中ですし。
ヴァリアーのボスと二代目剣帝がどんな関係であっても、私にはかかわりがないはずです。
・・・でも、気になる・・・。
気になるものは、気になるんです。
殴るってやっぱり・・・。
いやいやいや、こんなよそ事を考えている場合では・・・。
先ほどからの発言を聞いていると、二代目剣帝は優秀で的を得ているようで、なにか外れていますから。
黙って、動かなければ人形のように美しいのに。
・・・天は二物を与えないものなのです。
だから、私がこのような容姿なのは正しいのです。
とにかく、この人に惑わされないように、戦いを支援していかなければなりません。
細部にとらわれていてはいけないのです!! 
ジャンニーニは決意をあらたにした。





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